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やはり強かった維新

衆院選から10日余りが経ちました。

 

私としてはあまり嬉しくない結果でした。

与野党伯仲を望んでいたことや、躍進した維新の会には賛同しかねる部分が多いことが、その理由です。

 

選挙結果全体については、メディアや識者が様々論評しており、今さら私がする必要もないでしょう。

そこで、今回の選挙でまざまざ見せつけられた維新の会の強さについて書きたいと思います。「賛同しかねる」と言いましたが、やはり彼らには彼らなりのすごさ、そして学ぶべき点(後述する2つ目など)もたくさんあります。

 

維新が、特に大阪でこれほどまでに強い理由はいくつもありますが、ここでは2つ書きたいと思います。1つはネガティブな理由、もう1つはポジティブな理由です。

 

ネガティブな理由で挙げるとすれば、「検証を恐れないこと」です。

事実とは異なることや誇大広告を躊躇なく発信できること、過去の発信との論理矛盾も厭わないこと、都合の悪い過去は無視できることなどなどです。普通の政治家なら、「検証されて、突っ込まれたら嫌だなあ」と思って、当然のように躊躇するんですが、そのあたりの躊躇のなさは、恐ろしくもあり、(ある意味)うらやましくもあります。

 

1つ例を挙げるなら、彼らが全国放送で度々発信した「大阪府の私立高校の無償化」です。これは、しょせんは所得制限のあるものですが、それを堂々と「無償化した!」とあちこちで言ってのけられるあたりは、なんとも肝の据わった話です。

ずっと以前から、低所得者の保育園代は無償でしたが、だからと言って、「保育園代は無償化されてる!」なんて、誰も言ってませんでしたよね。

このあたりの言い切りは、橋下徹さんあたりからの維新の伝統話芸のようにすら思えます。

「大阪の成長」なんかもそうかもしれませんね。これもエビデンスに全く反します。

 

自画自賛する時も、相手陣営を批判する時も、この「検証を恐れない言い切り」が随所に見られました。

 

そして、さらに大きな問題は、それをメディアが検証しないことです。垂れ流すだけだったり、場合によっては、コメンテーター(たいてい専門家ではない)が鵜呑みにして追認・発信することもあります。

こうして、維新の会が見せようとする「印象」が、事実のようになっていき、維新の支持や、対立政党の不支持に繋がっていったと私は思います。

 

もちろんこれは、今回の選挙に限った話ではありませんが、長い時間をかけて醸成され、しかも今回は吉村知事という全国区のアイコンを得て、一気に広がったと私は感じています。

 

 

2つ目は(維新の)ポジティブな理由です。

それは彼らが「地方議会議員を増やすこと」をどの党よりも重視し、そのための活動をしてきたことです。

 

維新と言えば、メディア戦略やSNSなどを活用した、いわゆる「空中戦」にばかり目が向けられますが、私は地方議員を駆使した「地上戦」こそが、彼らの強さだと思っています。

 

いまや、大阪府・大阪市・堺市で維新の会が圧倒的な第一会派になっています。そして、一般市においても相当な勢力になっています。

平均年齢が若く、(全員ではありませんが)しゃべりのうまい方、SNSに長けた方、選挙で見栄えのする方が「比較的」多いです。

一方で、自民系、民主系に比べて、「維新という看板がないと通らない」という方が多く、だからこそ、維新という政党の存続をかけた戦いには他党の議員以上に必死になり、組織の指令にもしっかりと従っている。私はそう思っています。

国会初登庁のインタビューで「維新の政党拡大に向けて身を粉にして働いていきたい」と答えた維新の新人議員さんがいましたが、まさに典型的な彼らのメンタリティだと思います(国会議員として訊かれてるんだから、「国民のため」って言うでしょ、普通は)。

 

地方議員がこれだけたくさんいて、これだけ必死に党のために動けば、それはそれは、国会議員(候補)にとっての強靭な足腰になるのは言うまでもありません。

そしてそれは単に「縁の下の」という意味ではなく、市民の身近なところにいる「広告塔」という意味でもです。

 

地方議員が1人よりも5人いた方が、街頭で5倍露出できますし、チラシも5倍配れますし、市民相談も5倍受けられるわけです。

私は彼ら1人ひとりよりもそうした活動ができている自信はありますが、多勢に無勢ですし、党名を全面に出した活動は、個人名を出した活動よりもずっと浸透力があります。それが大阪府中で展開されているのです。

 

地方議会議員選挙における多くの党の戦略は、増やすことよりも維持することです。増やそうとすると、現職議員の共倒れリスクを伴いますから、どうしても反発が出るのです。

しかし、維新は拡大路線を取り続け、見事に成功してきました。

 

 

今さらでありますが、自民党にしろ、立憲民主党にしろ、「まずは地方議会議員を増やす」「地方議会に根を張る」ということに、どの党よりも必死になってきた維新の姿を、改めて見習うべきではないかと思います。

各政党がもっと地方議会を重視すれば、自ずと地方議会議員選挙も盛り上がりますし、市民の目も政治に向きやすくなります。長い時間がかかっても、それはよりよい政治に繋がるものと、一地方議会議員として信じています。(一方で、地方議会における維新の行動には、疑問を感じている点も多々ありますが・・)

 

加えて、1つ目の理由に戻るならば、こちらは逆に、そのようなやり方は決して広がってほしくないと思っています。「言ってしまったもの勝ち」のような姿勢ではなく、「検証に耐えうる責任のある言葉」が政治家には求められています。

政治の劣化が一層進むのではないかと、強く危惧しています。

 

 

とりとめもなく書きましたが、いずれにしても躍進した政党には、躍進したなりの理由があり、敗北には敗北の理由があります。

 

戦いに負けたものは、どうしても前者のような批判的な部分に目が向きがちですが、特に後者のようなポジティブな「維新のすごさ」を意識したいものです。

 

私は政党には属しておりませんが、選挙の洗礼を受ける身としては同じです。よりローカルに根を張った活動を心がけると共に、(どの党の広告塔でもありませんが)自分を「市民の身近なところにいる『政治というものの広告塔』」だと思って、真摯に活動していきたいと思います。

 

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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