ニッチな里子の保育の話
こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。
私(と妻)が養育里親としてこれまで幾度か里子を預かってきたことは、過去にもブログに書きました。(ちなみに今日現在も預かっている子がいます)
うちもそうですが、共働き夫婦が里親になっているケースがあります。
そうなると必要になるのが、「里親・里子の保育所利用」です。
※保育所に通う私の里子
この里親・里子の保育所利用について、実にニッチな事例かもしれませんが、当事者だからこその指摘によって改善した3つの事例を、今回のブログで紹介したいと思います。
※ニッチ…隙間。あまり一般的ではない、特異な狭い分野。
一時保護と措置
まず前提となる話から。
里親が里子を預かるのは、「一時保護」と「措置」のが二種類あります。
一時保護とはその名の通り一時的な保護・養育であり、原則最大二か月です。一方、「措置」はおおむね中長期にわたって養育するものです。
たとえば虐待があった場合、まずは一時保護となり、原則二か月の間に子どもの行き先が決まります。里親家庭での「措置」に移行する場合もあれば、施設に措置されることもありますし、家庭の状況が落ち着けば、家庭に戻る場合もあります。
私が今回当事者としてぶつかり、改善に関わったのが、「一時保護期間中の保育所利用」についてでした。
改善されたニッチな事例①
改善の一つ目は、「一時保護期間中の保育所の新規申し込み」です。
一時保護期間中は、あくまで「暫定」という扱いだからでしょうか、もともとの家庭で利用している保育所があれば、そこを継続して利用することができるものの、在籍園がない場合、里親が新規に申し込むことができなかったのです。
正確に言えば、できるかどうかを厚労省がハッキリ示しておらず、自治体として「できる」と判断できなかったのです。
保育所を利用していない子どもが虐待を受け、一時保護されるケースはもちろんあります。
また、その子を預かる里親が共働きというケースもあるでしょう。
数日、あるいは1週間程度であれば、夫婦で仕事を融通しながら里子を看ることはできるかもしれませんが、さすがに1ヶ月、2ヶ月となってくると、保育所ナシでは厳しいものがあります。実際に私自身がそうでした。
私の問題提起がきっかけとなり、厚労省から「一時保護期間中でも保育所の新規申し込みができる」との見解が示されました。
改善されたニッチな事例②
二つ目の改善は、「二重登園」です。
一時保護期間中でも、もともと利用している園があれば継続利用ができると先に述べました。
ところが、もとの園に通っていると、虐待親が取り戻しにやってくる・・なんていうケースもありえます。
あるいは、そのようなリスクがなくとも、里親宅からあまりに遠方で利用しづらいということもあるでしょう(実際に私はかなり遠方まで通ったことがあります)。
園の近隣に限定して里親を探さないといけない・・となると、里親探しも難航し、児童相談所の負担となります。
そうした時に、もとの園に籍を置きながらも、別の園に通うことはできないかと思ったのです。しかし、二重登園は原則NG。
別の園に通うなら、もとにいた園と契約を解除せねばならないということでした。
虐待親がすんなりと契約解除に協力してくれるとは思えませんし、また、一時保護の後に家庭に戻ることを想定すれば、在籍園はそのままにしておく方が子どもにはいいかもしれません。
こうした事例をもとにした問題提起の結果、厚労省は「二重登園可能」という見解を示すに至りました。
改善されたニッチな事例③
三つ目は、「緊急入園」です。
通常、年度の途中で入園する場合は、前月の5日までに申し込まなければなりません。ですから、最短でも申し込みから入園まで1ヶ月ほどかかるのです。5日を過ぎてしまうと次の申し込みは「翌月5日まで」となり、入園は翌々月。最大で2ヶ月ほどかかってしまうのです。
育休からの復職のように、ある程度事前に予定を決められたらそれでもいいのでしょうが、一時保護はいきなりやってきます。私の経験でも、夕方に児童相談所から電話があり、「今から虐待疑いの家に行って一時保護するので、今晩から預かってもらえるか?」なんてこともありました。
そんな状況から、1~2ヶ月も入所を待つなんて、なかなかできるものではありません。
この件についても、私の問題提起をきっかけに「緊急入園も可」との厚労省の見解が示されるに至りました。
改善によって広がる里親の受け皿
このような問題がこれまで表面化してこなかったのは、
1.児童相談所が保育所なしで対応できる里親を中心に委託してきた
2.受託した里親がムリをしてきた
3.そのような里親がいなければ施設で一時保護してきた
ということだろうと思います。
先に述べた「一時保護期間中でも保育所への申し込みができる」「二重登園もOK」「緊急扱いで入園できる」となりますと、おおむね「いつでも保育所が使える」わけで、「だったら私にも里親ができる」という方が増えるはずです。施設ではない、家庭養育の受け皿が広がるわけです。
子どもにとっていいことなのは言うに及ばず、児童相談所の職員にとっても里親探しの負荷が大きく軽減されるはずです。
多くの方に関わる話ではありませんが、当事者だからこそ気づくことができた、いい取り組みだったと自負しています。
働きかけてくれた山本かなえさん
さて、ここでブログを終えると「私、ふちがみ一人の手柄」と言わんがばかりの話になってしまいますが、もちろんそうではありません。
私の問題提起(というより愚痴?)に敏感に反応し、受け止め、厚労省に掛け合って、見解を引き出してくださったのが、公明党の元参議院議員、山本かなえさんでした。
まさか厚労省と掛け合ってくださるとは、さらには満額回答が返ってくるとは思いもよらず、山本さんからご連絡をもらった時には本当にびっくりしましたし、当事者として大変感謝しています(関わった堺市の職員もびっくりしていました)。
また、このことが堺市だけでなく、全国の自治体に周知されたことにも驚きました。
こうして厚労省を動かせたのは、単に「元厚労副大臣だから」というだけではなく、実際に弱い立場の子どもたちのための施策に取り組んできた、その実績があるからだろうと思います。
社会的養護(本当の家庭で暮らせない子どもの問題)の分野は、多くの人にとっては無関係であり、実感の湧きづらいテーマです。山本さんの実行力もさることながら、ニッチな問題に対しても高い感度を持っていらっしゃることに、私は大変感心し、「私もこうありたい」と思った次第です。
私は公明党の支持者ではありませんが、個人的には「このような方に国政で活躍していただきたい」と、改めて思っています。そうすればきっと、陽の当たらないところにいる子どもたちに、もっと光をあててくれることでしょう。
私も引き続き、里親という当事者性を持って、市議会議員として社会的養護には関わって参ります。
堺市議会議員ふちがみ猛志
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