NOWLOADING

あまりに軽かった再議

こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。

 

3月27日(水)、堺市議会本会議にて令和予算案が可決され、1年で一番大事な議会定例会が終わりました。

 

ネット記事にもなっておりますが、自動運転バスの実証実験の削減について議論が交わされ、結局、永藤市長が「首長の伝家の宝刀」とも言える再議権を行使し、実証実験も含む当初の予算案を可決させることになりました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/875b6b7063492a1605fc75ac9c97db9149f30049

※産経新聞ニュースより

 

しかし、それを一言で言えば「議会軽視も甚だしい、軽薄な再議」だったと思うほかありませんでした。

 

全体の流れ

永藤市長が作った令和6年度予算案(原案)には少なからぬ問題が含まれていて、中でも看過し難かった「自動運転バス実証実験費用2億円」について、削減する修正案が予算委員会において可決した。

 

このことは前回のブログで書きました。

https://fuchigami.info/%e5%89%8a%e6%b8%9b%e3%81%97%e3%81%9f%e8%87%aa%e5%8b%95%e9%81%8b%e8%bb%a2%e3%83%90%e3%82%b9%e4%ba%88%e7%ae%97/

 

その後です。

本会議でも修正案が採決され、議長を除く47人の議員のうち29人が賛成し、修正案は可決成立しましたのですが、やはり永藤市長は再議権を行使し、修正案は再び議論の場に戻されました。

 

そして、質疑を経て採決がなされ、同じく29人の議員が賛成はしたのですが、一般的な採決と違い、再議の場合は「過半数」ではなく「2/3以上」の賛成が必要となります。

 

47人の「2/3以上」と言えば、32人。

残念ながら29人ではそれに足りず、修正案は葬られることとなりました。

 

そして「自動運転バス実証実験費用」も含む「原案」が復活し、質疑がなされた後、採決が行われました。

 

本来であれば、私たちが削減した「自動運転バス実証実験費用」を含む原案ですから、反対したいところでしたが、原案の中には人件費をはじめ、福祉、教育関係の予算等、必要不可欠な予算が含まれています(むしろそちらが大多数)。もし反対多数となれば、それらも含めて否決されてしまいます。

それでは市民生活にも悪影響が・・・ということで、私も含め、多くの議員が苦渋の決断で賛成することとなりました。

 

 

そうして、47人中41人が賛成し、原案が可決成立。

こうして予算議会が幕を閉じたのでした。

 

※イラストにするとこんな感じ↓

 

軽薄な言葉だけの再議理由

「再議」は議会の決定(多数意思)を覆そうとする行為ですから、法に認められた首長の権限とは言え、非常に重いものであることは言うまでもありません。

 

では、その再議はどのような理由でなされたのか。市長が議会に示したのは以下の文言です。

 

※※※

SMIプロジェクトは、堺都心部において交通という切り口から都市魅力を大きく向上させ、未来を見据えて挑戦する堺の都市ブランドの確立に資するものであり、堺の成長・発展のために必要な取組である。このことから、第8款土木費 第4項都市計画費 第1目都市計画総務費「SMIプロジェクト推進事業」は、減額すべきでない。

※※※

 

どう思われますか?

 

極めて抽象的で、軽薄で、中身のない理由です。

 

なぜそれが都市魅力を向上させるのか?

なぜ都市ブランドの確立に資するのか?

 

なんの説明もなく、説得力の欠片もありません。

 

現にこの質疑に立った西哲史議員が、「ブランドの確立」について「どのような指標を持って、ブランドが確立していない、したと判断するのか?」と問いましたが、何の答えも出せず、議会は空転しました。

 

手ぶらで再議に臨んだ市長

そもそも自動運転バス実証実験の予算が「削減された理由」は明確に示されていました。

 

事業の全体予算が示されていないこと。

まちの活性化につながる具体策がないこと。

以上の2点です。

 

なので「再議(=再び議論すること)」を求めるならば、その2点に対して何らかの答えを示す必要があります

 

この予算について集中審議がなされたのが2月末から3月前半にかけて。削減の修正案の委員会可決が3月13日。それから2週間が経過しての本会議でした。たとえ完璧な答えでなくとも、「全体予算はおおよそこれくらい」とか、「〇億円以下になるよう努める」とか、「堺消防署跡地を集客拠点にする」とか。何でもよかったんです。

 

しかし、そのような情報のアップデートは一切なし。集中審議の時と何ら変わりのない答弁でした。つまり市長は手ぶらで再議に臨んだのでした。

 

民間のビジネスの世界で想像してみてください。

顧客に否定された提案を、その否定理由に対して何の答えも持ち合わせずに「もう一度検討してほしい」と言ったとしたら、どうなるでしょうか???

「舐めているのか?」と思われるに違いありません。

 

そうです。永藤市長は議会を舐めているのです。議会を舐めているということは、その背後にいる市民を舐めているのと同じだと私は思います。

 

再び議論する気などなかった市長

修正案が再議によって葬られた場合、法律の定めにより原案が復活し、改めて審議がされることになります。

 

ここでもまた永藤市長の議会軽視の姿勢が浮き彫りになりました。

 

原案は自動運転バスだけでなく、人件費や教育、福祉関係も含め、あらゆる予算が含まれています。永藤市長の再議(市長の意思)を経て、その原案が審議の場に戻ってきたのです。

なのに、原案に対して答弁できる理事者を用意していなかったのです。

 

議場にいたのは、市長、副市長ら特別職と、自動運転バスに係る建築都市局長のみ。

健康福祉局長、子ども青少年局長、総務局長・・・など、誰もいないのです。

 

私は質疑に立ち、「利晶の杜の年間来場者数の推移」を問いましたが、そこに所管する文化観光局長がおらず、副市長がたまらず「資料がないのでわからない」と答える始末。またも議会がストップしました。

ちなみに私が利晶の杜に触れようと思ったのは、自動運転バスを走らせる大小路交差点近辺で、現時点では一番集客力のある施設だからです。私たちが否定した理由である「まちの活性化につながる具体策がないこと」、これに対する答えの一つがそこにあるかもしれないからです。

 

いずれにしても、原案の復活、審議の流れを自ら作っておきながら、審議の準備をしていなかったのです。

 

 

結局のところ永藤市長は、議論をする気などなく、ただ採決して押し切ろうとしていただけだったのでしょう。

 

議会軽視の姿勢はこんなところにも

永藤市長の議会軽視の言動は他にもありました。

自動運転バスの実証実験を否定した我々に対して、「対案もなく反対」と批判したのです。

 

ところが実際にはこの定例会においても、削減提案をした公明、自民、堺創志会はそれぞれ、

 

公明…阪堺線の堺東への乗り入れ

自民…DMVの導入

堺創志会…高野線高架化に合わせたシャトルバスのJRへの延伸

※阿波ナビより。線路と道路の両方を走れるDMV。徳島〜高知間で走行。

 

などなどの東西交通改善の提案をしています。

自動運転バスにしても、私(堺創志会)は「郊外の赤字路線への適用」という対案を出しています。

 

永藤市長は私に「対案を出しているではないか」と指摘され、「いくつかのアイデアはありましたが・・」と頓珍漢な答弁をする始末。アイデアって「案」じゃないんですかね?

 

自分の考えに反対する人たちを「反対しているだけ」「反対のための反対」等と決めつける、なんとも失礼な話です。

 

何でも味方してくれる存在の危うさ

このような市長の議会軽視の姿勢の要因は明らかです。

 

何でも味方してくれる勢力が、議会の1/3以上を占めているからです。

身内の維新の会です。

 

少なくとも予算に関しては、削減提案をされても再議でつぶせるのです。

 

本来であれば議会と首長は是々非々の関係ですから、大なり小なり与党的、野党的立場があったとしても、「何でも味方する」というのはあり得ないはずです(たとえば竹山市長の頃も、与党的であった自民と、職員基本条例で鋭く対立のシーンがありました)

 

しかし永藤市長に関しては維新公認の市長。つまり維新という組織の中の人間です。同じ組織同士、多少の注文くらいはつけても、最後には必ず味方するのです。市長からすれば実に安心感があることでしょうが、果たしてこれが健全な議会と首長の関係なのか、私には甚だ疑問です。

 

せめて維新が議会の1/3未満であれば、市長ももう少し様々な会派(つまり多様な市民)の意見にも耳を傾けるのでしょうが・・。

 

再議と、そこで見せつけられた市長の姿勢に、地方自治の在り方そのものに思うことがあった予算議会最終日でした。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

LINE登録はこちらからも↓↓↓

https://lin.ee/YdOYWqu

意見・提案