永藤市政をどう評価するか
こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。
永藤市長が就任して7年目です。年が明けて2月の議会には令和8年度予算案が提案されます。
来年度が2期8年の最終年度ですから、永藤市長が自身の予算を、自身で執行できる最後の予算になるかもしれません。もちろん、3期目に挑戦され、当選されれば「最後」にはなりませんが、少なくとも、ご本人のこの2期8年の集大成の予算と言える大事なものになるのは、間違いありません。
振り返って、この2期8年のうちの7年の市政運営はどうだったでしょうか。
それを問う上で、この12月の議会で興味深いやり取りがありました。
思わぬところから出た批判の声
「変化していない、あるいは悪化している数値の方が多い」
「経営分析とか、ファイナンスという視点が決定的に欠けている」
「これまでと同じアプローチをする限り、5年後(中略)、各種KPI、KGIが達成できませんでした(となる)」
KPI、KGIとは、簡単に言えば数値目標のことです。
悪くなっている!このままじゃだめだ!という市長への厳しい批判の声。
その声の主は私ではありません。なんと、永藤市長の身内とも言える、維新の会の議員からの批判でした。
さすがに市長も、その発言に対し「〇〇議員(個人)の考えをお聞きした」と返したものの、

その議員は「(個人の考えではなく)会派の考え」だと突き返し、さらに、
「(堺に)変化が感じられないという声を非常に(よく)聞く」
「目標が達成できていないのは、そもそも目標が間違っているか、達成するアプローチが間違っているのか、どちらか」
と矢継ぎ早に市長批判を展開します。
「変化が感じられない」というのは、私も市民からよく聞きますし、当然、維新の議員のもとにも届いているはずですが、かと言って、それをハッキリと公式の場で言ってしまうとは…
これまで市長をかばい続けてきた維新ですが、よほど内部で市長への不満が溜まっているのでしょう。
打ち消す声に説得力は乏しく
議場と市役所内がざわついたやり取りでしたが、やはり維新内でも「まずい」ということになったのでしょう。
維新の会の堺市議会議員団の団長が、それから1週間経った総務財政委員会で、そのやり取りについて、

「あんな風になってちょっと僕もびっくりした」
「永藤市長を会派として高く評価」
「今後さらにブラッシュアップしていくことを期待」
と必死に打ち消そうとします。
が、その後に続く具体的な永藤市長の功績(?)の説明を聞いていますと、それは説得力に欠くものでした。
「財政を立て直し」…お金を溜め込んだことは、立て直しでも何でもありません。(後述します)
「体育館のエアコン設置」…国の財源を活用したものであり、その活用も遅すぎたくらいです。
「気球事業を実現」…前市長時代から入念な準備があったものです。
「ICT教育環境の整備」…国費によって全国のほとんどの自治体でやっているものです。『運用はまだまだ』と本人が補足している通り、そこが肝のはずですから、何も自慢できるものではありません。
自慢できるのは、せいぜい中学校給食の導入くらいでしょう。ただそれだけでは、2期7年間の成果として寂しいものだと、言う他ありません。
ことごとく停滞するまちづくり事業
「変化が感じられない」という市民の批判の声も当然です。
まちづくり事業がことごとく停滞しているからです。
たとえば、前の竹山市長は就任直後に、前任の木原市長による堺東の再開発計画を白紙に戻しました。このことは前述の維新の会の団長もその場で批判しています。しかし、その8年後には、代替の事業となったフェニーチェ堺がこけら落としを迎えています。
堺東の再開発計画の白紙化や、フェニーチェ堺の建設のそれぞれには意見があるでしょうが、白紙化から始めるというマイナスからのスタートでも、8年でモノが完成しているのです。
一方で永藤市長はどうでしょう。
就任直後から口にしていた中央図書館の再整備や、堺ミュージアム(博物館の再整備)は7年目の今も、モノどころか、計画すらまともにできていません。
堺区のど真ん中の堺消防署の跡地活用事業も、移転が決定した令和元年から移転した令和6年までの5年間は一切話が進まず、実際に移転してからようやく検討が進み出しました。それから1年以上経った今も、今後がどうなるかはまだ決まっていません。
金岡公園の整備計画も、プールの老朽化が進んでいたのに、完全閉鎖してから、えっちらほっちらと動き出す始末です。
停滞の原因は?
一言で言えば「お金をケチるから」です。
永藤市長は就任1年足らずの令和2年2月に財政危機宣言を発出し、緊縮路線に大きく舵を切りました。
令和元年度決算から、最新の令和6年度決算を比較しますと、その間に貯金(義務的な積み立てを除く基金)は261億円増加し、借金(臨時財政対策債を除く)は230億円減少しています。

※借金の推移(オレンジ色)。R1(表外)は2720億円、R6(一番右)が2490億円。
合わせると約500億円。5年間ですから、1年あたり約100億円です。
これだけのお金が市中にまわらなくなるのですから、まちづくりが停滞するのも当然です。
また、これだけの緊縮路線ですから、職員がお金を使うことに尻込みするのも無理のないことです。
財政危機だったから仕方がない。
貯金が増えて、借金が減るのはいいこと。
そう思われる方もいるでしょう。
しかし、仮に今より堺市の貯金が261億円少なく、借金が230億円多かったとしても、、、つまり、実際よりも約500億円多く使っていたとしても、堺市の財政が破綻するわけではなく、おおよそ財政運営には支障をきたすものではありません。
一方で、その約500億円があれば、先述の中央図書館の再整備も、堺ミュージアムの建設も、堺消防署跡地の活用も、金岡公園の再整備も、とっくに済んでいたことでしょう。
そして、市民には「新しく使い勝手のいい公共文化施設」という財産が残されていたことでしょう。
そもそもの市長の誤解
このブログを書くにあたって、永藤市長の過去の発言を見直していると、面白い対談記事に出くわしました。
永藤市長が市長選に初挑戦した際(2017年9月、結果は落選)に、吉村洋文大阪市長(当時)と対談した記事です。
その中で市長当選前の永藤さんはこう言っています。
「今までどんどん税金でハコモノを作って、それをまた市債で発行すんですよね。」
「借金の問題はやはり将来へのツケですから、これは将来世代に負担を残さないためにも借金を減らしていかないといけない。」

一見、当たり前のことのように感じるかもしれませんが、この認識は全くの間違いです。
ハコモノ(公共施設)を建てる際には、原則として市債を発行する、つまり借金しないといけないのです。
公共施設は長年にわたって使うものです。現金一括払いは、今いる納税者が全額負担することになります。全額負担してすぐに亡くなったり、引っ越された方は払い損ですし、あとから生まれたり、引っ越して来られた方はタダ乗りです。
だから、世代間の公平性を確保するため、「あえて借金をして作る」んです。
ですから、公共施設等の建設に要する借金は、決して「将来へのツケ」ではなく、必ずしも「減らしていかないといけない」ものではないのです。
むしろ「将来世代の資産形成、公共サービスの拡充」とも言えます。
バランスよく借金をして、適切に資産や公共サービスを拡充するのが正しいのです。
家庭にたとえるなら、親が借金で旅行して、その返済を子どもに払わせたら、その借金はツケでしょう(国の借金はそれに近い)。一方で、借金で家を建て、将来そこに子どもが住み、その時点のローンの残りを子どもが払うというのであれば、決してツケではないでしょう。これと同じです。
市の借金をこのように取られている方が市長になったのですから、まちづくりが停滞するのも当然のことです。
奇しくもこの時の対談のテーマが「停滞か、成長か」でした。

ここ数年の堺の停滞の根本原因は、永藤市長のこの借金や貯金に対するこの認識に起因していると、私は捉えています。
堺市議会議員ふちがみ猛志

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