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里親推進と市長の間違ったメッセージ

久々にブログを書きます。

私が熱心に取り組んでいる(つもりの)里親のことです。

 

昨日、堺市長の記者会見があり「さかい里親YEAR」と銘打って、里親登録数の増加に取り組む集中期間とする旨の表明がありました。

今年度予算の重点方針の一番目に「子どもの貧困の連鎖の解消」を掲げたことを評価していましたが、この里親推進の件も、私は非常に前向きに捉えています。市長も担当課の皆さんも、ぜひ頑張ってください。

 

また、記者会見では市長が、里親推進のシンボル(※)である「ベイビーブルーリボンバッジ」をつけてくれていました。前日に担当課に私からお願いしたもので、聞き入れてくれて感謝しています。

(せっかくつけているのに、記者会見で一言も触れてくれなかったのはちょっと残念でしたが・・。)

 

そういえば、市長は北朝鮮による拉致問題解決の運動のシンボルである、ブルーリボンバッジを全管理職につけるよう要請していました。拉致問題は極めて重要な問題ですが、里親推進は、なんせ市の直接業務ですからね。今年は「さかい里親YEAR」であり、大事なのは「まずは知ってもらうこと」とまで会見で述べているのですから、そのきっかけとなりうるベイビーブルーリボンバッジを、「全管理職」とは言いませんが、できれば子ども青少年局、せめて子ども相談所の職員くらいは、積極的に活用してほしいものです。

(※)大阪南部の里親・里親支援者および堺市里親会の独自の取り組みです。

 

さて、市長の里親推進への心意気たるやヨシなんですが、記者会見では気になる発言もありました。

それは、以下のようなものです。

※※※※※

私はやっぱり特別養子縁組というところまで繋げていくというのが、子どもの幸せに繋がるんじゃないかなと思っております。

養育里親というのは戸籍自体はもとの親御さんのままなんですよね。ですから、家庭が二重というかですね、その里親、受け入れている側にとっても愛情を注いで育てているけれど、親御さんは別のところにいらっしゃると。それがもし、途中で元の親御さんとうまくいかなかった場合にきちんと戸籍も移して、特別養子縁組に繋げていくというところで、子どもたちが安定して、安心して成長することができることに繋がると思っている。

※※※※※

 

この発言は、ハッキリ言って、間違っています。

 

里親には、主に特別養子縁組を前提とした「特別養子縁組里親」と、そうではない「養育里親」があります。(他にも「親族里親」がありますが、割愛します)

 

特別養子縁組とは、里子が元の親との親子関係を法的にも解消し、里親の戸籍に入ることです。一方、養育里親は、期間の長い・短いはあれど、元の親との親子関係を残したまま養育するものです。

市長の言葉によると、「特別養子縁組の方が幸せ、子どもの成長に繋がる」ということですが、その通りであれば、里親も「養育里親よりも、特別養子縁組里親の方が子どもにはいい」ということになってしまいます。

 

たしかにそのような場合もあるのですが、あくまでも「子どもによる」んです。

里親家庭を求める子どもの状況は「千差万別」です。

特別養子縁組の方がいいケースもあれば、そうではないケースもたくさんあります(むしろ、そちらのケースの方が多いように思います)。

それは仮に、(市長の会見の言葉の通りの)「途中で元の親御さんとうまくいかなかった場合」でもそうなんです。うまくいかなかったとしても、「きちんと戸籍を移す」のがいいわけではないのです。それは特に、自我が形成された後、とくに思春期にでもなれば尚更です。

 

虐待をした親、育児放棄をした親であっても、子どもにとっては「親は親」であり、それが子どものアイデンティティになっていることが多々あります。その親と法的に完全に断絶してしまう「特別養子縁組」が「幸せ」だと、どうして決めつけられるでしょう。(もちろん、「幸せ」になるケースもあります。特に乳幼児期は。)

また、特別養子縁組をすると、実親との関係が解消すると同時に、相続権も失います。その点についても十分な考慮が必要です。

 

市長のこのような間違ったメッセージが、子ども相談所の判断に悪影響を与えるとまでは思いませんが、里親推進活動の足を引っ張るものとなりかねないとは思います。

ただでさえ、「里親」と聞けば、多くの人が「敷居が高い」と感じるものです。

ですから、堺市でも「短期養育里親」「週末里親」などと積極的に発信し、できるだけ敷居を低くしようと取り組んでいます

その中で、「特別養子縁組の方が幸せ」「特別養子縁組に繋げる」という市長の発言は、里親に関心を持つ人、「なってみようか」という人に、非常に高いハードル、覚悟を課すものになりかねません

「え!最後は戸籍も一緒にせなあかんの!?」と。

 

繰り返し申し上げますが、里親家庭を求める子どもの状況は「千差万別」です。

 

特別養子縁組を求める子もいますが、そうでない子もたくさんいます。

千差万別の受け皿が必要なのです。

「戸籍にも入って一生親子で」などというのではなく、ほんの1、2週間、あるいは週末だけ、という受け皿も必要なのです。

 

里親に関心のある皆さん。

ぜひ「気軽に」情報を取ってみてください。

もちろん、「気軽に」なってもらうわけにはいかないでしょうが、知るところまでは、ぜひ気軽にお願いします。

そして、皆さんそれぞれの家庭、居宅の状況、人生の予定、覚悟の程度によって、それぞれにマッチする、「里親家庭を必要とする子」がいるはずです。

「特別養子縁組の方がいい」なんてことは、決してありませんから

 

※このブログをアップした後、5月23日の記者会見の冒頭で市長は、私が指摘した発言について、「誤解が生じかねない」と訂正(撤回)しました。(6月2日追記)

 

 

堺市議会議員のふちがみ猛志

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