NOWLOADING

まちなみ再生にビジョンなし?

先日の大綱質疑で、堺市の古い町並みが残る、旧市街地北部地区の「まちなみ再生事業」について取り上げ、同事業への期待を示すとともに、強い不満を表明しました。

私の生まれ育った場所もこのあたりで、重要文化財にも指定されている素晴らしい町家・山口家住宅や、鉄砲鍛冶屋敷などがあり、各地から観光客も来られています(山口家住宅で、年間約2万人)。
一方で、新しい家も増えたり、古い家屋も看板建築といわれるトタン張りのものになっていたりで、まちなみ全体としての調和が失われています。
そこで重点路線5路線の家屋に、修景補助金を出して、町家の維持、再生を促進しようというのが「まちなみ再生事業」で、堺の魅力になりうるものと、私は大変期待しています。
じゃあ、何が不満なのか??
それは、「最終的なビジョンがないこと、示されていないこと」です。
具体的には、、、
①重点路線がすべて町家風になることを目指しているのか、あるいは、そうではなくて「一軒でも増えればヨシ」なのか、ハッキリしていない。
②建物以外のこと、道路の美装化や、無電柱化については決まっていない。特に無電柱化については、積極的ではない。
③無電柱化が、重点路線において「技術的、物理的に可能か否か」すら調査していない。
ということです。
美しい歴史的な町家が一軒ある。
あるいは複数ある。
それはそれで、素晴らしいことです。
しかし、隣の家屋が西洋風だったら?
路面がアスファルトだったら?
そばに電柱が立ち、電線が走っていたら?
その景観の価値は、一気に下がることでしょう。
{8155AB80-3C4A-435E-8CE2-CB9F3A095C08}

この写真は、堺市の山口家住宅です。

素晴らしい町家ですが、周辺の景観としては、ご覧の通り、大変もったいない状況です。
路面と路面標示、電線、電柱、マンション、、
この事業は、あくまでも家屋の所有者が決断し、例え補助金はあっても、一定の負担が発生するものです。
つまり、民間の協力がなくてはならないものなのです。
「最終的にこうなる、こうしたい」ということがわからない事業に、どれほどの方が協力してくださるでしょうか?
「この路線は『すべて』町家にしたい!道路の美装化も無電柱化もする!」と行政側が示し、そのためにしっかり努力をするならば、協力しようとする民間人・民間事業者も増えるでしょう。
「そんな景観になるならば、そこで町家カフェをしたい」「民宿をしたい」と考える人だって、出てくるかもしれません。
金沢の東茶屋町がいい例でしょう。
(観光地化されすぎてる感はありますが)
{1F337494-6B2B-44F1-8B23-D4EF090D5DA7}
「いやいや、ビジョンなんて示せない。なりゆきで一軒でも増えれば」なんて思っているならば、答弁にもあった「美しい歴史的景観」なんてものは望めないでしょうし、どこまで予算を投じるか、考え直すべきでしょう。
そもそも、この重点5路線は、手を広げすぎだと私は思っています。
約260軒の建築物があり、中にはドラッグストアもあります。
歴史的な町家は、うち70軒ほどですが、ここには看板建築も含むため、修景が望まれる建築物は、200軒をゆうに超えるでしょう。
年間数軒分の修景予算で、果たして何年かかるでしょうか。
また、そもそも、それだけの数の所有者が、自己負担をしてまで協力するでしょうか?
町家、町家風建築物がある程度増えても、今と同じ、虫食い状態であることには変わりありません。
ならば私はもっと範囲を絞り込み、予算を集中投下して、完璧な一路線を目指すべきだと思います。
「完璧な」とは、角から角まで歴史的な町家か、町家風建築物であること。道路が美装化され、無電柱化されていることです。
その場に立てば、タイムスリップしたような気持ちになれる区画を作る(再生させる)ことです。
そこで私は、以下の要望をしました。
1. 重点路線5路線の無電柱化の可否について、路線ごとに早急に調査すること
2. 可否によって、5路線の優先順位をつけること
3. 最優先路線は、完璧なものを目指し、それに応じた予算を投じること
もちろん、②の優先順位付けには、無電柱化の可否だけでなく、その路線の家屋の所有者が協力してくれる可能性がどの程度あるかも、重要な要素です。
私は、歴史と文化のまち堺を誇りに思っていますし、今なお残る歴史的建築物は、素晴らしい魅力の一つです。
それを最大限に引き出し、発信し、後世に継承ふるためにも、この「まちなみ再生事業」には期待し、厳しくもありたいと思っています。

堺市議会議員  ふちがみ猛志

意見・提案