文化と採算と公共ホールと
前の土曜日に、堺市西文化会館(ウェスティ)で開催されたコンサート、「OTOYA COLLECTION ~五線譜に描かれた新たな冒険の地図~」に行ってきました。
「音屋ウィンドオーケストラ」は、堺市出身のクラリネット奏者の稲本渡さんを中心とした、ソロやオーケストラで活躍しているトッププレイヤーによる吹奏楽団です。
今回のコンサートは、アニメ、ゲーム、映画など、誰もがよく知る曲を中心に構成されていて、音楽に疎い私でも、プロの大迫力の演奏を心から楽しむことができました。
また、来場者の指揮者体験や、終盤には地元の中学校の吹奏楽部数十人が参加しての演奏などもあり、参加された中学生たちは目をキラキラ輝かせていました。大きな舞台でプロと演奏した経験は、子どもたちにとってかけがえのないものになったことでしょう。
さて、そんなコンサートでしたが、入場料(前売り)が大人2500円、子ども1000円ということで大変安価に設定されていました(されていたように思います)。
今回は、公益財団法人堺市文化振興財団による、公共ホールでの事業でした。
さて、ここから先は、この分野には素人である私の感想や想像です。
素人計算で入場料収入をはじき出して、諸経費をテキトーに差し引いて、オーケストラの皆様の人数で割って・・・・、としていくと、明らかに採算が合いません。
スポンサーがついていたわけでもなさそうです。
おそらくこのレベルのコンサートだと、少なくともこの2倍くらいの料金を取らないといけないのではないでしょうか(私の想像です。もっと上かもしれません。)?
しかし、そうした入場料となりますと、当然、私のように音楽が趣味ではない人には敷居が高くなりますし、何より入場者が求めるものも変わってしまい、地元中学生が大勢加わった演奏などはしづらくなると思います。
今回のコンサートの採算性については私の素人計算ですから、実際がどうなのかは知りません。
また、私の想像通り、採算の合わないものだったとしても、それを堺市文化振興財団がカバーしているのか、はたまた音屋ウィンドオーケストラの皆さんのご厚意で成り立っているのかもわかりません。
ただ確かなのは、(今回のコンサートがどうだったかは別として)上質な芸術に触れる機会を広く市民に提供しようと思えば、どうしても採算が合いづらくなるということです。それを、子どもたちの教育のためにと思えば、なおさらです。
採算に見合う文化事業ならば、民間ホールに任せればいいのです。高い入場料でも来られる人、それだけの趣味や強い関心を持った人だけを集め、当然それ相応の内容を提供するのです。
しかし、それだけでは文化の裾野は広がりません。
「採算度外視」と言っているわけでは決してありませんし、「文化のためならいくらでもお金を」なんてことは全く思っていません。
しかしながら、文化を「黒字か、赤字か」と言った視点だけで測ってしまうのは、あまりにも乱暴だと思うのです。
そして、そうした視点に立った議論が、ここ数年、堺市の建設中の芸術文化ホールの議論においても少なからず見受けられました。
せっかく立派なホールができるのです。
広く市民が上質な芸術に触れ、子どもたちが芸術の素晴らしさを体感し、感性を育み、時に将来の夢へと繋がるような、そんな機会を提供する場となってもらいたいものです。
そのためには、(コスト意識は重要ですが)一定の予算も必要ですが、それはまちの魅力の向上、文化の醸成、子どもの健全育成といった、プライスレスな価値となって返ってくることでしょう。
安価な料金で素晴らしい音楽を聴き、そして子どもたちの生き生きとした笑顔を見ることができた、この日のコンサート。
文化と採算のこと。
それに伴う公共ホールの役割。
そんなことに思いを馳せる1日となりました。
堺市議会議員 ふちがみ猛志