所得制限で晒されるプライバシー
高齢者が100円でバスに乗れる「おでかけ応援バス」について、永藤市長が「拡充する」という公約を破り、削減しようと遮二無二突っ走っています。
前の議会では、「65~69歳」を対象から外すという提案をして、否決。
今議会では、「65~69歳の課税世帯」を対象から外すという形で再提案しています。
このことは、すでにブログでも書きました。
https://fuchigami.info/厚顔無恥なおでかけ応援バス削減の再提案/
前回に比べ、「65~69歳の『非』課税世帯」が対象として残ったことになります。
つまり、低所得者対策をしたということです。
じゃあ、前よりもよくなったのか?(マシになったのか?)
私の答えは、NO!です。
ハッキリ言って、前の方がマシ!とすら思っています。(前のも酷いんですが、今回はもっと酷い)
理由はいくつかありますが、その大きな1つが「プライバシーがさらけ出されるから」です。
この制度の対象として残る(とされている)65~69歳の非課税世帯の方が、このおでかけ応援バス制度を利用する(バス乗車時に利用者証を出す)ということは、「私は非課税世帯(低所得)です」と宣言するようなものです。おそらく、多くの人にとって気分のいいものではないでしょう。
実は、このことについては共産党議員が議会でも「プライバシーがさらけ出される」と、同様の指摘をしていました。しかし、その時、おでかけ応援バスの削減に賛成している維新の議員からは、鼻で笑うような様子が見られました。すると、案の定、維新の議員は、この「プライバシーがさらけ出される」という指摘を、質疑の中で真向から否定してきたのです。
維新の議員の反論はこうでした。
所得制限されるのは65~69歳のみで、70歳以上は所得制限されていない。
乗車時におでかけ応援利用者証を出したところで、その人が何歳かわからないのだから、非課税世帯かどうかはわからない。だから、プライバシーは晒されない。
それを聞いて私はすかさずヤジを飛ばしました。
「一緒に乗車している友達にはわかるぞ!」と。
維新の議員は、その場で初めてそのことに気付いたのでしょうか。少し考えて、「たしかに友達にはわかるけど、そのようなことを深く詮索しないのが、友達というものだ」と(いう主旨のことを)反論しました。
どうなんでしょうかね?
深く詮索さえされなければ、低所得だということが友達に知られてもいいもんですかね。平気な人もいるでしょうけど、、詮索されてなくても、知られること自体を「嫌だ」って言う人も、たくさんいるんじゃないでしょうか。
私はわかりやすく「友達」と言いましたが、友達でなくとも、同僚や、近所の人、色んな形で面識のある人とバスに乗ること、居合わせることくらいあるはずです。その中には、自分が65~69歳(くらい)であることを知っている人もいるはずです。そういうシチュエーションは、容易に想像がつきます。
たとえば、70歳以上でも若く見える方は、「周りからそのように見られたら嫌だなぁ」と思ってしまうかもしれません。
維新の議員は、「生活保護も同じだ」というような反論もしていました。所得制限のある制度は他にもある、と言いたいのです。
しかし、生活保護にしろ、児童扶養手当にしろ、それらは役所の窓口で手続きすればよく、何も公衆の面前で「利用者だ」と表明すること、バレることなど、まずありません。
一方、おでかけ応援バスは、「高齢者のおでかけ支援」「社会参加の促進」が目的ですから、「他人(それも、知り合い)と一緒に利用する」ということがそもそも想定されているわけです。
このような「プライバシーがさらけ出される」制度、それによって利用者が使いにくい、気持ちよく使えない、という制度はよくないし、そのような改悪は加えるべきではないと思います。
ただし、物事にはいい面も悪い面もあるものです。だから、「たしかにプライバシーはさらけ出されるかもしれないが・・、こういうメリットもある」とか、「こういう工夫でその課題を軽減できる」なんていう議論ならば、大いにすればいいと思います。
しかし、「プライバシーがさらけ出されるようなことはない」かのように言い切ってしまう主張には、あまりに想像力がなさすぎると思わざるを得ません。本当にため息の出るやり取りでした。
当事者の立場や気持ちに想像力を働かせること。それは、議員にとって不可欠な能力の1つだと、私は思っています。
それが欠落した議論が、残念でなりませんでした。
堺市議会議員ふちがみ猛志