NOWLOADING

不登校の子に避難経路を

9月8日に開催された、決算審査特別委員会第二分科会で「フリースクール」について取り上げました。

フリースクールは不登校の子の学びの場ですが、多くの人にとってはあまり馴染みがないかもしれませんし、正直なところ、私もそうだったように思います。

取り上げるきっかけとなったのは、昨年から中区深井駅近くのフリースクール「志塾ラシーナ」さんに視察に行かせてもらったことでした。

また、自身が不登校を経験され、その後、不登校新聞の編集長として、数多くの不登校児童・生徒、その保護者に取材をされた石井志昂さんの著書『「学校に行きたくない」と子どもが言ったときに親ができること』という本に出会ったことも、大きなきっかけでした。

全国的に不登校の子が増えており、特に小学生の増加が顕著です。

※堺市内の不登校児童・生徒数の推移

「体調不良等の理由以外で年間30日以上の欠席」が不登校の基準なのですが、「だったら他人事ではないな…」と思う保護者も少なくないと思います。実は私もその一人です(汗)。

 

堺市は、不登校の子が学校復帰・社会的自立に向け、小規模で学習・体験活動、教育相談ができる場として「適応指導教室」を設置していますが、堺区と美原区の2か所だけです。

利用者数は、ご覧の通り区ごとに偏っています。

「人口あたり」に補正しても、この格差です。

中区の10万人あたりの利用者数は、堺区の1/5です。

中区は堺区よりも不登校の子が少ない、適応指導教室を利用したい子が少ない、、、なんてはずはなく、「利用したいのに近くにないので利用できない」子がいるということが、容易に想像できるわけです。

実際、小学生の利用の場合は、保護者が送迎せねばならず、利用する・しないの判断に、自宅からの距離が影響しているに違いありません。

 

では、適応指導教室を各区に設置すればいい!と言いたいところですが、もちろんそれには多くの予算、人員が必要ですから、簡単ではありません。

 

そこで民間の「フリースクール」です。

運営主体や規模こそ違えど、「フリースクール」は「適応指導教室」と同じ役割を持つものです(堺市教育委員会もそれを認めています)。また、文部科学省もフリースクールを不登校の子の支援の場として明確に位置付けています。

であれば、適応指導教室が足りていない、設置個所に偏りがあるということに対しては、フリースクールをうまく活用すればよいのです。

 

その上で、私が「問題だ」と堺市教育委員会に指摘したことが2つあります。

 

1つは、フリースクールへの登校を在籍校で出席扱いにするのかどうかが、在籍校(校長先生)によって判断が分かれるということです。

同じフリースクールに通いながら、「A校の生徒は出席扱いだけど、B校の生徒は出席にならない」「校長先生が替わったら、今年度から出席扱いに」という具合にです。不登校の子にとって、出席扱いになるかどうかは非常に大きな問題なので、その判断が割れてしまうのはよくありません。

もう1つの問題は、学校とフリースクールの連携があまりなされていないということ。もっと言えば、連携以前に、教育委員会は市内のフリースクールの数すら把握していないということです。数すらわからないフリースクールについて、保護者や児童・生徒に情報提供できるはずもありません。(実際には、現場の先生方の個々の情報収集、努力によってカバーされている面もあります)

 

こうした私の指摘に対して教育委員会は、「不登校児童・生徒に対する多様で適切な教育機会の確保を示した、教育機会確保法を踏まえ、フリースクール等の民間施設との連携について、再度管理職に認識してもらう」と答弁しました。

 

私たち保護者は「子どもが不登校になったらどうしよう」「不登校にだけはならないように」と思いがちです。

 

例えば、①学校が楽しくない → ②学校が嫌い → ③学校が嫌で嫌で仕方ない → ④学校に行くのが苦痛

 

という風に、子どもの精神状態が悪化したとして、それがさらに進行(悪化)した状態が「⑤不登校」なんだと思ってしまうものです。だから、多くの保護者も教師も、③や④の状態でも、「それより悪化させまい」「不登校にだけは」と頑張って学校に行かせよう、来させようとしがちです。

かく言う私も、息子に対してそのきらいがありました。

 

しかし、先ほど紹介した本の著者の石井さんは、一番大変なのが「つらいのに学校に行っているとき」だとおっしゃっています。つまり④の状態だと言うのです。そして、不登校を「一番苦しい時期を脱したサイン」ここから「心の回復が始まる」ともおっしゃっています。さらには、学校に行くのがつらくなっている子どもにフリースクールについて教えないのは、「避難経路を教えないことと一緒」とも。

つらい時期が長引く前に、早めに避難し、早めに心の回復を図れば、早めにまた学校に戻れるというのです。

 

コロナ禍で大人も子どももストレスが増大し、不登校が増えていると言われています。今改めて、この「子どもの避難経路」について目を向け、堺市全体に広く整備し、それを必要とする子どもや保護者に伝えていきたいと思います。

 

余談ですが…、そんなことを議会で訴えた翌日の朝、息子が「学校に行きたくない」と言い出し、、、さすがに「頑張って行きなさい」とは言えず、家での心の回復を認めた父親でした。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

 

 

意見・提案