身内の議員の見解を明確に否定した永藤市長
先週末の大綱質疑の報告ブログを書ききれていませんが、先に本日の文教委員会での印象的なやり取りについて書かせてもらいます。
それは、「教育委員会制度」についての質問でした。
きっかけは今週月曜日の大綱質疑でのこと。
8月に永藤市長が、堺市内の学校の運動会・体育大会での組体操に、制限を加える意向を示しました(両足が地面についていない児童生徒の上に乗る技を禁止)。教育委員会はこれを各学校に伝え、多くの学校がこの意向に添ったものの、一部の学校が「すでに準備が進んでおり、子どもの意欲をそぐ」ことなどを理由に、従来通りの組体操を実施したのです。
これについて維新の会の議員が、
「なぜ市長の指示に従わなかったのか」
「教育の中立性を掲げて、政治が介入すべきでないという主張は違う」
「市長の指示は絶対。民意を反映しているから」
と猛烈に抗議し、教育委員会の組織マネジメントに問題があるとを訴えました。
こうした主張に、教育委員会が明確に反論することはなく、ただ、組体操についてのみ「今後は意向に添った対応をする」という主旨の表明をしたのでした。
私は驚きました。
それは、組体操についてではありません。(それは全く別の議論であり、私も市長の見解に違和感はありません)
私が驚いたのは、「組体操のやり方」という、「授業の中身」に対して、本当にこの議員が言う通り、
- 市長は『指示』をしたのか?
- そもそも市長に『指示』ができる権限があるのか?
という2点です。
この件について、本日の文教委員会で、各法令を確認しながら、
・教育委員会の設置根拠、設置経緯
・平成27年度の教育委員会に関する法改正の主旨
・教育における首長の権限の範囲
・教育委員会の権限の範囲
などを一つひとつ確認していきました。
その上で、市長、教育長の両者に「組体操のやり方」について問うたところ、いずれも、
- 市長は意向を示したのみで『指示』ではない。(つまり、必ずしも従う必要はない)
- そもそも市長に『指示』する権限はない。
と表明しました。さらに市長は、市長の意向に添わなかった学校があったことについても「組織マネジメントにおいて問題はない」としました。
これらは、維新の議員が大綱質疑で訴えたことと、まったく逆の見解でした。
そうです。教育の内容を決めるのは、教育委員会の権限であり、そこに市長の権限は及ばないのです。
「指示できる」とした維新の議員の大綱質疑での訴えは、教育基本法や、その他の教育法令の理念に全く反するものであり、堺市の教育行政の根幹に関わるものです。
正直、私は「まさか、永藤市長が同じ見解では?」と心配していました。
また、市長の本音がどうあれ、身内の維新の議員の訴えだから、明確に否定できないのではないかとも思いました(市長が否定しないと、これがまかり通ってしまいかねません)。
しかし、それは杞憂でした。
私の質問を受け、永藤市長は身内である維新の議員の見解を明確に否定したのでした。
当たり前と言えば当たり前のことですが、毅然とした態度に私は安心し、感心もしました。
これならば、今後の教育に関する議論も、是々非々で取り組んでいけそうだと感じたのでした。
皆様の中には、教育内容に市長が指示する権限がないことについて、「それはおかしい」と思う人もいるでしょう。市長が指示できるべきだと。そうした考えもありうるでしょうが、しかし「できない」のが現在の法の規定なのです。私たち政治家や行政職員は、たとえその法に問題があろうが、法は法であり、その法に従って動かなければなりません。おかしな法だとすれば、法の定める手続きに従って、その法を変えるのみです。
いまある法を無視して、ありもしない権限を勝手に振りかざすのは、もはや法治国家ではありません。
そんな当たり前のことを確認でき、議論のスタートラインに立てたことを感じた、そんな文教委員会でした。
堺市議会議員ふちがみ猛志