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2000円で高級グルメのふるさと納税

「自己負担2000円で高級グルメが食べられる権」

私は、ふるさの納税をこう呼んでいます。

「ふるさとを応援!」なんて気持ちで利用している人は、もはやほとんどいないでしょう。

ふるさと納税の関連サイトでも、みな、「自己負担2000円で・・」と、そのようなお得感を打ち出しています。

 

ふるさと納税を利用されている方は多いと思いますし、その方々を批判する気は一切ありません

このようなお得な制度は、一個人の立場であれば、利用しない手はないでしょう。

しかし、この制度を議員という立場から見ると、「問題だ!」と言わざるを得ません。

 

問題の一つ目は、「公共全体で、お金が減っていること」です。

 

仮に、A市の市民が、B市に1億円のふるさと納税をしたとします。すると、『ざっと』1億円の財源が、A市からB市に移ります。

A市がマイナス1億円、B市がプラス1億円。

(正確には、控除されない金額(2000円)もあるので少しずれますが、この点は割愛します)

 

百歩譲って、そのまま1億円移動するのならまだしも、B市がそっくり1億円を得られるわけではありません。おおよそ、その30~40%程度が経費として消えてしまうのです。

 

主に、

1.返礼品の代金

2.返礼品の郵送料

3.ふるさと納税ポータルサイトの利用料

です。

これに加えて、行政手続き、問い合わせ対応等にかなりの手間暇・人手がかかります。

 

1の返礼品は地場産品であってその支援には繋がるから許容するとしても、2や3は、自治体にとってはまったく余計な経費です。2,3だけでだいたい全体の10%程度にもなります。

 

一方、この「マイナス1億円」となるかわいそうなA市に対しては、国がその3/4の7500万円を交付税として措置し、穴埋めしてくれます。

 

ですから、この例でざっと言えば、

A市…マイナス2,500万円

B市…プラス6,000万円

国…マイナス7,500万円

となります。合計すれば、公共全体でマイナス4000万円です。

 

えーーー、公金が減ってるやないですか!!

 

地元産業の育成を理由に、この制度を肯定する人がたくさんいますが、だったら、(この例で言えば)国が7,500万円を使って、A、B両市に対して産業振興補助金でも何でも出せばいいんです。はじめから、自治体間で取り合いをせずに、そのお金を地元産業の育成に直接投じればいいのです。

 

問題の二つ目は、この「自己負担2000円で高級グルメが食べられる権」が、低所得者にはないとうことです。

 

あるふるさと納税のサイトの早見表によりますと、

 

年収400万円(世帯ではなく個人)で、妻と15歳以上の子どもが2人いる方の場合、

ふるさと納税の限度額は、12,000円です。

仮に返礼品の率が、国の定める上限の30%だったとすると、この方は、

「自己負担2000円で、3600円分の高級グルメが食べられる権」をお持ちです。

3600円で高級というかどうかはさておき、それほど特筆すべきお得感ではありませんね。夕方遅くにスーパーをウロウロすれば、それくらいの割引には出会えそうです。

 

これが、年収700万円になると、19,800円(の食べられる権)。すごくお得!

年収1000万円になると、44,100円(の食べられる権)。めちゃくちゃお得!

年収2000万円になると、なんと、「自己負担2000円で、156,300円分の高級グルメが食べられる権」になってしまうのです!

わずか2000円の自己負担で15万円分の高級グルメですよ!

まさに、使わなきゃ損です。

 

一方で、年収300万円以下の人は、ゼロ円。まったくこの制度の恩恵にはあずかれないのです。

 

やっぱり、おかしいと思いませんか?

 

公金全体は減るんです。

減った分がどこに行くかと言えば、その大半は、中・高所得者の胃袋の中です。低所得者にはナシです。

(他、運送会社やネット運営会社)

 

そして、公金が減り、行政の予算全体が縮小した場合、そのしわ寄せが低所得者に…というのは、容易に想像されることです。

 

なんだかなー、です。

 

繰り返しますが、市民の皆様にはなんの罪もありませんし、この制度が存在する限り、利用される方はどんどん利用されたらいいと思います。そして、堺市外の皆さん、よかったら堺市へのふるさと納税をよろしくお願いします。

そして、堺市の立場でも、取られっぱなしになるわけにはいきませんから、ふるさの納税の返礼品を魅力的にする努力、ふるさと納税を集める努力はするべきです。

 

ただ、堺市はこの制度の影響で、毎年5億円以上の財源を失っています

入ってくるのはわずか8000万円、出ていくのは20億円以上。交付税でカバーしてもらって、それでも5億円以上のマイナスです。

5億円もあれば、いろんなことができます。

 

これは何も、堺市の努力がただ足りないというわけでもありません。

やはり全国の都市部となる自治体は、ほぼ同じ傾向にあります。

全国の20の政令市のうち、17市が赤字です。

残りのうち2市も、交付税のカバーがなければ赤字です。

唯一、うなぎという名産品のある浜松だけが黒字です。ただそれも、交付税がなければほぼトントンです。

 

都市部から地方にお金が移っている現状をヨシとするならば、そもそも、国から地方への交付税を増やせばいいんです。地元の産業振興に使わせたらいいんです。

何も、都市部から恒常的に財源を奪い、自治体間に過当競争をさせ、公金全体を縮小させ、中高所得者にのみその恩恵が・・、なんてことをする必要性は、どこにもないと思います。

 

私はこの制度に対して、指をくわえて見ているだけ、赤字を垂れ流すだけではなく、利害が一致する政令市と協調して、制度改正(廃止も含め)を国に訴えていくべきだと思っています。

 

この議会でも、永藤市長にはそのことを要請しました。

 

繰り返しますが、、、制度があるうちは、堺市は精いっぱい努力すべきだし、市民の皆様はどんどん利用すればいいと思いますよ。

ちなみにわかりやすく「高級グルメ」と言いましたが、返礼品には食べ物以外もたくさんあります。堺市は包丁などがあります。ぜひよろしくお願いします。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

意見・提案