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10億円の経済支援は有効だったか

昨年秋、コロナで疲弊する「市内商業者の支援」を目的に、約10億円の予算を投じ「キャッシュレス決済20%ポイント還元キャンペーン」が実施されました。

予算額から見ても、これがまさに、永藤市長のコロナ対策の目玉政策でした。

 

おそらく堺市で初めてキャッシュレス決済を利用した施策となったのですが、フタを開けると少なからぬ問題がありました。

主だったものは、以下のようなものです。

 

①高齢者の利用が少なかったこと。

これは当初から予想されたことでした。

堺市では全人口のうち70歳以上の占める割合が22.5%になりますが、この「キャッシュレス決済20%ポイント還元キャンペーン」の利用者においては、全体のわずか3.5%に留まったようです(利用者アンケートより)。高齢者にこの施策は受け入れられなかったと捉えるべきでしょう。

当局は、高齢者向けの使い方セミナーを実施したりしたそうですが、堺市内の高齢者は20万人を超えますから、どこまで効果があったかは疑問です。

 

②利用先の多くを大手ドラッグストアチェーンやコンビニが占めたこと。

今回の施策で利用された決済サービスは、楽天ペイと、ペイペイで、その双方の報告からも、最も多く利用された店舗はドラッグストアだったと明らかになっています。はたしてこれで本当に「市内商業者の支援」になったと言えるのでしょうか。

市内商業者の支援、そして税としてまた返ってくることを考えて、「市内に本社のある事業者」「小規模事業者」に絞ることが必要だったと思います。このことは、当局も認めています。

また、ドラッグストアで買われたものと言えば、おそらくほとんどが日用品でしょう。買う側の生活者支援にはなったでしょうが、消費を先食いしただけで、景気刺激にはならなかったと推察されます。

 

③市外の利用者が少なからず含まていること

利用者アンケートによれば、利用者の1割近くが市外の方だったようです。

市外の方が、堺市民の税金を原資にして、約20%のポイント還元を受けて、買い物する・・。やはり首を傾げざるを得ません。

キャッシュレス決済で堺市民に限定することは、システム上できないようですが、例えばお店で利用する際に身分証を見せるとか、何らかの形でフィルターをかけられなかったものでしょうか。今後、事業者と共に検討してもらいたい点です。

 

 

また、「キャッシュレス」に起因するものではありませんが、以下のような問題もありました。

 

④予算執行率が6割未満だったこと

10億円の予算のうち、消化したのは6割弱。実に4億円が余ってしまいましたこの数字を見るだけでも、市民ニーズに必ずしも合致しなかった施策だったと言えるでしょう。

もちろん、この4億円が消えてなくなるわけではなく、また別の施策に使われるのですが、「余る」と分かってから、次の施策を考え、議会に提案し、審議し、採決され、ようやく使われることになります。この間約半年です。4億円が塩漬けされてしまいますから、もっとシビアに見積もりし、半年早く4億円を別のことに使えていたら…、色んなコロナ対策ができただろうとは思います。

 

⑤利用しない人の声が集まらないアンケート

今回のキャンペーンで堺市は「利用者向けアンケート」を取っていますが、どこで取ったかと言えば、「キャンペーンの内容を案内するホームページ」上で、です。堺市のホームページのトップ画面ではありません。

キャンペーンのページにまで入り込む人は、そもそもキャンペーンに関心があり、利用しようと思っている人が大半でしょうから、その場で取ったアンケートでは、否定的な回答が必然的に少なくなります

加えて、そのアンケートでも「キャンペーンを利用しなかった」と答えた人が少数いるのですが、そう答えると、アンケートの終盤の設問まで飛ばされてしまい、「なぜ利用しなかったのか」といったことは訊ねられないのです。

関心のない人、関心はあったのに利用しなかった人、こうした人の声こそ、よりよい政策作りには必要なのですが、そんな声は始めから入ってこない仕組みのアンケートだったのです。

これは、今回のキャッシュレスキャンペーンに限らず、役所が市民の声を聴く際にありがちな話です。この点については、委員会の場で指摘し、産業振興局長、文化観光局長(観光でも同様の事例があったので)から「否定的な声こそ重要」「アンケートの取り方を検討する」という旨の前向きな答えをもらいました。

 

 

個人的には、今後、ICT社会の進展に伴い、行政サービスにおいてキャッシュレス決済が利用されるケースは、確実に増えると思っています。否応なしに、です。

産業振興に限らず、観光や福祉、市民と行政の間でお金をやり取りするあらゆる場面で利用されることでしょう。

現金や、クーポン券のやり取りに比べ、給付スピードや間接経費の安さなど、大きなメリットもあります。

ただし、欠点もあるわけで、それが前述の①~③などに表れています。

 

ぜひ今後に反省を活かし、事業者と共に対策を講じ、部局をまたいでそれを共有してほしいと思います。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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