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子どもは倍でも予算はそのまま

こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。

 

決算審査特別委員会第二分科会(文教委員会所管事項)にて、外国ルーツの子どもへの日本語指導について質疑をしました。

 

これまでも幾度か取り上げたテーマですが、、、

 

日本語指導が必要な子どもの数がこの10年で2倍。

しかし、この10年で予算は増えていない。

それがこの問題の根幹です。

 

そして、そんな増えない予算の中で、現場で何が起こっているのか。この決算議会で確認し、改善を求めました。

 

日本語指導に関わる3つの制度

堺市には以下の3つの制度があります。

 

①寄り添い指導員

日本語がわからない子に付き添って、学校生活を母語で支援します。通訳のようなイメージですね。当然、「母語が堪能」が要件で、ポルトガル語やタガログ語、ベトナム語等、英語以外のニーズが高く、報酬は2時間で5500円。

                                               

②自立支援日本語指導員

日本語を教えます。基本的には授業から対象児童生徒を取り出しての指導です。よって「日本語指導の技能を持つ人」が対象です。現時点で明確な基準はありませんが、日本語指導について大学で勉強した方や、420時間の日本語教師養成講座を受講した方などが採用対象です。こちらも報酬は2時間で5500円です。

③日本語サポーター

日本語の習熟が不十分な子が授業についていけるよう、授業に付き添って「やさしい日本語」でサポートします。要件はありません。報酬は3時間2400円(最低賃金以下!)で、いわゆる有償ボランティアです。

 

限られた予算で起こっていること

先述の通り、堺市の日本語指導の予算は長らくの間横ばいです。

 

そこで2年半前、堺市教育委員会は日本語指導を2点、大きく変えました。

 

1つは「センター校」を作ったことです。

 

来日間もない、日本語がほとんでできない子をセンター校に集め、集中的に初期の日本語指導をするようになったのです。

初めから個別に日本語指導員を張り付けるよりも、予算面では大きく削減ができるはずです。

この取り組みについては、この議会でも「日本語初期レベルの対象児童生徒への支援体制充実により、生活言語の習得には一定の成果が見られた」と、教育委員会は自己評価しています。

 

もう1つは先ほど紹介した「日本語サポーター」を設置したことです。

 

それなりの報酬(特別な技能が必要なので当然ですが)の自立支援日本語指導員(②)の現場への派遣回数を大きく減らし、代わりに低報酬(ボランティア)の日本語サポーター(③)を多く派遣することで補おうとしたのです。

 

具体的には、令和2年に1800回、3年に2600回ほどあった自立支援日本語指導員の派遣回数が、令和4年には590回に減らされ、一方で日本語サポーターが5000回ほど派遣されることになったのです。

 

現場で起こっていること

指導が必要な子どもの数が大きく増えているのに、寄り添い指導員(①)は横ばい(ここ数年400回程度で推移)、自立支援日本語指導員は大きく削減ですから、1人あたりの派遣回数が足りません

 

たとえば、1人あたりの派遣回数が5回。

派遣1回で2時間ですから、10時間です。たった10時間。

それで「母語での支援が不要になる?」「日本語で授業についていけるようになる?」

 

皆さんはどう思われますか?

ご自身のお子さんがベトナムやフィリピンの学校に行ったと思って、想像してみてください。当然、足りないのです。

 

派遣回数(≒予算)が底を尽きた学校は、苦慮してその寄り添い指導員さんや、自立支援日本語指導員さんに頼むのです。

 

「引き続き日本語サポーターとして、この子を支援してもらえませんか?」と。

 

低報酬の日本語サポーターの派遣は別個に予算が設定されており、また学校に判断が委ねられています。

寄り添い指導員や自立支援日本語指導員としていったん支援にあたった子が、「まだ支援が必要」だと、指導員さんが一番よくわかっているので、なかなか断れません。

こうして、少なからぬ寄り添い指導員、自立支援日本語指導員が、「日本語サポーター」に肩書を変え、そして報酬を1/4以下にして、引き続き支援にあたっているのです。

 

サポーターになった寄り添い指導員

寄り添い指導員も、日本語サポーターも、「授業で横について支援する」という点は同じで、支援に使うのがその子の「母語」なのか、「やさしい日本語」なのかの違いです。

 

しかし、寄り添い指導員が肩書を日本語サポーターに変えたからといって、使っていた母語を封印するはずがありません。引き続き母語で支援するのです。

 

同じ人が、同じ技能を使って、同じ仕事をする。

なのに、報酬は1/4以下になる。

 

「この子のために」という責任感ややる気、その子の成長が見られるというやりがいを利用して、最低賃金以下で働かせる。そして予算を浮かせる(予算上の利益を得る)

これを、やりがい搾取と言わずして、何と言いましょうや。

 

サポーターになった日本語指導員

自立支援日本語指導員の場合は、それに加え、本来やるべき日本語指導ができなくなります。

 

センター校での初期指導を終え、在籍校に戻った子どもを指導するのは、生活言語というよりも、むしろ学習言語です。

 

正確に助詞を使いわけることや、漢字を書くこと、読むこと、同音異義語などなど、、、日本語の大変さはそこからで、相当な技能が必要なことは想像がつくだろうと思います。そして、それは「授業からの取り出し」でないとできるものではありません。

その難しさについては、過去にもブログに書かせてもらいました。↓↓↓

https://fuchigami.info/%e7%8f%be%e5%a0%b4%e3%81%ae%e5%a3%b0%e3%81%ab%e8%80%b3%e3%82%92%e5%82%be%e3%81%91%e3%81%aa%e3%81%84%e4%bd%93%e8%b3%aa%e3%81%aa%e3%81%ae%e3%81%8b/

 

そうです、その時、2年半前にも、「学習言語の指導は授業での入り込みでは無理、取り出しでないとダメ」と私は指摘していたのです。

 

日本語サポーターとなり、授業の横(入り込み)での支援となった元自立支援日本語指導員さんは、日本語指導のスキルがありながら、それを活かしきれずにいるのです。これは、飼い殺しと言っていいでしょう。

 

一方で教育委員会は、現状について「学習言語能力に課題のある対象児童生徒への支援が課題」と認めています。

だったら、この飼い殺しを止めて、自立支援日本語指導員としして学習言語の指導にあたってもらうべきです。

 

人材獲得競争に出遅れる堺市

これから日本語教育に関わる人材は、激しい獲得競争になっていくだろうと思います。

 

日本語指導が必要な外国ルーツの方(子どもも大人も)は増える一方です。

そこで文科省は、今年度から「日本語教師」を国家資格とし、その質と量の向上を目指しています。今後、日本語教師の報酬もそれに伴って上がっていくことでしょう。

 

堺市がもし、今のような「やりがい搾取」や「飼い殺し」を続けているようでは、他市との人材獲得競争にどんどん遅れを取っていくことでしょう。

 

優秀な方は資格を取り、それに見合った報酬の現場を選び、堺市を離れていくでしょう。

実はそのようなことが、すでに他の職種では起こっているのです。その1つが、スクールソーシャルワーカーです。

 

子どもたちのために働いてくれる方々の専門性をリスペクトせよ。

そして、それに合った待遇を用意せよ。

教員と、他の専門スタッフとが互いに認め合ってこその「チーム学校」である。

 

これが私が何度も何度も主張していることです。

 

日本語教育は外国ルーツの子だけのためにあらず

私は「日本語教育の充実」を長らく訴えてきました。しかし、それは外国ルーツの子どものためだけを思ってのことではありません。

 

日本語教育の推進に関する法律の第一条には、このような一文があります。

 

「日本語教育の推進が、我が国に居住する外国人が日常生活及び社会生活を国民と共に円滑に営むことができる環境の整備に資するとともに、我が国に対する諸外国の理解と関心を深める上で重要である(以下略)

 

堺市教育委員会は「グローバルに活躍できる人材の育成」を目指しています。

 

クラスの中で、外国ルーツの子の日本語能力が上がって、他のクラスの子とコミュニケーションが取りやすくなることが、他の子の教育にもプラスになるのは間違いありません。

それに加え、条文が示すように、巡り巡って、諸外国の日本への理解を深め、いつしか子どもたちが世界に出て活躍する時の大きな助けにもなる。私はそう信じています。

教育委員会は議会答弁で「さらなる予算措置が必要」と認めてくれました。

この問題は引き続き、追いかけていきます。

 

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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