堺市の財政をどう見るか④来年度予算編
いよいよ「堺市の財政をどう見るか」シリーズの最終回「来年度予算編」です。
①貯金(基金)編
②借金(市債)編
③固定経費編
④来年度予算編
の4回にわけてお伝えしてきました。
④来年度予算編
永藤市長は、昨年10月19日の記者会見で来年度予算(令和3年度予算)についてあれこれ語っています。その主張は、その後の11月議会での質疑や、維新の会の議員が発するSNSやチラシの中でも繰り返し発信されました。
ポイントを私なりにまとめると、
1.来年度予算の編成は危機的な状況で主要因の一つが前市政によるハコモノ
2.約40億の予算の見直しが必要
3.このまま何もしなければ令和4年度予算が組めない
ということのようです。
これを聞くと、「予算が組めない!!!!破産するの??」と市民は思ってしまうかもしれませんが、まっっったくそうではありません。
まず、大変な状況であることはその通りです。ただ、程度の問題で言えば、私はそれほどまでには心配はしていません。
【主要因はハコモノではない】
まわり道をして解説しますが、借金編、固定経費編でも述べた通り、財政悪化の主要因は、ハコモノでありません。
中長期的に見れば、たしかに公債費は増加基調にありますが、実質公債費比率が上がっていないことからも「収入の範囲内でよく抑えている」と見るべきです。
では短期的に見ればどうかと言うと…
これが記者会見での資料(※赤枠は渕上追記)ですが、ご覧の通り、ハコモノが数字として表れる「公債費」の増加は7億円です。
7億円が安いとは決して言いませんし、来年度予算の編成にあたっては一定の負担と言えるでしょう。
ただ、市債は数多の事業の積み上げの結果です。30年前から始まって返済が終わるもの、〇年前から始まったもの、今年から始まったもの・・・、という具合ですから、短期的には凸凹して当たり前なんです。
前年比でどのように推移したかのグラフですが、平成22年度から令和元年度にかけての10回の決算を見ても、「7億円以上増加した年」が5回あります。一方、「7億円以上減った年」も2回あります。
要するに、この程度の凸凹は決して珍しくないということです。(中長期的な増加については先述の通り)
毎年300億円台半ばの公債費ですから、それが7億円増えた、あるいは減ったと、短期的な凸凹に一喜一憂し、大騒ぎしていては財政運営なんてできないと私は思います。軽く見て構わないという意味ではなく、「公債費に関してシビアに見るべきは中長期的な傾向(特に収入とのバランス)」だと思うのです(※堺市公債費は中長期的に増加傾向だが、収入とのバランスは安定)。
【主要因はコロナ】
では、主要因は何か?
それは、「コロナ」です。
先ほど出した市長記者会見資料にもある通り、コロナによる税収減でマイナス67億円ですが、交付税でカバーされる分を差し引くと、マイナス18億円です。
GIGAスクール構想の10億円も、コロナによって急遽前倒しされることになったわけですから、コロナの影響が合計で28億円と言えるでしょう。
いや、扶助費の増加10億円も、少子高齢化が主たる理由でしょうが、コロナ禍による生活支援、生活保護費の増加等が考えられることから、この扶助費の増加もコロナと無関係ではありません。(コロナの影響は30億以上?)
公債費の増加7億円は先述の通りですから、予算の見直しが必要な額として示された40億円のほとんどは、コロナ禍によるものと言っていいでしょう。
だからこそ、私は「なんとかできる」と思っています。
堺市だけの特殊事情ではなく、国として対応すべき全国的な課題だからです。
【すでに国は動いている】
全国的な課題ゆえに、さすがに国もそれをほったらかしにしているわけではありません。
来年度予算では1.5兆円の地方創生臨時交付金が支給されることが、12月に閣議決定済みです。国会情勢から見て、これが悪い方向に覆ることはありえません。
このうちいくらが堺市に下りてくるかはわかりませんが、昨夏の交付金の事例から考えても、30億円前後は堅いのではないでしょうか。
もちろんそれを直接、「40億円の不足」の穴埋めにすることはできませんし、何にでも使えるわけではありません。
ただし、コロナ対策に資するものであれば、相当広い範囲に使えるはずですし、当初予算で付けた事業も、後からこの交付金に付け替えできるはずです。昨夏の交付金も、いったん5月に基金を取り崩して実施した事業に適用し、その基金の回復に充てた事例があります。
こうした時に行政は「堺市に交付される金額が正式にわからないから」と言うのかもしれませんが、常識的な範囲で想定はしておくべきですし、それが少しでも大きくなるように、政治的な働きかけもしていくべきです。堺市選出の元大臣や、現役政務官、(野党ではありますが)政党幹部もいらっしゃるわけですし、そうした国への働きかけのためにも東京事務所があるのですから。
【「このまま何もしなければ」はありえない】
永藤市長が会見でも議会でも繰り返し述べたのが「このまま何もしなければ令和4年度予算が組めない」ということです。
知らずに聞くとギョッとする発言ですが、こんなことは2つの観点でそもそもありえません。
1つは、市長には予算編成権があるからです。その市長が組める範囲で組むのが予算です。前年度より歳入が10%減れば、残った90%で予算を組むだけのことで、それが市長の仕事です。組む権限も、削る権限も、市長にはあるんです。(もちろん、組み方、削り方に対する議会からの賛否を受けて立つのも、市長の仕事です)
「組めない」という事象そのものがありえないのです。かつて破綻した夕張市でも予算は組んでいるんですよ。
2つ目は、「このまま何もしなければ」という前提がありえないのです。
「あと40億円削らねば」と大騒ぎですが、この10年の行政改革を見ても、毎年30~70億円程度の実績を挙げているのです。平成21年から30年までの10年間の行革効果額の平均値が48億円です。
この行革効果額はあくまでも理論値ですから、そっくりそのままの額のお金が浮いているとは限りませんが、「近い規模の見直しは毎年行っている」「何もしなかった年など、いまだかつてない」ということです。ただ、大きな規模の行革が長年続いていますから、乾いた雑巾を絞るようなもので、「40億円の削減」そのものが一筋縄ではいかないということは、間違いありません。(かといって、どうしようもない話でもありません)
【来年度予算編 まとめ】
1)来年度予算の編成作業が大変なのは間違いない
2)それはハコモノではなく、コロナが主要因
3)ゆえに国からの大規模な臨時交付金が内定しており、その活用がポイント
4)「このまま何もしなければ」という前提も、「編成ができない」もありえない
5)これまでの行革実績から見ても、40億円削減は手の届かないレベルではない
お分かり頂けましたでしょうか?
4回シリーズで終わる予定でしたが、このあと、「まとめ&おまけ編」を綴りたいと
思います。もう少しだけお付き合いください。
堺市議会議員ふちがみ猛志
次は、⑤まとめ&おまけ編 へ