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市民憲章は前前時代的!

昨日、成人式が行われました。
私も来賓としてお招きにあずかり、堂々と堺市民憲章を読み上げる新成人の姿を見て、その凛々しさを頼もしく感じたところです。

さて、気になったのは、「堺市民憲章」の中身です。

堺市民憲章は、昭和38年に「みんながともに守っていく」もの、守っていく精神として、定められたもので、成人式を始め、市の様々な主催イベントで朗読されています。

※成人式のパンフレットにも記載

前もって申し上げますが、新成人や成人式にケチをつけたいのでは、決してありません。
前々から、議会でも「堺市民憲章が前時代的で、違和感がある」と指摘してきましたし、きっと、成人式で読み上げてくれた新成人も、同様の違和感を覚えたのではないかと思い、改めてここでブログに纏めることにした次第です。

ではまず、堺市民憲章を確認してみましょう。

※※堺市民憲章※※

わたくしたち市民は

1 たくましく働くことに喜びをもち、生産の向上につくします。

1 教育に力をそそぎ、すぐれた文化のまちをつくります。

1 愛と信頼をもって助け合い、平和で健康な生活をきずきます。

1 秩序を重んじ、ひとに迷惑をかけないようにします。

1 心をあわせ、美しい清潔なまちづくりにつとめます。
※※※※※

どうでしょうか?
違和感はありませんか?

私が強く違和感を覚えるのは、2つです。

まず、第1項。
市民が守るべきものとして、真っ先に「生産の向上」が挙げられています。
生産が上がるに越したことはありませんが、それが市民の幸せや、まちの目指すべき第一のものとは思えません。
また、その冒頭が「たくましく働くことに喜びを持ち」です。
個人的にそういう働き方をされるのは自由だし、私もどちらかと言えばそういうタイプですが、働き方は実に多様化しています。
ほどほどに働きたい人、あるいは「たくましく働きたいけど、あまり働けない人」、それぞれにその人なりのやり甲斐や喜びを見出せればいいわけで、「たくましく働くこと」が第一ではないはずです。

人生の喜びは「働き」だけではなく、「学び」や「遊び」もありますが、「遊び」に関する記述はなく、「働き」に、それも「たくましく働き」にあまりに偏重していると感じます。

つづいて第4項。

「人に迷惑をかけないようにします」

人は生きていれば、失敗をしたり、他人に迷惑をかけてしまったりするものです。
個人個人が「かけまい」と思うことは自由だし、私も自分に対しては、そう思っています。
しかし、「行政が」作成に関わっている市民憲章です。そこでこれを言うのはどうなんでしょうか。
人生において、人に迷惑をかけてしまうような大変な事態にこそ、手を差し伸べるべきなのが行政です。
少なくとも、「迷惑をかけるようなことがあっても、互いに助け合い、許し合おう」というスタンスでありたいものです。

「たくましく働こう」
「迷惑はかけないように」

この2つだけにフォーカスして見ると、ついつい、最近の生活保護バッシングを連想してしまい、私はいい気持ちでスッと入ってきません。

これらを個人が自分自身に課すのはいいと思うのですが、行政が関わった上で「ともに守っていくもの」として市民全体に課そうとするのはどうかと思うのです。

細かいことを指摘すれば、第5項の「美しい清潔なまちづくり」も、これはこれで正しいのですが、あくまで「まちの美化」に留まっています。環境モデル都市の堺としては、もう少し地球環境にも目を向けたものに、グレードアップすべきだと思います。そういう意味で「違和感」です。

そもそも、これが作られたのは昭和38年、高度成長期です。
その頃には、これが違和感なく受け入れられたのだと思います。

しかし時代は変わっています。

作成時に、大前提となる堺市の都市像を「国際的工業都市」と規定しています。
しかし、今、堺市にそのようなイメージを持つ、あるいは目指そうとする市民はどれだけいるでしょうか。

堺市がいま公式に打ち出している都市像は、

SDGs未来都市(※)
子育てのまち
歴史と文化のまち
国際平和人権都市
環境モデル都市
非核平和先進都市…

などなど、たくさんありますが、市民憲章が打ち出す「国際的工業都市」とは、どれも違います。

※SDGs…持続可能な開発目標

こうした都市像に内包される、

「多様性」
「平和」
「人権」
「環境」
「持続的な発展」

といった視点が、この市民憲章には含まれていない、あるいは弱いのです。

そして、それらを含んだものに、リニューアルすべきと、私は思っています。

すでに堺市は、そうした視点で様々な施策を推進していますから、「市民憲章をそれに合わせればいい」という話です。

もう平成も終わります。
昭和38年に作られた市民憲章を「前時代的だ」と批判しましたが、そう言ってるうちに「前前時代的」になってしまうわけですね(苦笑)。

次の成人式には、新成人が違和感なく、共感して朗読できるような、そんな市民憲章に生まれ変わっていることを期待しています。

ちなみに、私がこの話を議会で取り上げたことを受け、毎日新聞が記事にしてくれました。
毎日新聞記事「堺市民憲章は時代遅れ」

生活保護云々のくだりが強く書かれていて、そこは質疑では、オマケ程度だったんですけどね。

ふちがみ猛志

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