堺市にまだあった育休退園
こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。
去る10月22日に行われた埼玉県の所沢市長選挙で当選した、小野塚新市長が初登庁時の記者会見で「育休退園の廃止」を表明し、ニュースとなりました。
※NHKニュースより
8年前、所沢市ではこの育休退園に関連した訴訟があり、それ以降、市政の課題であり続けていたようで、ようやくそれに終止符が打たれた形となったようです。
堺市では、所沢市の訴訟で話題となった時に、当時新人だった私が当局に指摘し、育休退園は速やかに廃止されることとなりました。いや、なったはずでした。
しかし、そんな私にこのほど市民からメールが届いたのです。「堺市に育休退園はまだある」と。
今日はそんな「育休退園」について書きたいと思います。
育休退園とは?
上の子どもが保育園(等の保育施設)を利用中に、下の子が生まれ、親が育児休業を取ると、「下の子と一緒に家庭で保育できるはず」と見なされ、上の子が退園させられてしまうことを「育休退園」と言います。
「下の子(新生児)と上の子を同時に家庭で保育する大変さ」
「上の子の保育(集団生活)の継続性の大事さ」
「育児休業明けに兄弟2人の保育施設を探す大変さ」
などを一顧だにしない「育休退園」は、子育て世帯にあまりに冷たいものです。
2015年、所沢市ではこの育休退園を(あえて!)導入し、それによって退園を迫られた保護者が、取り消しを求めて市を訴えることとなり、全国的なニュースとなりました。
※NHKの情報番組より(当時)
そしてそのニュースの中で、「すでに育休退園のある自治体」として堺市の名前が挙がり、当時初当選間もなかった私は、「それはおかしい」と当局に掛け合うこととになったのでした。
所沢市と堺市の対応
所沢市は2015年に育休退園が問題となった後も、本年の新市長誕生までそれが続くことになりました。
なんせ、新市長誕生までの間、市長を続けていたのが、2015年に育休退園を制度化した市長だったわけです。訴訟にまでなったのに、よほどこの制度が正しいと思っていたのか、はたまた間違いを認めるのが嫌だったのか、そこまではよくわかりませんが…
いずれにせよ、所沢市民はこの市長を選び続けてきたわけです(もちろん、選挙はワンイシューではないのですが)。そして、つい最近までこの制度が残っていたわけです。
一方、堺市は速やかでした。
私の指摘を当時の担当課長が真摯に受け止め、制度の廃止に尽力してくれました。当時のことを詳しく記憶していませんが、6月末に所沢の件が全国ニュースとなり、8月14日には私がこんなブログを書いていますので、役所としてはかなりのスピード感です。
ブログ「堺は「育休退園」を廃止!!」
同年12月の私の大綱質疑においては、当時の子ども青少年局長が改めてそれを表明し、議員1年目ながらに「制度を改善できた」という達成感があったのをよく覚えています。
当事者からのメール
それから8年、冒頭の所沢市の小野塚新市長による「育休退園廃止」のニュースを目にし、「ようやくか」と上から目線(?)で眺めていた堺市の私に、驚くメールが届きました。
「子どもが生まれたら育休退園させられる」という堺市民からのメールでした。
※メールの抜粋
「まさか!?」と、その内容には半信半疑でしたが、メールに書かれた状況をもとに当局に確認すると「確かに、退園になる」との回答でした。廃止したはずの育休退園の、「廃止ではない例外」だったのです。
現場(区役所)の課長が即答できなかったことからも、レアケースであることが窺えました。しかし、いくらレアケースでも「あるにはある」わけで、私が憤った育休退園が、一部とはいえ残っていたのです。
私の8年前の発信(ブログ)が必ずしも正確でなかったことを、ここに改めてお詫びします。
例外として残っていた育休退園
例外として残っていた育休退園がどのようなものか説明します。
改めて、廃止した育休退園から説明しますと、
【事例A 廃止した育休退園】
1.就労しながら、上の子を保育施設に預けている。
2.下の子を妊娠する。
3.下の子を出産し、育休に入り、下の子は家庭で保育する。
4.「一緒に見れるよね」とばかりに上の子が退園させられる。
というもので、これを廃止し、4が(希望すれば)「保育施設を継続利用」に変わったわけです。
一方、残ってしまっていた育休退園はこのようなものでした。
【事例B 残っていた育休退園】
1.上の子を出産し、育休に入り、上の子を家庭で保育している。
2.下の子を妊娠し、上の子の家庭保育がしんどくなり、保育施設に預ける。
3.下の子を出産し、「下の子の育休」に入り、下の子は家庭で保育する。
4.「一緒に見れるよね」とばかりに上の子が退園させられる。
え!!!!???なぜ?
違いは一つだけ。
直近で上の子を保育施設に預けていた理由が、「就労」か「下の子の妊娠」かの違いだけです。
なのに、「保育継続」と「退園」という極端な差になってしまうのです。
「下の子(新生児)と上の子を同時に家庭で保育する大変さ」
「上の子の保育(集団生活)の継続性の大事さ」
「育児休業明けに兄弟2人の保育施設を探す大変さ」
これらに、上の子を保育施設に預けていた理由なんて、まったく関係ないはずです。私はまたも、担当課と掛け合うこととなりました。
速やかな対応と現場の苦悩
例外的に残っていた育休退園について、12月5日の大綱質疑で問いました。
子ども青少年局長は素直に(廃止したものと)「差がない」と認め、「できる限り早期に見直しを図る」と表明しました。
期限を明示してもらえなかったのは残念でしたが、「できる限り早期」という答弁は珍しく、少なくとも4月以降にそのような退園はなくなるものと確信しています。(現在、4/1入所の選定作業の真っただ中なので、途中でルールを変更しづらいのは一定理解できます)
それにしてもこの8年間、現場では問題とならなかったのでしょうか。
レアケースとはいえ、年間数例はあったようです。
私にメールをくださった方は、区役所の窓口で「上の子を育てられないと診断書をもらえば」と勧められたようです。単に「下の子の育児」では預けられないけど、「疾病」だと預けられるからです。
おそらく退園を迫られることを気の毒に思った現場職員の苦慮の判断なのでしょうが、いくら当事者のためとはいえ、市民にウソの申請をさせるかのような話でもあり、褒められたものではありません。ならば堂々と「この育休退園はおかしい」と現場から声が上がってくる、そんな市役所組織になってほしいものです。
そもそも0歳児育児は楽なのか?
保護者が2人とも「就労」していれば、保育施設を利用できます。当然です。
1人しか就労していなくとも、就労していない1人が別の家族の「介護」や「看護」に従事している場合、あるいは本人に「疾病」や「障害」がある場合も、「利用できる理由」になります。
そして「妊娠」している場合もです。
妊娠している時は、心身のバランスを崩しがちで、「上の子を家庭で保育しづらい」と、役所は捉えているからです。
ところが、「下の子の育児」というのは、保育施設を利用できる理由にはなっていません。つまり役所は「下の子の育児をしていても、上の子を家庭で同時に保育しづらいわけではない」と捉えているのです。
本当にそうなんでしょうか?
妊娠していることよりも、新生児育児の方が楽ですか?
もちろん、「そうだ」という方もいるでしょう。
でも、「そうではない」「新生児育児の方がよほど大変」という方もたくさんいるはずです。
出産後の体力の低下、3時間置きの授乳、夜泣き対応、生まれたばかりの命を守るプレッシャー等々、、、
「お腹の中に戻ってほしい…」と、そんなボヤキを聞くこともあります。
「新生児育児」を、「妊娠」等と同様に上の子を保育施設に預けられる理由として明確に位置付けるべきです。そもそもの育休退園という理不尽を生み出していた根本原因がそこにあるからです。
また、それが、役所が「新生児育児の大変さ」を公に認めることにもなり、大変な妊産婦に寄り添っていく第一歩になるのではないでしょうか。
でなければ、充実を目指している産後ケア事業も「仏作って魂入れず」だと思うのです。
バグを見つけられるのは当事者
最後に余談かもしれませんが。
今回の育休退園の「残っていた例外」は、行政サービスのバグのようなものです。
※バグとはコンピュータープログラムにおける、作成者の意図しない欠陥です。
議員の仕事をしていると、こういう行政サービスのバグにしばしば出くわします。そして、その行政サービスを構築した本人(たいてい市役所の本庁の職員)はそれに気づいておらず、現場の職員とそのサービスを受ける(あるいは受けられなかった)市民だけが気づいていたりします。もちろん、私たち議員もなかなか気づけません。
ですから、皆さんもこのような「行政サービスのバグ」に気づいた時は、躊躇せずに私たち議員に連絡してほしいのです。
そのバグを修正するのが、私たち議員の仕事です。
そのバグで憤り、困る市民が、あなたのあとにまた出てこないようにするために。
堺市議会議員ふちがみ猛志
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