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児童自立支援施設を弄ばないで

堺で児童自立支援施設の設置に向け、計画が進行しています。

 

先日、堺市長選の街頭演説で、維新の馬場幹事長がこの計画について触れ、私はその内容に大変強い憤りを覚えました。

 

実際の映像(1413秒~)

https://www.youtube.com/watch?v=_XSHrJFHv8c&feature=youtu.be

 

【発言の要旨】

 

特にポイントとなるのは、以下の5点です。

・児童自立支援施設は、ひねくれた子どもを更生させる施設

・児童自立支援施設は、不要・不急のハコモノ

2万坪のうち1万坪は利用予定なし(なのに購入)

・建物が35億円(で高すぎる)

・市民のためになる事業ではない(と介される発言)

 

【ひねくれた子どもを更生させる施設?】

児童自立支援施設に入所する子どもは、非行だけが原因ではありません。虐待や厳しい家庭環境を理由に、生活習慣が身についていない子どもも含まれます。また、非行に関しても、「本人がひねくれている」という短絡的なものではなく、ほとんどの場合、その原因が、家庭環境や交友関係、社会の側にもあるのです。

入所児童を一括りに「ひねくれた子ども」とするのは、入所児童に関する誤解と偏見を与え、彼らの社会での自立を阻害するものです。

 

 

【不要・不急のハコモノ?】

そもそもこの児童自立支援施設は、「政令指定都市に設置義務が課せられているもの」なのです(多くの政令市がその義務を果たせていませんが)。

堺市では、大阪府の橋下知事(当時)が設置を要求し、議会では維新の米田敏文議員が要望し、松井知事(当時)も必要だと認め、今に至っています。この社会に、そして子どもたちとその家庭に「必要な施設」であります。また、今現在も、その設置を待つ子どもたちと、彼らを支える多くの関係者がいらっしゃいます。計画からずいぶんと時間がかかってしまっている中、「建設・運用が急がれる施設」なのです。決して「不急」ではありません。

 

 

【利用予定のない土地まで購入?】

そもそも、この建設予定地2万坪の購入の議案に、大阪維新の会堺市議団は「賛成」しているのです。賛成しておきながら批判するとは、まったく訳がわかりません。

そして、「利用予定のない1万坪」に対する見解も誤っています。

「利用予定がない」のではなく、山間部の法面で、「利用できない」のです。そして、それは切り離して購入できるものではなく、その点も含めて、維新は賛成しているのです。

児童自立支援施設は、土地の広さ(1万坪ほどが必要)に加え、子どもの心を落ち着かせるため、自然に近いことや、周辺から影響を受けにくいこと(例えば、繁華街のネオンが見える、喧騒が聞こえやすいといったことがない場所)などの配慮が必要です。

そのため、予定地は山間部を中心に探すことになります。

山間部で一万坪もの「利用可能な土地」を買えば、必然的に利用の難しい斜面なども含まれるに決まっています。そこだけを切り離して手元に残し、利用しやすい部分だけを売る地主が、どこにいるでしょうか。実際に購入した土地は、公道への出入口が狭いので、分割購入はなおのこと不可能でした。

もちろん、利用できない部分は、できないなりの、公正な評価額で購入しているのです。

繰り返しますが、こうしたすべての事情を考慮した上で、維新は賛成したはずです。

 

【建物35億円は高すぎるか?】

まず、「建物35億円」は誤りです。内訳は公表されていないものの、2万坪の山林ですから、相当な造成費用(1億や2億どころではない)が含まれています。議会は(山林の)土地購入には賛成しておりますので、維新も含む多くの議員が、造成費用も念頭にあるはずです。設計費用も3億円ほど含まれています(これは公表されています)。

 

おそらく建物自体は、20数億円ではないでしょうか。

この点については、まだ議会で諮られていませんので、賛否さまざまな意見があることでしょう。

 

児童自立支援施設とは、ハード面では、小規模な学校を一つ丸ごと作り、それに住居スペースや農地などを付随させたような施設です。

最近堺市で、新設(移設)した東陶器小学校の建設予算がざっと25億円ですから、20億円台であろう児童自立支援施設の建設予算が、決して高すぎるものでないことは明らかです。

 

これを「高すぎる」というのであれば、児童自立支援施設がどのようなものか、実際にその目で見たことがない、実感として知らないか、あるいは、知っていながら(詳しく知らない)聴衆を欺こうとしているか、そのどれかではないでしょうか。

 

 

【市民のためではない?】

維新の馬場幹事長は、児童自立支援施設などを列挙した上で、「そういうことにお金を使うから、『本当に皆さん方のためになるような公共事業』が後回しになっている」と指摘しています。つまり、児童自立支援施設は、「皆さん方(=市民)のためになる事業ではない」と言っているのと同じです。本当にそうでしょうか?

こうした社会的養護や、更生保護は、決して他人事ではなく、誰もがいつか当事者となるかもしれない社会のセーフティーネットです。そして、どのような子どもも社会の宝であり、その健全育成は社会全体、大人たちの責任であって、その結果は社会全体に還元されます。

私は、この発言の根底には、「ごく一部の人のための施設」との認識があるのだろうと思います。社会的弱者に関わる(と思える)ものを他人事のように軽視し、それと自分は関係ないと思い込む大衆を、誤った情報によって扇動するのは、政治家として、公党として、極めて危うい姿勢です。

 

 

【本当に対案はあるのか?】

私が、この発言を否定的にツイートしたところ、馬場議員ご本人が引用リツイートされ、その中で「吉村知事や松井代表とも協議して代替案を考えています!」と書かれています。

本当でしょうか?

私は、3年前の秋、維新の議員がこの施設に否定的な発言を繰り返すので、健康福祉委員会で委員間討議を呼びかけました。すると、当時の維新所属の健康福祉委員長は、「対案なんてないよ」と、討議を拒否されました。

この3年間で何かが変わったのかもしれませんが、すでに10年議論になっているテーマです。にわかに信じがたいものですが、早く披露してもらえることを期待しています。

また、堺市の重要な市政の課題ですから、永藤市長候補のお考えも聞いてみたいものです。

私は、対案があるとすれば、「計画の足を引っ張るのをやめて、超党派で協力し、一日も早い完成を目指す」だと思っています。

 

 

児童自立支援施設のように、市民に馴染みの薄い施設には、多くの誤解も生まれやすいものです。(児童相談所などもそうでしょう)

政治家が「〇十億円」「無駄」と言えば、施設がどのようなものか知らない市民は、そう信じてしまいがちです。

こういう施設だからこそ、我々は市民に正確な情報、その必要性を発信し、理解を求める役割を果たすべきだと思うのです。

まして、「少年院の類似施設」(維新西林府議のH28.11.23のフェイスブック)などと、間違った情報で不安を煽るのは、絶対にあってはならないと思います。

 

 

 

この児童自立支援施設は、橋下知事(当時)や、維新の米田議員の訴えも実って、ようやく建設まであとわずかのところまで来ているのです。

少なからぬ堺の子どもたちと、その家族が必要としています。

社会的養護や、更生保護に関わっている多くの方々が、その設置を熱望されています。

大阪府・大阪市の施設もいっぱいで、入れない子がたくさんいますから、堺市での設置は、大阪府全体のためにもなるんです。

 

どうか子どもたちの未来のため、政争の具にして弄ぶのをやめて、建設・設置に向けて協力していきませんか。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

意見・提案