こんなところにジェンダーバイアス
今さら説明するまでもないかもしれませんが、「ジェンダーバイアス」とは、「男らしさ」「女ならば」といった、男女の役割に関する固定的な観念や、それに基づく差別・偏見・行動のことです。
今回のブログは、公的な会議の場で「これってジェンダーバイアスやん」と私が感じて指摘したという話です。実に些細なことかもしれませんがね。
それは、先週の倫理調査会での出来事。
倫理調査会とは、市議会議員と市長が提出した「資産等報告書」などについて審査する会議体です。
※この分厚いファイルが「資産等報告書」
※中は議員と市長、計49人分。
そうなんです。私たち議員や市長は、毎年、収入や、貯金の他に、不動産、株、自動車などの保有資産を報告しています。簡単に言えば、政治家として悪さをしていないかのチェックですね。
そして私たちが提出した報告書におかしな点がないか、市民委員7人と、議員委員6人で構成される調査会で確認するわけです(本人の分をチェックする時は、当該議員委員は離席します)。
私は今年度、その議員委員に選ばれています。
一人ひとりの報告書がチェックされ、おかしな点、記載ミスと思われる点があれば、事務局を通じて「本人に確認」となります。そしてその本人から「こういう事情で・・」とか、「記載ミスでした。訂正します。」などという回答が、後日もたらされます。
そんな倫理調査会で、ある女性議員の報告書をチェックしている時、市民委員から疑問が呈されました。
「他の議員の収入欄には『特別定額給付金』の記載があるのに、この議員の収入欄には書かれていない」というのです。コロナ禍で1人10万円給付されたやつです。
※私の収入欄には「特別定額給付金」、家族5人分があります。
「あ、ほんまや。記載ミスかな?」という空気が流れたのですが、そこで事務局が、
「記載ミスかもしれませんが、特別定額給付金は『世帯』に支給されているので、当該議員が世帯主でないのかもしれません(だからその議員本人の収入となっておらず、記載がない)。他にも、特別定額給付金の記載のない女性議員が3人いらっしゃいます。」と発言しました。
これを聞いて、私も「あ、そうか」と思いましたし、他の委員も「そうやな、そういうことで、ミスではないんやろな」という空気が広がりました。
そして、事務局が「本人に確認しますか」と聞くと、疑問を呈した市民委員は「もう結構です」と答えました。
しばらくして、別の男性議員の報告書をチェックしていた時です。
同様に、特別定額給付金の記載がなく、そのことに指摘が入ったのです。
事務局は同様に「記載ミスかもしれませんし、世帯主でないのかもしれませんし、、本人に確認しますか?」と発言すると、指摘をした女性委員がキッパリと「確認してください」と求めたのです。
すかさず私は手を挙げました。
「先ほどの女性議員は『世帯主ではなのだろう』という推測のもと、本人確認はしないことにしました。なのに男性議員の場合は『男性なら世帯主に違いない。定額給付金をもらっているのに、記載していないのではないか。』と決めつけて本人確認するのはおかしくないか?」
と問うたのです。
おそらく、この「当該女性議員は世帯主ではないからもらっていない。男性議員は世帯主でもらっているのに記載ミス」という『予測』は当たっていると思います。統計上は、同居夫婦の場合、男性が世帯主になることの方が多いのですし。
しかし、だからといって、「女性は世帯主でないはず。男性は世帯主であるはず。」と決めつけて、しかもそれを根拠にして「本人への確認を求める(あるいは、求めない)」という会議の正式決定にしてしまうのは、小さなことかもしれませんが、私はジェンダーバイアスの1つだと思うのです。
冒頭の「男女の役割に関する固定的な観念や、それに基づく差別・偏見・行動」のうち、さすがに「差別・偏見」とまでは申しませんが、確実に「固定的な観念に基づいて『行動』」してますよね。
倫理調査会という、堺市の条例に基づく公式の会議の決定であり、決定による行動ですから、「これはいけない」と思ったのです。
「本人確認するならば、男女双方に対して『する』。しないなら、双方『しない』とすべきではないか?」
と求め、「双方に確認する」と決定してもらいました。
実に小さな話だったかもしれません。
でもジェンダーバイアスは、日常のささやかな行動や、意識が積み重なった結果、社会全体の『差別』にまで繋がっていったのだと思います。他の多くの人権課題もそうだと思います。
気づいたら、気づいた人がその場で指摘する。
というのが大事なんだろうと思います。
公式の会議ですらこうですからね。
あちらこちらに大きいのや小さいのが転がっている、潜んでいるのだと思います。
ジェンダーバイアス、皆さんもお気を付けください。私も自戒の念を込め、気を付けていきたいと思います。もし、私の言動の中に見つけた時は、躊躇なく指摘してくださいね。
堺市議会議員ふちがみ猛志