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またあった医療的ケア児の落とし穴

こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。

 

これまで私は医療的ケア児の問題に少なからず取り組んできました。

(これまで何度も書きましたが)医療的ケア児とは、日常生活においてたん吸引や経管栄養注入などの医療的な支援が必要な子どものことです。

医療的ケア児支援法が2年前に成立し、教育や保育の現場での支援が義務付けられましたが、実態はまだまだ法の目指すところには追い付いていません。法の抜け穴というか、落とし穴のようなものが存在してるのです。

 

今日はそんな落とし穴をまた一つ見つけた・・という話です。

 

これまでの私の取り組み

医療的ケア児に関連するもので、私がこれまでに議会質疑等を通じて関わってきたものには、以下のようなものがあります。(以下、「医ケア児」とします)

 

1.医ケア児を受け入れられる小規模保育の設置

2.民間園での医ケア児受け入れの際の看護支援員への人件費補助

3.医ケア児等、学校での就学相談における「子どもの希望」の確実な聴取https://fuchigami.info/%e5%ad%90%e3%81%a9%e3%82%82%e3%81%ae%e6%a8%a9%e5%88%a9%e3%81%af%e5%ae%88%e3%82%89%e3%82%8c%e3%81%a6%e3%81%84%e3%82%8b%e3%81%ae%e3%81%8b/

4.学校での医ケア児の受け入れガイドラインの策定https://fuchigami.info/%e6%95%99%e8%82%b2%e5%a7%94%e5%93%a1%e4%bc%9a%e3%81%8c%e6%94%be%e7%bd%ae%e3%81%97%e3%81%9f%e9%80%9a%e7%9f%a5%e3%81%a8%e7%8f%be%e5%a0%b4%e3%81%ae%e5%a3%b0/

※3、4については関連ブログをご参照ください。

 

念のため申しますと、これらは別に私の手柄というわけではなく、特に1や2あたりは医ケア児にしっかり目を向けてくれる職員さんがいたからこそ実現したものです。また私以外にも医ケア児の問題を積極的に議会で取り上げている議員もいます。

 

先に「落とし穴」という言葉を使いましたが、学校での医ケア児の受け入れが責務とされながら、「受け入れた上でどう支援するか」を規定したガイドラインが作られていなかったのは、まさに落とし穴のようなものだったと私は感じています(4)。

 

ある高石市民からの相談

今回、医ケア児の問題に現場で取り組まれている方を通じ、高石市の医ケア児の保護者の相談を受けました。

 

高石市で「医ケア児を受け入れてくれる保育所・子ども園がない」と言う話でした。

聞くと、高石市では先述の1のような施設がない上、また2のような補助金もないので民間園も受け入れできず(看護支援員の人件費がほぼ園持ちになってしまう)、さらには公立保育所でも受け入れしていないと言うのです。

 

高石市では児童発達支援センターがその受け皿になっているそうですが、あくまでもそこは障がい児の療育施設です。保育所・子ども園に比べて開所時間が短く、共働き家庭には非常に不便ですし、健常児との保育ではありません。私に相談のあったお子さんは、医ケア児ではあるものの、酸素吸入のチューブをつけているだけで、それ以外は健常児と変わらないため、保育所での健常児との集団生活を希望されていたのです。

 

とはいえ、お隣の高石市にその環境がないのならば・・、堺市で受け入れられないだろうか?

私は堺市の各部署にあたりました。

 

健常児にできて医ケア児にできないこと

堺市民でも他市の保育所・子ども園を利用することができます。もちろん逆もしかりで、高石市民が堺市の施設を利用することができます。市境に住まわれている方もいますし、自宅ではなく職場の近くの保育所を使いたいという人もいますからね。

 

しかし、それはあくでも健常児の話だったのです。

医ケア児の場合、高石市民が堺市の施設を使うことはできない・・・・。私はそれを聞いて驚きました。

 

なぜ健常児ならできて、医ケア児ならできないのか??

 

たとえば、高石市民が堺市の保育施設を利用した場合、保育にかかるお金は高石市が払います。居住自治体が払う仕組みです。

ただし、それはあくまでも標準の保育料の話です。

 

医ケア児を受け入れるとなると、看護支援員(の人件費)が必要となります。

堺市は先述の2の補助制度があるので問題になりにくいのですが、高石市にはそれがないため、払いたくても払えないのです。よって、高石市民の医ケア児を堺市で受け入れた場合、看護支援員の人件費は堺市持ち、あるいは施設持ちになってしまうわけです。

 

今の保育施設に1人分の人件費を自前で持てる余裕などあるはずもなく、堺市としても(出してあげたいところですが)ホイホイといくらでも出せるものではありません。この補助制度は国費も入っており、その縛りもあるでしょう。

 

健常児なら他市の子どもを受け入れられるけど、医ケア児は(実質的に)受け入れらない。

保育事業者に医ケア児の受け入れを責務として課す法がある一方で、こんな落とし穴があるとは、なんとかせねばと強く感じました。

 

こういうものこそ広域で、連携で

そもそも健常児に比べ、医ケア児の方が圧倒的に保育の受け皿が少ないのです。いくら看護支援員の補助制度があっても、そう簡単に人を見つけてこられるものではありませんからね。

 

今回の件は当然ながら一義的に高石市に何とかしてもらわねばならない話です。

高石市が2の補助制度を実施すれば、おそらく堺市の施設で受け入れることも可能となるでしょうし、高石市内でも受け入れ可能な施設が出てくることでしょう。

 

じゃあ、泉大津市は?大阪狭山市は?松原市は?どうでしょうか?

私は現時点でどうなっているのか知りませんが、高石市と同様の自治体がないとも限りません。

医ケア児(かつ保育所入所希望者)が増えているとは言え、まだまだ圧倒的なマイノリティですから、小さな市になると該当者がほとんどいなくて、そのような制度を作ろうというモチベーションがないのかもしれません。

だからこのようなものこそ、大阪府が広域で取り組むべきではないかと思います。あるいは、堺市がやるにしても、周辺自治体にも声をかけ、互いに連携し、融通しあえる環境を作るべきではないでしょうか。

 

現に堺市には、わざわざ他市から引っ越してきて、堺市の施設を利用している方もいるようです。ただでさえ負担の大きい医ケア児の子育てで、引っ越しまで迫られるなんてあってはならないと思います。

 

高石市は高石市として、高石市のある議員さんに対応をお願いしました。

同時に、堺市として堺市を頼る子どもたちに何ができるのか、私の立場でこの落とし穴を塞ぐべく取り組みたいと思っています。

 

感心した堺市職員の対応

余談になりますが、今回の件で感心した堺市職員の対応がありました。

 

「堺市で受け入れられないの?」の私の問いに「残念ながら・・」という返事だったのですが、事情を聞いた彼は、わざわざ高石市の担当課に掛け合ってくれたのです。

すると、高石市からは「これまで受け入れてなかったけれど、公立保育所での受け入れを検討しなければならないと思っている。当事者と話をさせてもらう。」との返事がありました。

 

相談主からは、高石市役所ではいい返事をもらえなかったと聞いていましたが・・・、大きな前進です。医ケア児の受け入れでは先を行く堺市の職員の問い合わせを受け、先方も「何とかせねば」という思いになったのかもしれません。

 

役所というものは、えてして縦割り意識が強く、自分の担当以外の話になると「うちじゃない」で終わってしまうことが多いと私は感じますし、世間からもそのように指摘されがちです。

しかしどうでしょう。この職員は自分の担当どころか、高石市民のためにこうやって動いてくれたのです。どこの市民であろうが、子どもは子ども。困っている子どものために行動してくれる職員がいるならば、堺市の子ども子育て行政も、決して捨てたものではありませんね。

 

ここ数年、子ども青少年局には苦言を呈する機会が多かったのですが、久々に明るい気持ちにさせてもらいました。

 

とはいえ、「医ケア児は他市で保育を受けられない」問題は未解決です。

私もこれからしっかり取り組ませてもらいまして、またこのブログでいい報告ができればと思っています。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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