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維新の進める保育と教育の無償化への懸念

堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。

子育て・教育に熱心に取り組む地方議員にとって、なかなかパンチ力のあるニュースが飛び込んできました。

 

大阪市長選挙が4月に迫り、候補者が確定している維新陣営からの政策の発信が続いています。

そこで出てきたのが「維新版教育無償化モデル8つの無償化」というこちらの画像で、「0~2才の保育無償化」を第一子からやるというものに始まり、小中学校の給食無償化、高校授業料無償化、大阪公立大学の無償化などなどへと続く、怒涛の無償化策です。

 

いやはや、すごいですね。感心しました。大阪市の話ですけども。

まず、こうして子育て・教育への経済的負担を減らそうとする姿勢は大歓迎です。

 

維新の政調会長である音喜多衆議院議員はこれらの無償化について「本来は国でやるべきこと」としつつ、「国がやらないなら地方から実行する」と発信しています。これも本当にその通りだと思います。

 

少しだけ脇道に逸れますが、堺市では平成29年の時点で「第二子以降の保育料の無償化」を打ち出し、当時としてはかなり先進的な取り組みでした。そして、段階的に無償化が進んできたんですが、永藤市長が止めちゃいましたね。

彼は「財政危機だから」と言い、私は「危機ではない」と考え、そこは相いれないのですが、何はともあれ「もし実行していたら」あるいは「できていたら」、音喜多議員が言うような「国がやらないなら地方から」の象徴的な取り組みになっていたことでしょう。残念です。

 

本題に戻ります。

 

誤解を招かないように改めて、「保育や教育の無償化は歓迎する」という大前提を示した上で、それでもこの怒涛の無償化策には懸念することもあります。

 

保育や教育の担い手について一切触れられていない中、「安く提供する」ことだけが先走っていることです。

 

これらの無償化の実施時期が書かれていませんから、どのように進めていくのかは定かではありませんが・・

 

仮に「第一子からの0~2才の保育料無償化」を早急に実施すると、保育需要をかなり掘り起こすことでしょう。

(掘り起こすこと自体はいいんですが)大阪市はいまも待機児童がいる状態で、特に都心部では希望の園にはなかなか行けない、厳しい状況が続いています。

今はコロナ禍でどこも保育需要が減っている状況ですが、コロナ禍の落ち着きと共に回復するでしょうし、そこに無償化が加わると、一気に保育の受け入れ枠が足りなくなると思われます。

「タダで保育を受けられる人がいる一方で、待機児童がいる」というのは、著しい不公平です。

また、このところの保育や幼児教育の現場における事故や事件の背景に、保育士不足・保育士の過重労働が挙げられています。

バスの置き去り事件や、虐待事件がそうでした。

※産経新聞ニュースより

 

そうした中、保育士の処遇改善や、配置基準の見直しが盛んに求められています。堺市はまさに「国がやらないなら地方から」と、厚労省の保育士配置基準に独自で上乗せしています。また、いくつかの追加配置メニューを用意しています(永藤市長が減らしちゃいましたけど)

一方、大阪市は、このような独自の上乗せはあまりなかったように思います。かつてあった「1才児への保育士の加配」を橋下市長の時に失くしたままだと思います。

 

このような保育の質を上げるための取り組みをしないままに、無償化策ばかりが先行すると、保育士不足がより一層深刻になるのは火を見るよりも明らかで、現場に大きな負担がかかることでしょう。本当に心配です。

教育も然りです。

大阪からの教員離れはずっと言われ続けていることです。そして、教育現場の多忙化や、子どもの抱える問題の多様化が、大変深刻な問題となっています。

 

上記のような怒涛の無償化策には大きな予算を伴います。

一方で、その予算があれば、いや、その半分でもあれば、保育や教育の「質の向上」を相当程度図れるはずです。

 

「保育の無償化」と言えば支持を得やすいですが、「保育士の加配」と言ってもあまりピンときません。「保育士の処遇改善」も、当事者以外の反応は今一つでしょう。

 

「教育の無償化」と言えば支持を得やすいですが、「SSW・SCの増員」と言ってもあまりピンときません。「少人数学級」も、当事者以外の反応は今一つでしょう。

 

「給食の無償化」と言えば支持を得やすいですが、「給食調理場のエアコン設置」と言ってもあまりピンときません(調理員の熱中症が多発しています)。「低アレルゲン給食」も、当事者以外の反応は今一つでしょう。

 

保育や教育の無償化はぜひやってもらいたいのですが、それぞれの「質」の部分にも十分に目をやってもらいたいですし、なかなか当事者以外の有権者・市民の目が向きにくいからこそ、政治家が目を向ける必要があると私は思います。上記の「ピンとこない」例は、いずれも私自身、堺市議会議員として取り組んでいるものです。

 

今回打ち出された「維新版教育無償化モデル8つの無償化」そのものを否定するつもりはまったくなく、繰り返しますが、私は歓迎しています。

ただし、「これだけ」だとすると、現場に様々な歪を生み、そのしわ寄せが子どもにくるかもしれません。そして、それだけ膨大な予算を投じるならば、すでに顕在化している「質の問題」の改善のためにも、相応に投じてほしいと思うのです。

 

なのでぜひ、「保育や教育の質の向上につながる政策」が後追いで出てきてほしいものです。

 

なんせ、大阪市ですからね。その取り組みの影響は国政だけでなく、堺市を始めとする府内自治体にも及ぶものですから。堺市議会議員として、堺市の子育て世代として、期待しています。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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