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家庭訪問がなくなる?

先日、ある学校で「毎年の家庭訪問をなくしていく」との話があり、それを知った保護者から「それでいいの?」との声が寄せられました。
私は、「家庭訪問は当たり前にやるもの」と思っていましたから、いくつかの学校についても確認してみると、「もうなくした」「なくす方向」と聞き、大変驚き、そのことを「育ちと学び応援施策調査特別委員会」の質疑で取り上げました。

ハッキリ言えば、私は「一保護者としては」、毎年の家庭訪問はなくていいと思っています。

わざわざ家まで来ていただくのは大変でしょうし、
こちらも仕事を調整して時間を合わせるのも大変です。
また、(多くの方がそうでしょうが)自分の家庭に問題があるとも思っていませんし、
PTAの用事や授業参観などで学校に出入りする頻度も多く、あまり必要と思えません。

でも、「保護者として」ではなく、「行政の立場として」それがいいのかどうかとなると、家庭訪問がなくなっていく現状に、私は首を傾げてしまうのです。

虐待が大きな社会問題となる中、虐待や、それに繋がりうる子育て家庭の課題の早期発見のため、行政が子育て家庭との接点を増やしています

乳児家庭の全戸訪問や、乳幼児健診や、その未受診者への後追い訪問などです。
虐待防止の観点から、その回数を増やすべきとの意見も少なくありません。
子育て広場や、子ども食堂も、間接的ではありますが、その意味での「接点」と言えるでしょう。
明石市などは、家庭との接点を増やすために、おむつの配布事業まで始めています。
おむつを配りたいにはなく、おむつを無償で手渡しすることを理由にして、子育て家庭に接触したいのです。

こうして、子育て支援部局が、子育て家庭との接点を増やすことに苦心している一方で、同じ行政機関である教育委員会が、社会慣習としてすでに確立している「学校における家庭訪問」という接点を、自ら放棄しつつあることは、矛盾と言えないでしょうか。

このことを、教育委員会や教育現場の責任とは思いません。

今回の質疑でやり取りする上で驚いたのが、そもそも文部科学省が、「学校における家庭訪問」について、何ら定義づけしていないのです。
どのような目的で行うのか、またどれくらいの頻度でやるべきなのか、まったく規定がないのです。
「全くしない」から、「全員に定期的にする」まで、まったくの現場のフリーハンドなのです。

学校の現場はいま、大変な多忙化の中にあります。
その中で、何ら規定がなく、保護者負担も伴う学校の家庭訪問を、自主的に定期的にやるというのは、なかなかしんどい話です。現場が気の毒です。そりゃ、やめる方向にならざるを得ないでしょう。

しかし、文部科学省が定義づけなくとも、実は厚生労働省がこの重要性を認めています
厚生労働省が平成29年に作成した「新しい社会養育ビジョン」において、社会的養育(虐待対策や、その上流となる家庭支援など、社会全般での養育支援)の出発点を、支援のニーズを把握することとし、その把握の手段として挙げられた3つのうちの1つが、「学校における家庭訪問」なのです。

現に、虐待や虐待疑いなどで、子ども相談所が一時保護した児童のうち、学校が通報元となったケースが、全体の15%に上っています。(もちろん、それがすべて家庭訪問によって発見されたわけではありませんが)

家庭訪問は、子どもの背景にある家庭の状況を把握する上で有効だと、教育委員会も認めています。教育上重要・有効であるだけでなく、先に述べた、社会的養育の観点で重要なのです。

以上のことを踏まえ、私は以下の要望をしました。

① (文科省が定義づけしないなら)教育委員会として家庭訪問を定義づけること。目的や意義、最低限やるべき頻度など。

② 上記①ができる体制を整えること。主には人的な体制強化、その他の多忙化解消に資する取り組みなど。また、一例ではあるが夕刻に集中しがちな家庭訪問を考慮して、フレックスを導入するなども。

③ 家庭訪問ができないなら、それに代わる「子どもの家庭の課題の把握」に繋がる取り組みを考えること。教員の友人から提案があった「防災の図上演習で家の状態を把握」「食育で冷蔵庫やキッチンの様子を知る」等を、一例として紹介。

④ 子ども青少年局として、新しい社会的養育プランに位置付けられた「学校における家庭訪問」が実施できるよう、あるいはその代替する何かを実施するため、協力すること。代替の一例として、幼稚園・保育所等との家庭環境情報の引継ぎの強化。

⑤ 堺市の社会的養護推進計画では、入口対策と、部局間連携の視点が欠けており、それを盛り込むこと

奇しくも、この議論の前日に、永藤市長が虐待防止の話の流れから、ツイッターで「教育現場の体制強化」を表明しました。
教育の視点ではなく、社会的養育の視点でこれを発したことを、私は評価しています。

子どもの命を守るのは、「社会的養護・社会的養育」という通り、社会全体でなすべきことです。ゆえに堺市当局においても、子ども青少年局だけでなく、教育委員会や、健康福祉局、区役所など、様々な部局が連携して、それを深化させていくことを願っています。

この件については、今後も定期的にウォッチして参ります。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

意見・提案