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堺の魅力再発見キャンペーンのおかしなこと

堺市のコロナ対策の補正予算で「堺の魅力再発見キャンペーン」という事業があります。

堺市民を対象に、「堺観光フリーパスポート」を500円で販売し、そのフリーパスポートで、市内の主だった観光施設の入館料や、レンタサイクルの他、南海バス・阪堺電車までもが1日無料になるというものです。

実施期間は、9月1日から11月いっぱいの予定です。

 

市民のおでかけ促進は健康維持に繋がりますし、観光施設周辺の飲食店への経済効果も期待できます。何より、インバウンドにばかり目が向いていた感のある堺の観光行政が、「まずは市民が、地元のことを知る」という視点に切り替えられたことを、私は好意的に受け止めています。

 

おでかけ促進が、コロナの感染拡大に繋がる懸念がありますが、盆明けの感染状況を見て、9月1日からの実施を遅らせる可能性もあるとのことですし、このブログではその点の議論はいったん脇に置いておきます。

 

私が好意的に受け止めたこの事業にも、「え!!!」と思った点があり、今回のブログではそのことについて書いてみたいと思います。

 

それは、「堺観光フリーパスポート」に付いてくる特典「堺ホテル協会加盟ホテルの宿泊補助券3000円」についてです。

観光周遊券と、ホテル宿泊補助の組み合わせは、他の自治体でもよく見かけられるもので、違和感なく受け止められる方が多いと思いますが、そうではないんです。

この「堺の魅力再発見キャンペーン」と、それに付いてくる「宿泊補助券」は、「堺市民のみが対象」なんです。

 

堺市民が3000円の宿泊補助券をもらったからと言って、堺市内のホテルに宿泊しますかね!???

 

何か特別な日に家族や夫婦、カップルでホテルに宿泊することはあるかもしれませんが、その場合はおそらく、シティホテルのランクの高い部屋になるのでしょうし、それならば3000円の補助ではまったく物足りないはずです。

何より、堺市内のホテルのほとんどは、いわゆるビジネスホテルです。

終電を逃した時や、自宅が工事などで寝泊まりできない時ならわかりますが、そうでもないのに「堺市民が堺の観光施設を巡って、自宅に帰らずに、ビジネスホテルに泊まる」というのは、私にはなかなか想像できません。3000円安くなるからと言って、そんなことしますかね?

現に、私が堺市内のホテル経営者に話を聞いたところ、「堺市民の宿泊者は月に1人くらい」とおっしゃっており、この宿泊補助には全く期待していない様子でした。

 

せめてホテル併設のレストランで使えればいいんですが、あくまで「宿泊補助」だそうです。

しかも使えるのは、フリーパスポートを購入した本人(=堺市民)のみで、他人には譲渡できないというのです。

 

うーーーーん。私にはこの補助券が、有効に活用されるとは、到底思えません。

 

この指摘に対して、担当課からは「これを機会に、ホテル側には、堺市民が泊まりたくなるような商品を開発してもらいたい」との返事がありました。

 

この事業の予算のうち、宿泊補助券分として90万円を想定しているようです(3000円×300人)。わずか90万円です。ホームページで確認した限り、堺ホテル協会に加盟するホテルは16施設あります。1施設あたり、5.6万円ほどです。

その程度の補助金の恩恵を受けるために、わざわざ新商品を開発する経営者がいるものでしょうか。しかもその新商品が「堺の魅力再発見」という主旨に合致するかどうか、堺市のチェックを受けねばなりませんし、補助券を換金する事務手続きの手間も発生します。

 

では、どうすればこの宿泊補助券が有効に使われるのでしょうか。

 

私ならこうします。

①本人以外の利用を可とする。近親者OK、あるいは、本人が手続きすればOKに。

②利用期間を延ばす。現在の「9/1~11/30」からできれば年度内いっぱい、せめて、年末年始をまたぐ日程に。

 

こうすれば、年末年始に親戚や友人が集まった時などに使えます。

自宅に大勢泊まって過密になるよりは、感染予防がしっかりしたビジネスホテルに泊まる方が、ずっといいでしょう。

 

そもそも、この企画は「堺市民による堺の魅力再発見」が目的ですが、その次の段階は、堺の魅力を他市の方々にも知ってもらうことです。

500円の堺観光フリーパスポートを使って、存分に堺の魅力を知った(であろう)堺市民の方にお渡しする3000円の市内宿泊補助券です。それが、時期をずらして他人にも使ってもらえるものならば、「堺に遊びにおいでよ。」と誘ってもらいやすくなりますよね。市内を案内する側の人になってくれるかもしれません。

そうした「次への流れ」を作るためにも、この宿泊補助券は上記のような、使用条件の緩和をすべきだと思うのです。

 

このまま「堺市民の本人のみしか使えない宿泊補助券」で事業をスタートしたとしたら、果たしてどれくらいの利用があるのでしょうか。

体裁を整えるために、市の担当職員が自ら利用して実績を上げる、いわゆる自爆営業・・・、なんてことにはならないと思いますが、私はその結果を心配しています。

 

 

市議会議員ふちがみ猛志

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