キャッシュレス決済の課題
11月の1ヶ月間、堺市で「キャッシュレス決済における最大20%のポイント還元」が実施されていました。
これは堺市独自の取り組みで、コロナ禍で経済的なダメージが広がる中、「実質的に20%安く買える」ことによる生活支援の側面と、「お得感によって消費を喚起する」という事業者支援の側面がありました。
予算総額は10億円。堺市としては思い切った額だったと思います。
私なりにこの政策を「悪くはない」と思ってはおりますが、どんな政策も100点満点というのはなかなかないものです。
そこで私が感じた課題を2つ挙げたいと思います。
①本当に必要な人に支援が届きづらいこと
当たり前のことですが、キャッシュレス決済を利用していない方には、この施策の恩恵は一切届きません。
キャッシュレス決済の利用は、高齢者はもちろんですが、「生活困窮者であればあるほど利用率が低い」というデータがあります。
コロナ禍で真っ先に救いの手を差し伸べなければならない生活困窮者に、その施策の恩恵が届きづらいというのは、残念ながらこの施策の欠点だと言わざるを得ません。
②利用可能店舗の絞り込みが甘いこと
今回の20%還元の対象店舗として、大手スーパーは除外されています。わざわざ堺市が独自の予算で支援する必要性に乏しいからです。
その観点で言えば、今回は対象店舗となった、たとえばコンビニエンスストアや、100円ショップ、ドラッグストア、牛丼店などなども、対象から外してもよかったのではないかと思います。
まず、大手チェーンの直営店は除外すべきだったと思います。市民優先、中小零細事業者優先です。
コンビニであれば、地元の堺市民がオーナーをしているケースもありますが、「コロナによる経済的ダメージ」は比較的(あくまで比較すれば、です)軽微だったはずです。
「堺市に本社」「中小零細事業者」などに加え、「飲食業」などのダメージの大きい業種に絞り込んでもよかったのではないでしょうか。限られた予算ですからね。
また、もともとする予定だった買い物が20%還元になったところで、それは生活支援にはなれど、事業者支援にはなりません。「20%還元だから、普段はしない特別な買い物をした!」となってこその事業者支援、消費喚起です。コンビニや100円ショップで、そのような買い物があったのかどうか。この点も今後の検証が必要だと思います。
コロナ禍が長引けば、堺市でも再び同様の事業を実施する可能性があります。
②の課題については、しっかり検証して、次に活かしてもらいたいものです。
①の課題については、なかなか難しい面もあると思います。
キャッシュレス決済には①のデメリットがある一方で、地域振興券などは印刷代などの間接コストがかかりますし、現金は消費にまわるとは限りません。また、双方、支給に時間がかかります。
キャッシュレス決済は、それらの点でははるかに優位性があります。
どのような対策をすれば、この優位性を活かしつつ、①の課題を小さくできるのか。
高齢者向け導入講座?未利用者には別途現金支給?新規導入にインセンティブ?
今後、行政の様々な施策において、キャッシュレス決済が利用されるケースが増えるのは間違いありませんから、この課題に対してもっと知恵を絞る必要があります。
お恥ずかしながら、私にはまだそのアイデアがありませんので、今回は問題提起にとどめ、これから他国、他市の事例をしっかり勉強したいと思います。
どなたかいいアイデアがあれば、ぜひ教えてくださいね。
堺市議会議員ふちがみ猛志