二重行政のムダは本当にあるのか④成長戦略編
「二重行政のムダは本当にあるのか」の4回シリーズの最終回、「成長戦略」編です。
1.破綻事業編
2.公共施設編
3.あるにはあるけど編
4.成長戦略編
府と市がいがみ合って、成長の足を引っ張ってきた!
今は府と市が協調できているから、成長している!
制度上、府と市がいがみ合わないようにするのが都構想!
というのが、維新の主張です。
府と市がいがみ合わない、現在の知事と市長の協調体制を彼らは「バーチャル都構想」とも呼んでいます。
言いたいことが山ほどあります。
①そもそもバーチャル都構想で大阪は成長していない。
※画像は毎日新聞Webニュースより
府知事・大阪市長の双方が維新になってからの大阪府のGDPの伸び率は、2011~17で年0.6%です。全国平均が0.9%ですから、それを大きく下回っています。
「全国平均以下」ですからね。過疎地も含めての平均よりも、さらに下です。
2016~17年に限れば、全国平均の2.0%を上回る2.9%を記録していますが、その主要因はインバウンドの増加です。
ただ、そのインバウンドの増加の主要因が、維新の協調体制かと言えば、必ずしもそうではありません(多少の効果はあるのかもしれませんが)。
インバウンド増加の主要因と言えるのは、
・日本の円安誘導政策(安倍政権)
・関空のLCC誘致(民主党政権)
・中国人のビザ発給の要件緩和(民主党政権)
・中国の経済成長(中国)
と見て間違いありません。
ですから、「バーチャル都構想で成長している!」は間違いですし、ましてそれを制度化する「都構想で成長する!」は根拠のない言説です。
②府市がバラバラで国際的イベントも誘致できない?はずはない。
維新府政の時に万博やG20の誘致に成功していますから、「府市協調だからできた」「バラバラならできない」という印象が強まったのかもしれませんが・・
1970年の万博、1990年の花博、1995年のAPECも国際的イベントですし、その時も彼らの言うところの二重行政です。
2005年の愛地球博も、愛知・名古屋で二重行政ですよね。
二重行政でも、ちゃんと国際的なイベントを誘致できています。
二重どころか、関西広域連合(7府県4政令市(当時))でワールドマスターズゲームスの招致に成功しています。
「府市がバラバラで国際的イベントも誘致できない」とするのは、これもまた現実にそぐわない言説です。
③府市がバラバラでインフラ整備が止まる?はずはない。
この事例で紹介されるのが、「淀川左岸線」と「なにわ筋線」です。
うーん、これも府と市があるから進まなかったとは言い切れないですよね。
淀川左岸線は国との負担割合での協議に時間がかかったものですし、なにわ筋線はJR西日本と南海電鉄との協議です。
堺市の身近な事例で言えば、政令市になる際に、阪神高速大和川線の負担を請け負っています。これも府と政令市の間で、話し合いで決まったものです。
府市がバラバラならインフラ整備ができない、一体だからできる、とするには無理があります。
④むしろ一体になることの懸念
可能性として、知事がやりたいことについて、市長が「絶対にダメ」と考えた場合、その「やりたいこと」が、なかなか進みづらくなることもあるでしょう。
ただ、それって悪いことだと言い切れるのでしょうか。
私からすれば、その「やりたいこと」は、その程度のシロモノであって、どうしてもやりたいならば、市長にも納得してもらえる内容に修正が必要なんだと思うのです。その折り合いをつけるのが、政治家の仕事です。
松井市長は記者会見で、「(大阪市廃止後)カジノ立地自治体となる淀川区の区長がカジノに反対した場合、どうなるのか?」と問われ、「権限が大阪府知事にあるので、事業が停止したり、遅れたりしない」と答えました。
「地元の声は聴かない」と表明したに等しく、民主主義の根幹に関わるものだと私は思います。
もちろん、どんな事業でもすべての人が賛成するのはありえませんが、「地元自治体が反対しても押し切る」という姿勢は看過できませんし、そのような地元の合意を得られないような事業(成長戦略)では、成功するものも成功しえないと思うのです。
かつてのバブルのムダのように、判断を見誤るリスクが高まると思います。
いずれにしても、
府と市があるから成長しない。市を廃止して一本化すると成長する。というのは、非常に短絡的です(むしろ、海外の成長する諸都市を見ると、市が府(広域自治体)から独立した、特別自治市が多いんですがね)。
このような制度論に終始することから一日も早く抜け出し、この間ないがしろになってきた、中小企業振興や、モノづくり支援に注力する方が、よほど成長に適うと私は思っています。
堺市議会議員ふちがみ猛志