0歳児選挙権はアリかナシか
こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。
今日はこどもの日です。
こどもと言えば、先日、吉村大阪府知事が突然に「0歳児にも選挙権を」と訴えました。
https://www.asahi.com/sp/articles/ASS4T2RNLS4TOXIE01TM.html
※朝日新聞ニュースより
このことについて、「実際にありそうで実は存在しない」ことをネタにする虚構新聞が、自分たちの記事ではなく「現実のニュースです」とネタにしているくらい、にわかに信じがたい主張です。
とはいえ、この「0歳児選挙権」を「日本維新の会の公約として提案する」とまで言っています。提案も何も、吉村知事は党の共同代表ですからね。あまりに突然の主張でしたが、早速同党の議員からは賛同する意見が飛び交っています。
一方で、否定的な意見も多く、SNS上では炎上していると言っていいでしょう。
そこで私もこのことについて書いてみたいと思います。
0歳児選挙権を提唱した人たちの主張
ざっと要約すると、主張の理由は以下の2点に絞られるようですね。
1.少子化対策に繋がるから
2.0歳児にも権利があるはずだから
政治家は票になるところばかりを見て、選挙権のない次世代を意識していない。だから、子どもに選挙権を持ってもらい、政治的な影響力を持ってもらえば、政治がそこに目を向けるはずだ。
一つ目はこういうことです。
また二つ目について吉村知事は、「少なくとも僕ら(大人)よりは(子どもたちは)長くこの日本において生活していくわけだから、日本の未来を決める権利があってもいいのではないか」と述べています。なんとなく納得できそうな理由です。
そして、その権利は成人するまでの間、親が代理行使することを想定しているそうで、吉村知事は自分に3人の子どもがいることから、「僕は4票の影響力がある」とも述べています。
思い出す元議員の言葉
「子育て支援なんか言うてても、票にならんぞ。やめとけ。」
私が市議会議員選挙に初挑戦する際、長らく市議会議員を務めた地元有力者にチラシを持って挨拶に行った際、私はこのように言い放たれました。
たしかにこのような考えを持った政治家は少なくはありません。しかし、実態は本当にそうなのでしょうか。
私自身、こんな言葉に負けるものかと子育てや教育を注力分野として訴えてきましたし、当選後もそのスタンスで活動しています。新人としてはそれなりの票で当選できましたし、その後も順調に票を伸ばしてきました。ご年配の方でも、たくさんの方が私のスタンスを理解し、応援してくれています。
時に「もっと高齢者のことも」とおっしゃる高齢者がいるのも事実ですし、自分自身に関連することに関心が向きやすい傾向はもちろんあるでしょう。
しかし、少なくとも「少子化」に関しては、国家的危機であることを今や多くの方が理解し、その取り組みの重要性を理解されています。ご高齢の方でもです。
定量的なデータを持ち合わせているわけではありませんが、その理解は確実に広がっています。
政治家としての務め
そもそも政治家は、票になろうがなるまいが、社会に必要なことであれば堂々と訴えるべきだし、その必要性を当事者以外の方にも丁寧に伝えていくべきです。それが政治家の務めだと思います。
少子化対策なんてまだマシ(当事者がかなり多い)です。
私が注力しているテーマとして、薬物依存症、児童虐待、外国籍市民、医療的ケア児・・・と、いずれも当事者が極めて少なかったり、当事者に選挙権がなかったりです。
それでも当事者だけでなく、社会全体に必要だと思い取り組んでいますし、私のまわりにはそれを理解してくださる当事者以外の方がたくさんいます。
「当事者以外は関心を持ってくれない(投票してくれない)」という前提。
政治家自身がそこに立っちゃぁ、お終いよ。と私は思います。
吉村知事も、「選挙制度を変える」ということではなく、少子化対策の重要性を堂々と訴え、高齢者や子育てをされていない方への理解を広げる努力をし、その前提から抜け出せない政治家たちを選挙で打ち負かせばいいのです。
ルールを変えよう!というこの訴えが、このようにナナメに見られてしまうのも当然だと思います。↓↓↓
https://news.yahoo.co.jp/articles/4af519414277fcbdbae4bed7d8b7399eee42b856
※Yahooニュースより
改善すべき点はいくらでも
少々話は逸れますが、ルール(公職選挙法等)を変えるのだとしても、やるべきことが別にあると思います。
少子化対策が進まないのは、高齢者の比率が圧倒的に多い有権者がそれを選ばないから。ではないと思います。
政策論議をする場、じっくりとそれを伝える場が乏しいからです。
選挙中はチラシをポスティングしてはいけない。
戸別訪問してはいけない。
演説会の案内を紙で配れない。
無所属候補はチラシの種類が少ない。
このような規制が「政策による選挙」を遠ざけ、政策よりも地縁・血縁や印象を優先した選挙活動にさせているのだと思います。
そして、「政策が重視されない選挙」の中で、少子化対策に限らず、少なからぬ重要な政策がなおざりにされているのだと、私は感じます。
にもかかわらず、シルバー民主主義などと言って、「高齢者は高齢者のことばかり」とレッテルを貼ることは、一層若者を選挙から遠ざけるだけだろうと思います。
子どもの権利と言えるのか
そもそも、子どもに選挙権を付与すること、それを親が代理行使することを、「子どもの権利」と言えるのでしょうか。
私は「子どもの権利」についてそれなりに勉強し、活動のテーマにもしてきました。この分野で活躍されている方をたくさん知っています。しかし、「選挙権を」なんて意見は聞いたこともありません。
子どもの権利条約の4つの原則の1つに「子どもの意見の尊重」があります。
仮に選挙権を付与するならば、これに該当することになるでしょう。
しかし、内容はと言えば、
子どもは自分に関係のある事柄について自由に意見を表すことができ、おとなはその意見を子どもの発達に応じて十分に考慮します。
というものです。
たしかに「政治」は子どもにも関係のある事柄でしょうが、果たして0歳児がそこに自分の「意見」を持ち合わせているでしょうか。
またあくまでも「発達に応じて十分に考慮」なので、全年齢に同じ意見表明の手段(たとえば選挙権)を求めているわけではありません。
さらに、『子どもの「意味のある参加」』が大切だとされており、その要件として、「透明性」「任意」「子どもの尊重」等が示されています。
親だからと言って、自分の思い一つで投票先を勝手に決めて行使することが、「子どもの意味のある参加」「子どもの意見の尊重」「子どもの権利」になるはずがありません。
極めて「不透明」「強制」「子ども蔑ろ」の制度です。
守るべき子どもの権利とは
たとえば、私はこれまでにこんなことに取り組んできました。
〇子どもが地域の普通学校に行くか、支援学校に行くかを判断する際に、子どもの意見を必ず聞く仕組みにする。
→小学校に入る頃には、どんな学校に行きたいのか、子どもはきっと意見を持っているはずです。
〇保育所で作成する要配慮の子どもの『支援計画』に、従来の「保護者の願い」の欄に加え、「子どもの願い」の欄を設置する。
→園児であっても、「友だちと仲良くしたい」「字をかけるようになりたい」「ごはんを自分で食べられるようになりたい」等々と、「こうなりたい」という願いはあるはずです。
〇小学校を統廃合する際に設置される「地域別懇談会」のメンバーに子どもの代表者を加える。(要請中)
→自分の小学校が統廃合されるのです。2校が統合したらどっちが残るの?学校名は?通学路は?最大の当事者は子どもであり、意見は当然あるはずです。
※ふちがみブログ「子どもの権利は守られているのか」
他にも、公園に新しい遊具を設置する時、学校の校舎を建て替える時、校則を改正する時などなど、子どもの意見が尊重されるべきなのに、そうはなっていないシーンは山ほどあります。
子どもの目線ではなく、大人の事情・思惑で「子どもの権利だ」と掲げられた、0歳児選挙権。私はナシですね。
私はもっともっと実効性のある子どもの権利擁護に取り組むと共に、本質的な選挙制度の改革を期待しています。
堺市議会議員ふちがみ猛志
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