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無借金はダメ?

「借金は少なければ少ない方がいい」

「無借金が一番いい」

おそらく、多くの方がそう思うことでしょう。
しかし、決してそうではないのが自治体経営なのです。
自治体は、「あえて」借金をします。
実は、借金は必ずしも悪いことではなく、むしろ、「ある程度」は必要なことなのです。
例えば、50億円で橋を作るとします。
橋ですから、ざっと50年間は使うことになるでしょう。
この建設費50億円を、仮にキャッシュで払えたとしても、自治体は、「あえて」借金をして払います。
なぜかと言えば、キャッシュで一括で払うと、「いま現在の納税者がすべて負担することになる」からです。
「いま現在の納税者」の中には、翌年に亡くなる方もいます。
翌年に、その自治体から引っ越される方もいます。
そうした方は、わずか一年しかこの橋を使わなかったのに、全額負担の一員となるわけです。
一方で、一括払いした翌年にその自治体に引っ越してきた住民は、なんら負担することもなく、49年間、この橋をタダで使うことになります。
明らかに不公平です。
だから、世代間の公平性を確保するために、「あえて」借金をするのです。
この例なら、50年間使う橋ですから、50年ローンで借金をして建設し、以降毎年1億円ずつ(+金利)を返却していけば、世代間の不公平感はなくなります。(実際には、必ずしも返済期間と、耐用年数は一致しませんが)
インフラ整備は必ず必要です。
そして、そのインフラ整備には借金が付き物なのです。
無借金ということは、インフラ整備を全くしないに等しい状況なのです。
もちろん、どんどんインフラ整備して、どんどん借金をしていい訳ではありません。
大事なのは、身の丈にあった、「適度なインフラ整備」と、「適度な借金」です。
ですから、借金の絶対額のみで議論するのは間違いで、「収入に対する借金の割合」がどの程度かで議論すべきなのです。
その指標のなる一つが、実質公債費率です。
年収に対する、年間の借金返済額の割合です。
堺市は5.5%、大阪市は9.2%、大阪府は19.4%です。

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年収500万円の家庭に例えると、ローン払いがそれぞれ、堺市27.5万円、大阪市46万円、大阪府97万円です。

もう一つの指標が、将来負担比率です。
年収に対する、借金残高の割合です。
堺市は15.6%、大阪市は約8倍の117.1%、大阪府は約12倍の189.0%です。
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年収500万円の家庭に例えると、ローン残高がそれぞれ、堺市78万円、大阪市585.5万円、大阪府945万円です。

いかに堺市の財政状況がよく、大阪市が厳しく、大阪府が大変な状況なのか、お分りいただけるかと思います。
年収500万円の家庭で、堺市は軽自動車を、大阪市はクラウンを、大阪府はベンツを、それぞれローンで買ったようなものです。
堺市の将来負担比率も多少の増減はありますが、1〜2%(ポイント)程度のものです。
増えたとしても、軽自動車に追加して、カーナビを5万円そこらで買い足したようなイメージでしょうか。
同じ年収でクラウンやベンツを買った人が、少しローンを減らしたからといって、それ(軽自動車にカーナビを買い足した人)を批判しますかね?
現在、大阪市政、大阪府政を担っている維新の会が、堺市に対して「借金が増えた」と批判しているのは、まさにそのよう状況なのです。
財政の良し悪しは、「借金の絶対額」でなく、「収入に対する借金の割合」で評価する。
財政を語る上でのこの常識を知る人間からすれば、「堺市の借金が増えた、増えた」と維新の会が批判していることは、滑稽でしかないのです。

堺市議会議員 ふちがみ猛志

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