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支援学校と市長の思い

こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。

 

先日、岐阜県の各務原(かがみがはら)市の支援学校を視察してきました。

市長の肝いりで作られ、今年度に開校した、新しい支援学校です。

 

それはそれは素晴らしい施設で、その素晴らしさだけでなく、市長や職員の情熱に感動の連続でした。

※同行した小堀議員(右)、森田議員(左)と私(中)

 

県立があるのに市立でも

そもそも岐阜県では、県立の支援学校(小学部と中等部)が県内全域に設置されています。ただ、各務原市にはそれがなく、各務原市の障がいを持った子どもたちは、長時間をかけて他市の支援学校に通っていました。

 

一方、ずいぶん昔から、支援学校の高等部、それも軽度の知的障害だけを対象にした高等部を、市立で設置していて(かなり珍しい例だと思います)、「小学部と中等部があれば、市内で一気通貫になるのに」、「身体障害や重度知的障害の子も市内で見てあげられたら」という意見が根強かったそうです。を

そして、兼ねてより市議会議員としてその主張をしていた浅野健司さんが市長となり、ことが一気に動いたそうです。

 

総工費は81億円。うち各務原市の負担は57億円。また、ランニングコストとして毎年2億円の市負担です。一般会計が720億円(R7実績)の各務原市には非常に大きな額です。

 

子どもの負担に目を背け、県立の支援学校に任せていれば発生しなかった財政負担ですから、市長の並々なる思いがこれだけでも伝わってきます。

※かがみがはら支援学校の正面

 

「各務原の子どもは各務原で育てる」

職員さんのその言葉に胸を打たれました。

 

施設の充実ぶりに感動の連続

校舎に入ってすぐにあるのが、エントランス空間にもなっている図書室です。解放感いっぱいで、登校時にここで本を読んで、気持ちを落ち着かせて教室に向かう子も多いそうです。

※写真左下のスロープで2階へ上がれる

 

※吹き抜けの2階から撮影

 

このエントランスを覆うようにらせん状のスロープがあり、車いすの子どもがエレベーターを使わずして、2階へ上がれます。

一方、このエントランスの『両端』に、つまり2基もエレベーターが設置されています!

 

プールはなんとびっくり温水プールです。

昨今の猛暑で、暑さ指数によって屋外プールでは授業ができない日もあります。支援学校の子は、予定変更が苦手な子が少なくありません。プールを楽しみにしてきた子が、突然の中止に混乱しないようにとの配慮でもあるそうです。

 

重度障害の子が使う教室には、床暖房がついています。

イスに座ることができず、床に寝転がる子がいるためです。たしかに、冷たい床に寝転がるのはかわいそうですよね。

 

子どもが心を落ち着かせるためのカームダウンスペースは、校舎のあちらこちらに。

重度障がい児が光や音、においでリラックスできるスヌーズレンルームには、温水のウォーターベッドが用意されています。

 

校庭の遊具は、障がい児でも遊びやすいインクルーシブ遊具です。車いすの子でも楽しめるような配慮もなされています。

児童会・生徒会室があるのにも驚きました。

障がいの有無に関係なく、ちゃんと一人の子どもとして尊重している証でしょう。

 

言い出したらキリがありませんが、とにかく「これでもか」と配慮を尽くした施設でした。

 

また、そもそも現在の児童生徒数よりも、かなり大きめに作られています。今後、増加することがあっても、教育水準を維持できるようにするためです(現在は余剰の教室を集会室などにして利用しています)

「いつか子どもは減るはずだから」と、ギリギリまで手をこまねき(財政負担を拒んで)結果的に百舌鳥支援学校をパンクさせてしまった堺市とは大違いです。

 

地域に開かれた支援学校

ハード以上に感心したのが、ソフト面です。

 

月に一回、この学校ではカフェ(ひばり喫茶)がオープンします。

運営するのは子どもたち、お客さんは地域の方々です。これは授業の一貫で、お菓子作りや、接客の体験教育の場になっていますし、一方地域の方にとっては交流の場であり、子どもたちの頑張りに力をもらう場になってもいます。毎回、行列ができ、「もっと回数を増やして」の声があるそうです。

地域にある人気のカフェのオーナーが、ボランティアで子どもたちを指導によるものらしく、地域と支援学校が繋がる素晴らしい取り組みだと思います。

 

体育館などの施設は地域の方々にも開放されていますし、子どもの障がいに関する相談コーナーも設けられています。

 

先述のエントランスの図書室は、地域の学校の遠足の目的地にもなっているそうです。すぐとなりが体育館なので、そこも含めて、遠足で来た子どもたちが遊び、そして支援学校の子どもたちと交流していきます。

 

こうした地域への開かれた姿勢が、日常的な支援学校の運営にプラスに働くのはもちろん、長い目で見て、各務原市における障がい者への理解にも繋がっていくのだろうと思います。

 

市長の思いとトップセールス

市長から「節約」を求められることはなく、「いいものを作ること」を強く求められたそうです。その結果が、57億円の市費負担なのでしょう。

 

財政当局は腰を抜かしたのかもしれませんが、その市長の子どもへの強い思いに呼応して、この施設には1億円以上の寄附が集まったそうです。

建設総額から見ればわずかかもしれませんが、自治体の規模からすると、非常に大きな額です。

先に紹介したインクルーシブ遊具も、それ自体が寄附されたものだとか。

 

支援学校の建設中、担当した職員のもとには、市長から夜な夜な電話がかかってきて、「今、〇〇会社の社長と一緒にいて、支援学校建設に協力してくれるそうだから、明日、副市長と一緒に説明に行ってくれ」などと言われ、翌日出動。そうして、どんどんと寄附が集まったそうです。まさにトップセールスですね。

 

市長が本気だから、周りも本気になる。そして、協力する。

果たして、堺市の永藤市長が本気になっているものって何でしょうか。私は今もって、よくわかりませんし、多くの職員がそうだと思いますよく、そう耳にします

 

翻って堺市

これに比べて堺市はどうでしょうか。

 

堺市には百舌鳥支援学校、上神谷支援学校の二つの市立支援学校がありますが、長らく百舌鳥の老朽化、狭隘化、後でできた上神谷との施設格差が問題視されてきました。

 

私は新しい支援学校を設置し、百舌鳥を段階的に移転させるべきと思っていました。百舌鳥は敷地も狭く、建て替え工事すらも困難だからです。

 

しかし、堺市教育委員会と堺市長が選択したのは、百舌鳥支援学校を残したままの分校の設置。それも、児童の減少が進む宮園小学校の空き校舎・空き教室を活用するというもの。

 

百舌鳥の老朽化問題は先送りとなる上、空き校舎のリフォームでいい施設にできるわけがありません。実に付け焼刃的な対応です。また、宮園小学校のロケーション(中区)も、堺市全体の人口分布を考慮するとよくありません(既存の百舌鳥(北区)、上神谷(南区)とのバランスが悪い)。子どもらの通学に無理をきたすものでした。分校だとしても、堺区か西区がよかったはずです。

※おおむね堺区・西区・北区の子どもが通う(北区所在の)百舌鳥支援学校の過密を解消するための分校は、堺区か西区がいいはず

 

「いかにいい環境を作るか」ではなく、「いかに費用を抑えるか」で計画が進んできたのは間違いありません。

 

また、決定プロセスから当事者たちは排除され、保護者が説明を受けたのは全てが確定してから。そうしたことから、百舌鳥支援学校の保護者はことごとく、分校への転校を拒否しました。

卒業年度の児童生徒以外は、みな新設校に転校したという各務原とは雲泥の差です。もちろん、各務原は施設がいいだけでなく、計画のプロセスごとに丁寧な説明・意見交換を行ってきたそうです。

 

分野は違いますが、永藤市長は建設の市費負担13億円、ランニングコストの負担増年間2億円程度の児童自立支援施設(虐待や非行により地域で暮らせなくなった子のための施設)を、財政負担を理由に中止しました。政令市に設置義務があるのに、「大阪府の施設を使えばいい」と開き直ったのです。その堺市の財政規模は約4900億円。

児童自立支援施設しかり、付け焼刃の支援学校分設置しかり。各務原と比べ、市長の胆力、そして市長の弱い立場の子どもたちを思う姿勢が、これほどまでに違うのかと、悲しい気持ちにもなりました。

 

インクルーシブと支援学校

最後に蛇足かもしれませんが、私の支援教育についての考えを記しておきます。

 

私は、最終的には「支援学校」はなくなればいいと思っています。

障がいの有無に関わらず、皆が同じ場所で学び合えるならば、それが理想だと思います。インクルーシブ教育です。

 

ただし、今すぐにそれができるのかと問われれば、ハード、ソフトの両面で無理があります。

悲しいかな、エレベーターすら設置されていない普通学校が、まだたくさんあります。また、多様な子どもたちが共に学べる場を作るには、教員にも相応のスキルと経験が必要です。それは一朝一夕になしえるものではありません。

 

そういう意味で、私は支援学校の社会的使命は当面続くと思っています。

その中で、各務原市のような地域に開かれた支援学校の存在が、遠くない将来の「真のインクルーシブ教育」に実現に繋がりうると思っています。

 

普通学校での支援教育の充実、インクルーシブの推進を図りながら、『いま必要な』支援学校の抜本的な改善が必要だと思っています。

「隣の芝生は青い」と各務原を羨むのではなく、「堺でもできるはず!」「堺の子どもは堺で育てる!」という気概を持って、支援教育の充実と、インクルーシブの実現に向けて頑張ります。

 

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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