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万博をアテにした堺旧港開発は見直すべき

堺市は、堺旧港の堅川水門北側に、民間商業施設を誘致しようとしています。

そして、誘致によって賑わいを作り、2025年の万博開催に合わせ、会場となる夢洲への海上交通の実現を目指しています

 

場所がわかりづらいと思いますが、こちらが堺旧港の航空写真(GoogleEarthより)です。

青線が国道26号線、黄緑の四角がホテルアゴーラリージェンシーです。

黄色の枠がアゴーラの別館の建設が予定されている市有地、いわゆる「三角地」です。

そして、今回、商業施設の誘致を目指しているのが、赤で囲った部分です。

間に堺化学さんの大きな敷地がありますので、国道26号線からは見ることができません。

 

堺旧港自体は護岸も整備され、なかなかオシャレスポットになりそうな雰囲気もあります(私はそう確信していますが)。

※堺旧港の景色

 

しかし、今回整備を目指すのはその護岸の後背地です。

※護岸の後背地。右が堺化学、左が開発予定地。

 

すでにこのエリアにお店もあるにはあるのですが、お世辞にも「賑やかな場所」ではありませんし、堺区にお住まいの方でもなかなか馴染みの薄い場所だと思います。

 

ここに整備された護岸とも繋がる形で商業施設を施設を誘致し、港に賑わいをもたらし、そして船の運航会社に「ここと夢洲をつなぎたい!」と思ってもらおう、そして、万博やIR(カジノ)の客がこの堺旧港にもやってくる・・・、という算段のようです。

2025年の万博がターゲットですから、それをこれから4年でやるというのです。

 

果たして本当にそんなことが可能なのか、またやるべきなのか、私は質疑しました。

 

私は「商業施設の誘致」については、2025年ではなく、もう少し腰を据えて、2028~30年くらいを見据えてやるべきではないかと思っています(「海上交通」には否定的です)。

理由は以下の通りです。

 

①厳しすぎるスケジュール

2025年までに、商業施設誘致⇒賑わい⇒海上交通実現、、、となると、これから2年くらいで誘致しなければならなくなります。

1つの街を作るような話なのに、そのスケジュールはあまりに無理があります。また、この1、2年はコロナの影響で投資意欲も減退していることでしょうから、そういった意味でも無理をする時期ではありません。そういえば、同じ指摘をした大仙公園いこいの広場への商業施設誘致も、当局は無理をして事業者を選定しましたが、案の定、「施設開設時期の大幅な遅延」がこのほど発表されました。言わんこっちゃないんです。

 

②IR(カジノ)計画が大きく後退

万博までに開業するとされたIR(カジノ)ですが、コロナ禍の影響で「2020年代後半」の「部分開業」となりました。

「2020年代後半」ですから、行政的には「2029年」と見るべきでしょう。また、規模も当初の1/5に留まるようです。

「万博が終わってもIR需要が」というのが、夢洲開発の肝だったはずですが、4年ほどの空白期間ができることになってしまいました。

半年間の単発のイベントとなった万博のためだけに、どこまで投資をしていくのか、行政も民間企業も慎重にならざるを得ない局面です。万博そのものも、いくら4年先とはいえ、アフターコロナの世界で、従来の計画通りの集客に行くとはとてもとても思えません。

2025年の万博をアテにした事業は、その一つひとつを慎重に見極めるべきで、堺市にとってこの堺旧港の開発は、その最たるものです。

 

③堅川ポンプ場跡地が活用できる

赤で囲った開発予定地のうち、一番堺駅に近いところ(南端)に大きな市の施設があります。それが堅川ポンプ場です。堺駅からこのエリアに来る時、国道26号線をくぐって、真正面に見える施設です。

※26号線の暗いトンネルをくぐり・・

※真正面に見える堅川ポンプ場

 

まさにこのエリアの「顔」になる場所です。

この堅川ポンプ場は、(詳細未定ですが)2026~27年くらいに運用を終え、2027~29年くらいに撤去され、土地が活用できるようになる見込みです。

このエリアの中では一等地と言えるポンプ場跡地を活用できるのか、できないのかで、このエリアのまちづくり、イメージづくりは大きく変わります。

その点からも、慌てて2025年をターゲットにせず、ポンプ場の撤去時期をターゲットにすべきなのです。

 

④地元関係者との協議の時間的余裕ができる

この事業に関しては、地元住民も、商業団体等の関係者も「何も聞いていない」という現状です。

市民を置き去りにして商業施設を誘致したところで、市民に愛されるエリアになるとは思えません。

しかし、これから2年程度で誘致をするのならば、地元と協議なんてしている時間的余裕もありません。

2025年というターゲットを下ろせば、地元を巻き込んだまちづくりもできるはずです。

 

 

そもそも、黄色で示した三角地の開発も、かれこれ2年遅れており、先行きに確信を持てない状況です。

26号線にも面し、よほど活用しやすい三角地がこの状況なのに、わずかな期間で赤のエリアに商業施設を誘致しようなど、私には虫のいい話に思えてなりません。

 

また、この地域には、交流人口を増やす上での小さな課題がたくさんあります。(トイレ、街灯、駐車場、防犯対策、ゴミ対策・・・等々)

 

スケジュールを引き直し、

地元としっかり対話し、

小さな課題の解決に取り組み、

今より少しでも行きかう人を増やし、

民間の投資意欲が高まった時期に、

ポンプ場跡地も含めて活用する。

 

その方が、長い目で見れば、よほどいいものができると思います。

 

夢洲への海上交通は、その先に、インフラ整備も含めて自己負担でやりたいという事業者が現れた時、考えればいいんです。

2025年の海上交通実現は市長の強い希望のようですが、率直に言って、あまりに非現実的だと言わざるを得ず、それに振り回されて、無茶なまちづくりをすべきではないと、私は思っています。

 

私が堺旧港に魅力と可能性を感じ、期待しているがゆえの提言です。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

意見・提案