停滞する学校の統合再編
こんにちは。堺市議会議員のふちがみ猛志です。
少子化が加速する中、小学校や中学校の統合再編が大きな教育課題になっています。
堺市では、1学年1クラスの小学校が増え、中には全校児童が100人にも満たない(1学年10数人)小学校も出てきています。それらの小規模校では人間関係が固定化されやすく、トラブルがあってもクラス替えもできませんし、行事やグループワーク、チームスポーツなどの集団活動も制約されます。
子どもたちの教育環境の改善のため、小規模校の統合再編は避けては通れません。
これは私の個人的主張ではなく、堺市の歴代の市長(市政)もその重要性を示し続けてきましたし、現在の堺市教育大綱にも、学校規模の適正化(統合再編)に「着実に取り組む」ことが明記されています。
しかし、永藤市長が就任してからの7年、これがまったくと言っていいほど進んでいないのです。
永藤市長になってから実績ゼロ
堺市の小学校の統合再編の実績は4例です。
はるみ小学校(H17年 晴美台小+晴美台東小)
新湊小学校(H19年 湊小+湊西小)
泉北高倉小学校(H25年 高倉台小+高倉台西小)
原山ひかり小学校(H30年 原山台小+原山台東小)
永藤市長就任(R元年)以降は実績ゼロです。
つい最近、ある小学校で地域関係者との対話が始まったと聞いてはいますが、それが統合再編の実績となるとしても、まだしばらく先の話です。上記の4校のいずれもが2~4年の対話期間を経ての統合再編でしたからね。
統合再編がかなりペースダウンしているのは明らかです。
一方で、少子化はむしろペースアップしており、再編対象校は増え続けています。
増え続ける再編対象校
堺市は(支援学級を除いて)全校で11クラス以下の小学校を再編対象校としています。「6学年×2クラス=12クラス」を下回る小学校、つまり、1学年1クラスの学年がある小学校ですね。
昨年度の時点で再編対象校は33校。最初の再編があった平成17年の、実に2.5倍です。

しかも、全校で6クラスの小学校(すべての学年が1クラス)が14校、そのうち全校児童が100人にも満たない超小規模校が4校にもなっています。1学年が10数人という小学校です。
ここまで小規模になってしまうと、教育活動がかなり制限されることになります。そうなると、同校区内で公立小学校より私立小学校を選ぶ子ども・保護者が増えることが予想され、小規模化がさらに加速するでしょう。
小規模校を統合再編し、適正規模にすることは、『子どもの教育環境のために』必要なことです。(もちろん、いざ統合再編となると、通学距離が長くなるなど、子どものために対応すべき課題も出てきます)
卒業生の気持ちと大人の事情
この統合再編が進みにくい最大の理由は、卒業生を始めとする、地域の大人の気持ちや事情が複雑に絡むからです。
かく言う私も、「統合再編は必要」と思いながらも、もしも「母校が統合再編でなくなる」ということになれば、少なからぬ拒絶感が出ることでしょう。(ちなみに私の母校は33校ある再編対象校の一つではありますが、さらに小規模な学校が14以上あり、具体的な統合再編の検討には入っていません)

母校がなくなるとすれば、卒業生なら誰だって大なり小なり寂しいものです。できる限り、先延ばししたくなるのも当然です。
また、基本的に小学校区単位になっている「校区自治連合会」をどうするか?という問題も出てきます。自治会も合併するの?それとも一つの校区に、二つの校区自治連合会?自治会活動が不自由にならない?なんて話です。
学校名は?
うちの方が、歴史があるのに!
こっちの方に集約(統合)されるべき!
(なくなる方の)学校の跡地活用は?
地域にメリットはあるのか?
などなど、揉める要素を挙げればキリがありません。
統合再編は地域にとっても、役所にとっても、大変骨の折れる作業なのです。
統合再編が停滞した役所側の理由①
私は、教育委員会が組織全体として、この骨の折れる作業から逃げていたように感じています。(現に直近の1事例まで、交渉のテーブルにすらつけていませんからね)
統合再編が停滞した原因はいくつかあると思っていますが、一つは令和3年度の堺市総合教育会議で提唱された「中学校区を一体的にマネジメントする小中一貫教育体制」、いわゆる『学校群』の取り組みです。
同会議では冒頭に、堺市が抱える固有の課題の第一に「学校規模の差による規模適正化の議論が必要」と示されにもかかわらず、「統合再編」については一切触れられず、終始、「学校群」についての議論が続きました。

※堺市総合教育会議資料
そして、その学校群の効果の一つとして示されたのが「学校規模により生じる課題の解消」でした。
会議の主宰者は、永藤市長です。
永藤市政下で、「学校規模の適正化」の手段としての「統合再編」が大きく後退した瞬間でした。
「統合再編」が地域を巻き込んだ骨の折れる作業であるのに対し、「学校群」に地域との交渉・協議はおおよそ必要ありません。教育委員会と学校現場で完結するものです。
同じ「学校規模により生じる課題の解消」に取り組むならば、骨の折れる「統合再編」を後回しにして、永藤市長(と当時の教育長)の一押しの「学校群」に注力する。そうなるのはごく自然なことです。
しかし、それから5年。学校群の取り組みは続いており(当時の説明にあったような大きな改革には至っていない)、それなりの効果は出ているのでしょうが、少なくとも学校規模の適正化に資するような効果があったなんて話は、聞いたことがありません。
統合再編が遅れた役所側の理由②
もう一つの原因が、令和4年度いっぱいでの、統合再編を担っていた「教育環境整備室」の廃止です。令和3年度の学校群の提唱の翌年度のことです。(連動したものと、私は思っています)
それまで教育環境整備室は、統合再編以外に、市立幼稚園の再編整備など、中長期的な課題に対応していました。
一方で、廃止後に「統合再編」を担うことになった学務課は、就学援助の受付など、日常的な業務を多く抱えています。
日常的かつ事務的な業務を抱える中で、中長期的な骨の折れる調整業務があれば、ついつい後者が後回しになってしまうのも当然。目の前の作業に追われてしまうのが人の性です。性格の違う業務を担わされた学務課は、実に気の毒だと私は思っています。
この教育環境整備室の廃止が、教育委員会内での統合再編への意識の低下、そして現に「統合再編の遅れ」を招いたのは間違いないでしょう。
当事者不在の再編協議
私が小学校の統合再編について議論していて、いつも思うのが「当事者不在」です。
統合再編の一番の当事者は誰でしょう?
言うまでもなく、「子ども」です。

〇〇学校と△△学校の統合再編が・・・という話で、真っ先に出てくる登場人物は、校区自治連合会の会長です。次がPTA会長です。「〇〇会長が反対していて・・」「△△会長は納得してくれているけど・・」と。
もちろん、いずれも統合再編の重要なステークホルダーであるのは間違いありません。地域や学校のために日々汗をかいておられる方々の意見は、十分に尊重され、配慮されるべきでしょう。
ただ、忘れてはならないのは、「統合再編は子どもの教育環境のため」という大前提です。大人のための統合再編ではありません。
最大の当事者である子どもが、統合再編にどんな思いが持っているのか。小規模校ゆえに何か困ってはいないか。そんな声が聞かれることもなく、大人の思いだけで統合再編が頓挫した事例は少なくありません。
もちろん、子どもの声を聴いたとて、子どもが反対することもあるでしょう。
ならば、その反対理由は何か?子どもが統合再編に感じる不安は何か?それらを解消するにはどうすればいいか?
教育委員会は子どもをわきに置かず、子どもを真ん中に置いて、地域や保護者と話し合うべきだと私は思います。
自分(大人)の本音は反対でも、子どものためになるならば、それを乗り越えて取り組める。
大人とはそういう存在であるし、子どもの声にはそうさせる力があると、私は信じています。
明確な基準の設定と共有
もう一つ必要なのが、統合再編の基準の設定と、地域との共有です。
現時点での基準は、先に申した「11クラス以下の小学校を再編対象校」とするもののみです。
対象校は33校ありますが、そのこと自体、おそらく33校の関係者でも知っている人はほとんどいないでしょう。また、知っていたとて、それが33校もありますから、なかなか現実味がありません。
それがある日突然に「統合再編の交渉に入らせてくれ」と来るわけですから、関係者(主に校区自治連合会会長やPTA会長)からすれば「寝耳に水」となるわけです。
「たとえば」ですが、
11クラス以下の再編対象校となれば、統合再編の意義や、小規模によるデメリット、今後起こりうる統合再編の流れについて、関係者に漏れなく周知する。
6クラスになれば、統合再編の具体的な協議に入る。
全校児童が100人以下になれば、2年以内に統合再編に関する方針を固める。
といった具合に、段階ごとに基準を設定していくべきだと思うのです。
役所は事前の情報提供を嫌いがちです。異論が出て先に進めなくなると懸念するからです。
でも、事前の情報共有がなく、突然に伝えるから、「なぜうちが?」「あっちの方が少ないやん」「聞いてない」となって揉めるのです。
無理やり進めろという話ではありません。地域ごとに事情が違いますから。
でも、統合再編が地域にとって重要な事項だというのは、どこも同じです。だからこそ、事前に方針を示し、共有し、異論も傾聴しながら進めていく。そうあるべきだと私は思うのです。
今後の期待と覚悟
長らく停滞した本市の小学校の統合再編ですが、ようやく動きつつあるようです。
そこには、骨の折れる作業も厭わない、タフなOB職員が専任で配置されたから・・とも仄聞しています。
極めて属人的な話ですが、人の感情が複雑に絡み合う事業ですから、それも当然だと思います。感情を無視して進めることなどできないし、「十分な配慮ができる人物」、しかし遠慮ばかりもしていられませんから、「言うべきことを言える人物」が必要です。
また、組織としてもこれまでの(永藤市政発足後の)7年とは違った空気を感じます。これは、学校群の取り組みが(他の効果があったとしても)学校規模適正化の課題解消にはつながらないことが、だんだん分かってきたからではないかと推察しています。
またこの間、私も含め、議会で度々取り組みの強化が求められてきましたから、それも影響していると信じたいものです。
今後に期待しています。
同時に、「属人的」という意味では、時に地元議員による調整が必要な局面もあるでしょう。
堺区だけでも再編対象校が6校あります。
もし、地域の感情が複雑に絡み合う中で、それを解きほぐす役割を求められるのならば、私自身は喜んで汗をかきたいと思います。この手のことは反対する人の方が多い傾向があり、選挙を戦う身として、そこに関わるのは勇気のいることです。
それでも、「統合再編は子どもの教育環境のため」という大前提のもと、子どもを真ん中に置きながら、必要な場合には、配慮しながらも遠慮せず「必要だ」とちゃんと言う。その覚悟です。
堺市議会議員ふちがみ猛志

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