二重行政のムダは本当にあるのか③あるにはあるけど編
「二重行政のムダは本当にあるのか」の4回シリーズの3回目。
今回は、「あるにはあるけど」編です。
1.破綻事業編
2.公共施設編
3.あるにはあるけど編
4.成長戦略編
これまで1回目で「二重行政のムダやなくて、バブルのムダやん!」、2回目で「そもそも必要な公共施設はムダでもなんでもない」という話をしました。
では、本当に、まーーーーーったく、二重行政のムダはなかったのか?
いや、あるにはある。
私もそう思っています。
1つがWTCとりんくうゲートタワーの高さ競争。
もう1つが水道です。
【WTCとりんくうゲートタワー】
ほぼ同時期に建てられた大阪市のWTCと、大阪府のりんくうゲートタワーという2つの高層ビルは、まさに二重行政の象徴とされ、維新のホームページやチラシでも度々登場してきます。
当初252mで計画されたWTCが、後から計画ができたりんくうゲートタワーに高さで負けると知り、4m積み増して256mとしたものの、実はりんくうゲートタワーが256.1mだった・・。という話です。
まさにこの「4m積み増し」は、大阪市と大阪府のライバル関係によるところが大きく、「二重行政だったがゆえのムダ」と言えるの『かも』しれません。(※りんくうゲートタワーが、仮に福岡県にあったとしても、「西日本一」の座を狙って、積み増した可能性はあるので、「大阪府・市だから」と言い切るのは難しいところです)
しかし、ビルの建設そのものを「二重行政のムダ」というのは間違いです。
計画そのものが、互いをライバル視して作ったものではありませんし、開発された目的・場所が全く違います。
WTCは大阪市の都心近傍のベイエリア開発で、東京や横浜などでもジャンジャン行われていた類のものです。
りんくうゲートタワーは関空開港に合わせての周辺整備でした。「大都市の新空港ができるのに、周辺開発をしない」なんてありえませんからね。
それぞれの場所で、それぞれに需要があると見込んだんです。そして、それが各々見誤っていたんです。つまり、これも第一回で書いた「バブルのムダ」なんです。
仮にこの時、大阪府に権限・財源が一元化されていたとしても、バブルの空気感の中で、大阪府の一元化された強大な資金力によって2本とも建てられていたはずです。
「一元化されていれば、どちらか一本しか建設せず、今もその一本が活況を呈していはず!」なんてことはありえません。
また、シリーズ第1回にも書きましたが、夢洲に巨大ビルの建設が計画されているように、大阪市が廃止されたからといって、「高層ビルの建設がなくなる」というわけではないのです。
【水道】
大阪府内の水道事業(取水・浄水)は、大阪市内については大阪市が、それ以外の市町村については主に大阪府が担ってきました。
大阪市と大阪府(現在は大阪府広域水道企業団)の浄水場が、淀川に並んでいるものの、人口減少社会となり、節水技術も進む中、共に稼働率が落ち、供給過剰となり始めたのです。
これはまさに「二重行政」と言えるでしょう。(ただし!府と市がいがみ合って生まれたものではなく、社会の変化によって結果的にそうなっただけです)
この両者の水道事業を統合すれば、浄水施設のダウンサイジングが図れて、一定のコストダウン効果があるでしょう。
ただし、以下の2点を押さえておく必要があります。
①大阪市の廃止(都構想)でなくとも、解消できる
現に2013年、府の事業を継承した大阪広域水道企業団(当時:竹山企業長)と、大阪市(橋下市長)との間で事実上の合意がなされ、あとは大阪市会が了承するだけというところまで進んだのです。
※この両トップの合意は、トップ同士が政治的に対立していても、合意できるものはできるという証左です。
結局、この時は橋下市長が大阪市会を説得できず、最後の最後で頓挫することになるのですが、現在の大阪市会の維新と公明の立ち位置を考えた時、松井市長のリーダーシップで十分に実現できるものと思います。企業長は永藤市長ですから、企業団との交渉も問題ありません。
②大阪市民にとってメリットが乏しく、リスクはある
統合は大阪府全体にとっては、間違いなくプラスに働きます。
ただ、現在の大阪市の水道料金は大阪府内でもっとも安いので、統合によるコストダウンがあったとしても、府域のサービスの均質化の観点から、その恩恵を大阪市民が受けられるとは限りません。
また、経営的に厳しい市町村の配水事業(各家庭に水を届ける事業)とも統合することになります。大阪市の2倍以上の水道料金の自治体もありますから、多少の統合効果はあっても、大阪市自体は値上げの可能性すら否定できません。
何より、料金の決定権が府に移ります。もし「府域の料金の均一化(大阪市を値上げして、他の市町村を安く)」という流れになっても、大阪市民が選ぶ府議会議員は少数派となりますから、それは簡単に阻止できないでしょう。
これは必ずそうなるというものではありませんが、「不採算部門を抱える会社と合併すること」と「経営の決定権を失うこと(弱まること)」による、現実的なリスクです。
以上が、「二重行政のムダ」として、「あるにはあるけど」と挙げられるものです。
ただ、繰り返しますが、象徴とされるこれらの「ムダ」ですらも、
①膨大なモノとは言い難く、また、大阪市を廃止しなければ(都構想でなければ)解消できないものではない
②廃止したからといって、そのムダが金輪際なくなるわけでもないし、大きな効果が大阪市民にもたらされる確証があるわけでもない。
ということです。
堺市議会議員ふちがみ猛志