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都構想の財政効果の嘘

大阪市の廃止分割(いわゆる大阪都構想)を問う住民投票に向け、あれこれ数字が飛び交っており、互いに批判の応酬になっていたりするのですが・・、

断トツに一番怪しい数字は、これでしょう。

大阪市を4つに分割する(6~70万人程度の自治体にする)ことで、なんと、毎年1100億円もの財政効率化効果が出るというのです

そして、それを市民サービスに還元するというのです。

普通、4つに分かれるとスケールメリットが失われて、非効率になるのが当たり前ですが・・。

 

ハッキリ言います。

この根拠はデタラメです。

おそらく、少しでも勉強している議員ならば、いや、よほど何も考えていない議員でもなければ、維新の議員の皆さんもこの根拠のデタラメぶりには気づいているはずです。

そして、「組織が決めたことだから」「デタラメとは言え、公式の場で出たものだから」と、この数字を使い続けているのでしょう。

 

そのデタラメな根拠とは、嘉悦大学が出したレポートです。

少し難しい話のようですが、中身は単純です。

まず、ここに全国の自治体の「人口1人あたりの支出」の図があります。

縦軸が人口一人あたりりの支出で、横軸がその自治体の人口で、全国の市町村がプロットされています。

 

全体の傾向として、人口規模の小さい自治体(左側)は、「人口1人あたりの支出」も多くなります(上側)。

そして、人口規模が多くなる(右になる)と、1人あたりの支出も減っていきます(下になる)。

 

これはすぐに想像がつくと思います。

過疎地よりも、それなりの都市の方が、効率的に行政が運営できますからね。

ところが、人口が100万人を超えたあたりから、「1人あたりの支出」がやや上向き加減になるというのです。

事例は少ないものの、確かに、大阪市よりも「1人あたりの支出」が少ない10~80万人規模くらいの自治体がたくさんあります。

 

この現象を基に、

「自治体の適正規模は50万人くらいだ」

「大阪市を分割して適正規模にすれば、1人あたりの支出が抑えられる」

としたわけです。

その抑えられる支出が、1100億円になるというのです。

この絵の赤の横線(50万人規模の自治体の平均的な水準)と、大阪市との差(赤矢印部分)に、人口270万人を掛けると1100億円になるというのです。

 

へえー、そうなんだ。

 

と一瞬納得しそうになりますが、それは大きな間違いです。

それは大阪市を始めとする、100万人以上の大都市が、なぜ「1人あたりの支出」が多くなるかを考えればわかります。

その理由は「人が集まる大都会だから」です。

決して、行政運営が非効率になるからではありません。

 

企業や商業施設がたくさんあり、他市からも人が集まる大都会であれば、実際の人口よりも、たくさんの人がその町で過ごすことになります。(夜間人口より昼間人口が多くなる)

そうなると、たくさんゴミを出しますし、車がたくさん走れば道路がすぐに傷みますし、何かと出費がかさむわけです。

 

「100万人以上が住んでいるから」でもなく、「政令市だから」でもなく、「実際の人口よりも、多くの人が集まる大都会」だから支出が増えるんです。(よって、政令市であろうが、100万人以上の都市であろうが、ただのベッドタウンならばこの現象は生じない)

 

ですから、大阪市を廃止・分割し、彼らの言う適正規模の60~70万人の自治体になったところで、経費が浮くわけではないのです。政令市ではなくなり、100万人以上の都市でなくなったところで「人が集まる大都会」には変わりないからです。梅田や難波は消えてなくならないからです。引き続き、「人が集まるがゆえの支出」は残るのです。

 

1100億円が浮くという話も、それで住民サービスがアップさせられるというのも、大きな間違いです!!ありえません!!

 

こんなことは、少し考えれば分かることです。

嘉悦大学がどんな大学かは存じませんが、少なくとも「大学」と名の付くところから、こんな稚拙なレポートが出てきたことに、驚きを禁じえません。

こんなレポートを出しているようでは、学会でも相手にはされないでしょうし、学生には気の毒ですが、学校のネームバリューにも傷がつくことでしょう。

また、これを信じ込んでいる行政職員や議員がいるとすれば、それも驚きです。

 

そういう意味では、10月30日の永藤市長のツイッターも完全にミスリードです。(本気でそう思っているなら残念)

指定都市市長会が「指定都市にはスケールメリットを上回る歳出がある」と、国に財政支援を求めたことを例にして、「大阪市が4つの特別区に分割するとスケールメリットが失われる」という意見(常識)に疑義を呈しています。

 

指定都市市長会の主張は、「スケールメリットはあるが、『人が集まる大都会ゆえの支出』がそれを上回るから、もっと税源移譲して」と言っているだけで、スケールメリットそのものを否定していません

「『人が集まる大都会』ではない都市」が、今後どういう都市を目指すのかという議論をしているのならば、永藤市長の指摘は一定程度、考慮すべきことですが、今回の大阪市の廃止・分割の議論には全く当たりません。ミスリードです。

繰り返しますが、大阪市の廃止・4分割は、スケールメリットを失う一方、「人が集まる大都会ゆえの支出」だけが残るのです。

それが住民サービスの低下に繋がると指摘しており、少なくとも、維新が言うような財政効率化効果などなく、住民サービスを向上させる原資はどこにも出てこないのです。

大阪市民の皆さん、「人が集まる大都会」もやめてしまいますか?

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

意見・提案