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「特権的な」議員年金には反対!

928日本会議にて、大阪維新の会堺市議会議員団が、「地方議会議員年金の復活に反対する意見書」を提出し、その提出過程や、質疑において、かなりの混乱がありました。

 

かつて、「地方議会議員年金」というものがありました。

12年で受給資格が得られた(厚生年金など被用者年金は25年(今は10年に改正の方向だが))

・被用者年金とダブルで掛けられた(兼業した場合)

・市議、府議で、ダブルでもらえた

つまり、サラリーマン(被用者)をしながら、市議3期、府議3期で、なんとトリプル受給も・・・・。

 

と、明らかに「特権的な」お得な年金制度がありました。

 

しかし、民主党政権下で、これは廃止となりました。

お得な分、公的資金の負担が大きく、世論の批判も大きかったのです。

これは当然の結果と言えるでしょう。

 

で、今回の維新の会が提出した意見書は、その議員年金制度に対し「復活には反対!」というものでした。

 

なんだか、至極まっとうな意見書のように思えますが・・・、私や多くの議員の反対で否決されました。

ややこしいのですが、私たちは「『復活に反対の意見書』に反対」したのです。

じゃあ、私たちは、かつての議員年金制度を復活させたいのか??

いえいえ、まさか!

そうではありません。

私や多くの議員も、かつてあった「特権的な」議員年金制度の復活には反対です。

 

にもかかわらず、この意見書に反対したのは、そこにいくつもの問題点があるからでした。

 

①   特権的な議員年金制度と、被用者年金制度を混同

この意見書は、全国都道府県議長会、全国市議会議長会、全国町村議長会(以下、このブログではまとめて「議長会」といいます)の、「新たな地方議会議員の年金として、市長村長や勤労者が加入する基礎年金に上乗せの報酬比例部分のある公的年金制度への加入」を求める決議がなされたことに、端を発したものです。(それに反対する意見書)

なんだか、これだけを見ると、どんな決議かよくわからないのですが、要するに、

「地方議会議員も、一般の勤労者と『同じく』、厚生年金(被用者年金)に入れるようにしてください」という決議です。

 

現在、私たち地方議会議員は、かつての「議員年金」が廃止されて以降、国民年金のみです。

私は、この決議が言うように、地方議会議員も、「一般勤労者と同じ被用者年金」であれば、加入できてしかるべきだと思っています(このブログの論点は被用者年金の是非ではありませんので、理由は割愛し、別のブログで書きます)。

 

それに対し、維新が出した意見書では、この議長会の決議について、「廃止したはずの議員年金を復活させるための決議」「3年前の制度廃止を覆そうとする」「特権的地方議会議員年金制度を復活させることは、到底国民の理解を得られるものではない」「国民目線から遠くはなれた3つの議長会」と、厳しく批判しています。

 

しかし、説明したように、議長会の決議した「一般勤労者と同じ被用者年金」と、「かつてあった特権的な地方議会議員年金」は、全く別物です。

ですから、「復活」という言葉そのものが、完全な誤りなのです。

 

維新の提出した意見書では、全く違う2つのものが、完全に混同されています。

その違いを彼らは知らなかったのか(まさか、そんな初歩的なことを?)。

あるいは、知っていて、あえて混同させているのか。

後者であるならば、悪質なミスリードだと言うしかありません。

 

 

②   特権的な松井知事らの年金はスルー

(私はそうは思いませんが)「ごく普通の被用者年金制度であっても、政治家が加入するならば、それは特権的制度だ!」と言うならば、維新の松井知事や、吉村市長も、特権的制度の恩恵を受けていることになります。

知事や市町村長は、公務員と同じ、被用者年金制度に加入しているのです。

であれば、まだできてもいない制度にああだこうだ言うよりも、すでに存在している知事や市長の年金に、廃止を求める意見書を出すのが筋ではないでしょうか?

松井知事は、議長会の提言に「大反対」と言っていましたが、「知事ならいいけど、議員はダメ」ってことでしょうか?そうだとしたら、それはまさに、知事の「特権的意識」「既得権」ということになりはしませんか。

 

繰り返しますが、私は知事や市長の年金は、一般の勤労者と同様の年金なので、特権的だとは全く思いません。維新の皆さんがそう言っているわけです。

こうした身内の矛盾が起こっているのは、やはりかつての特権的な議員年金制度と、一般的な被用者年金制度の区別がついていないのか、あるいは、知事が被用者年金に加入しているのを知らなかったのでしょう。

 

③   水ノ上議長も年金制度推進決議

維新が批判する議長会の決議ですが、昨年も同様の決議がなされています。

そして、その時に議長会の一員だったのが、維新の水ノ上議長です。

だったら、その場で水ノ上議長が反対すればよかったのです。

今になって、議長会の決議を「国民目線からかけ離れた」と批判していますが、身内の水ノ上議長も、そんな議長の一人だったというのでしょうか。

 

なお、質疑ではこのことを指摘され、水ノ上議長は、「(決議の中身を)知らなかった」と答弁しています。

堺市議会の代表として議長会に参加しておきながら、それでいいのでしょうか。

 

④   稚拙なミス連発

この意見書の冒頭に、「本年524日に市議会議員共済会・・・・、7月には全国都道府県議会議長会・・・」というくだりがあります。

しかし、これが本会議前日夜遅くに、維新から「本年ではなく、平成24年だった。訂正したい。」という申し出がありました。私たちの会派から、前日夕刻に市議会議員共済会に関する質問を通告し、慌てて調べたところ、間違いが発覚したようです。

でも、これは、2週間以上前に作られ、各会派に配られていた意見書です。

仮にも、議会に提出する正式な書類です。「意見書を作る時点で、こんな稚拙なミス、気付こうよ!!」と言いたいわけです。

 

しかし、ミスはこれで終わりません。

前日深夜にミスに気づき、意見書の訂正を求め、それを承認するかどうかの議会運営委員会が、翌日(つまり本会議の直前)の朝に緊急開催されます。本当にいい迷惑です(特に前日深夜残業になった職員はかわいそうです)。

そこで訂正が認められ、議会に提出された意見書は、

「平成24524日に市議会議員共済会・・・・、7月には全国都道府県議会議長会・・・」となったのですが、なんと全国都道府県議会議長会は平成28年、つまり本年の開催だったのです。この訂正文書では、全国都道府県議会議長会は「平成247月」としか読めません。

「平成24524日に市議会議員共済会・・・・、本年7月には全国都道府県議会議長会・・・」としなければならなかったのです。

 

このことは、本会議の質疑で指摘され、「訂正してはどうか?」と勧められたのですが、維新は「このままでいかせてほしい」と拒否します。

ここで最終本会議の時点で、「訂正する」となると、いったん撤回し、次の議会に提出しなおすことになるからです。

客観的事実に誤りのある文書になんて、賛成できるわけがありません。可決されれば、これは堺市議会の意思、正式な文書として、国に提出されるのです。こんなものを提出したら、堺市議会の恥です。

「なぜ訂正しないのか」「間違った文書に賛成せよと言うのか」と問われても、維新の答弁者は、オウムのように「このままでいかせてほしい」などと繰り返すばかりで、まともな答弁はありませんでした。

 

 

⑤   そもそも可決する気がない

私が今回の意見書で、一番問題だと思うのは、この点です。

 

繰り返しますが、私たちの会派は「特権的な地方議会議員年金制度の復活には反対」なのです。

しかし、「一般勤労者と同じ被用者年金制度は、広く政治参画を促す観点で必要」だと思っています。

そこで維新には、その2つを混同させず、明確に「特権的な議員年金」に絞って反対するならば、私たちは意見書に賛成する旨を、何度も伝えてきました。しかし、維新の会はそれを拒否しました。

 

意見書というものは、可決させるために提出するものです。

本来、否決されるくらいならば、提出しない方がいいのです。

 

なぜなら、意見書というのは、国や大阪府などに、「○○をしてほしい」という、堺市の意思を示すためのものであって、それが否決されてしまうと、逆に「○○をしてほしいわけではない」という意思が示されてしまうからです(否決の場合は文書で提出されませんが、公開の議会の場で、それが示されます)。

 

本当に維新が「特権的な年金制度に反対」という堺市の意思を示したければ、私たちと折衝し、文言を修正し、明確な意見書にすればよかったのです。私たちの会派が加わっていれば、この意見書は可決されることが見えていました。繰り返しますが、維新はそれを拒み、否決の道を自ら選びました。

 

そしてそれはもう一度ありました。

本会議での質疑が終わった時、一人会派の長谷川議員が、この意見書の「継続審議」を求めたのです。ここで採決せずに、議会が終わった後も議論を重ね(場合によっては文言を修正し)、採決を先送りにしようという提案でした。

すでに、自民、公明、ソレイユ堺が、議会運営委員会で反対の意思を表明しておりましたから、維新がこの意見書を可決したいならば、継続審議にするしかありません。

しかし、なんと維新は、その継続審議に反対したのです。これは全く理解のできない行動でした。

そして、この意見書は否決され、意見書とは違う、堺市議会の意思が示されたのです。

 

ここまでくると、維新がこの意見書を提出した目的が、「可決させること」ではなかったのは明らかです。

 

私は「否決させること」が目的だったと見ています。

あえて否決させ、否決した側を「特権的な議員年金制度を復活させようとしている!」と誤った情報を流し、市民をミスリードし、既得権者だとレッテルを貼る、まさに政治的思惑の中で出された意見書だったと、思わざるを得ません。

そのようなことで、議会の貴重な場を使ってほしくないと、つくづく思います。

 

あと、もう一つ。

これは私の推測ですが(しかし確信を持っています)、大阪維新の会堺市議会議員団が提出してくる、条例案や、意見書は、ほぼすべて松井代表なり、維新の府議会議員団なり、「上からの指示」によるものだと思われます。

自分たちで考え、作ったものではないから、稚拙な文書のミスが連発するのです。

かつては、大阪府での条例案をコピペしたものを提出し、「市内」とすべきところを、「府内の市町村」となったままのものまでありました。

さらには、今回の私たちのように、文言の修正を求めても、自分たちで判断できず、「上にお伺い」を立てなければならないから、なかなかそれに応じられないのでしょう。

そして、質疑をしても、条例や意見書を書いた人間ではないから、グダグダの答弁になってしまうのでしょう。

 

やろうとする方向性自体は、反対のものばかりではありません。

今回の意見書でも、「特権的な議員年金の復活反対」と明確にされるならば、私たちも協力できたのです。被用者年金まで包含するかのごとき、曖昧な意見書なので、反対せざるをえなかったこです。

だから今回、否決を前提とした維新の対応によって、堺市議会として「特権的な議員年金の復活反対」の意思が示せなかったのは、残念です。

ぜひ、維新の堺市議会議員団の皆さんには、「上からの指示」や「政治的思惑」ばかりで動くのではなく、政策力を高め、自律的な議会活動をしてゆく、まさに党内の地域主権を進めて頂きたいと、強く願うばかりです。

 

 

長くなりましたが、「案の定」とも言うべき、維新の議員による、ミスリードに基づいての、否決した議員への批判が、ネット上で見受けられましたので、反論の意を込めて記しました。
 

 

 

堺市議会議員  ふちがみ猛志

意見・提案