どのみち堺市長選は同日選に
本日の堺市選挙管理委員会の会合が開かれ、6月8日に任期満了を迎える堺市長の選挙は「統一地方選(4月9日)とは別日程で、6月4日(日)に実施」ということが決定しました。
さて、このことについては色んな意見があろうかと思います。
ただ私たち議員は、その多くが統一地方選を戦う当事者です。
独立機関である選挙管理委員会の決定にとやかく言わず、粛々と受け入れるのが筋であろうと思います。
しかしそれでもおそらく、堺市長選は同日選になるでしょう。
永藤市長が2月下旬から3月上旬あたりに辞職し、維新は別の候補者を立てて、4月9日同日選に持ち込む。これが私の予想です。あくまで予想ですよ。
市長が辞職すれば、50日以内に市長選を行わなければなりません。
知事選や堺市議会議員選挙が行われる4月9日の3~50日前くらいに辞職すれば、選管も4月9日同日選にせざるを得ないでしょう。ただし、その選挙に辞職した現職市長が出馬すれば、勝利してももともとの任期までしか与えられません(つまり、5月末にまた選挙をすることになる)。
同日選にし、かつ4年間の任期とするためには、辞職し、かつ「候補者を変更」する必要があるのです。
維新は4年前にも、大阪府知事選、大阪市長選を統一地方選と同日選にするために、現職府知事、大阪市長がともに辞職し、それぞれを入れ替えて選挙するという奇策に出て、見事大勝しました。すでに前例がある作戦ですから、そのために永藤市長に退いてもらうくらい、組織として何のためらいもないでしょう。
民意を得た知事や市長の首を、次の選挙日程を動かすために簡単にすげ替えてしまうのは、個人的には民主主義の冒涜だと思いますが、、、まあ、彼らには屁のツッパリでしょうね。
正直なところ、市民の間での永藤市長の評判はよくないと、私は感じています。「維新だから」と評価する声はあれど、「(市長になって以降の)永藤氏個人」を評価する声を私は聞いたことがありません(ネット空間を除く)。
私は維新と立ち位置が違うから余計にそう聞こえるのかもしれませんが、それを差し引いても、その傾向はありそうです。維新の現職議員もそれを感じているのではないかと思いますし、彼らにも市長への不満があるやに漏れ聞こえてもおります。
ゆえに、今回の「別日程」という決定は、維新にとって、永藤市長を交代させる大義名分になってしまうのかもしれませんね。
加えて、彼らには「維新じゃない方」を批判する、格好のネタができました。
選管の今回の決定の前から、維新はこんな発信を続けてきました。
同日選になれば、1億円以上の経費が浮く。投票率も上がる。
同日選に肯定的なのは維新の会が推薦した選管委員のみで、残りの自民・公明・立憲が推薦した選管委員は慎重、ないし否定的。
同日選が絶対にいいのに、選挙に不利だからと、党利党略で別日程にしようとしている。
などという感じですね。
きっと、永藤市長の差し替えで同日選にした上で、
党利党略で1億円以上をムダにしようとした。
そのせいで永藤市長を失うことになった。
みたいな批判が飛び交うことでしょう。まさに格好のネタです。
まあ、これも私の予想ですがね。
ただ、このような予想は従前から多くの関係者がしていたことです。
私や、私の周りの多くの人が「どのみち同日選」と予想していましたし、少なくとも私は永藤市長のままの方が選挙は戦いやすいと思っていました(4年間の実績に乏しいからです)。さらに上記のような批判のネタを与えることになります。
だから、選管委員に対して「別日程で」とお願いする理由など、どこにもないのです。
また、かといって「同日で」などとお願いするわけもありません。
なぜならば、冒頭のコメントに戻りますが、選挙管理委員会は独立した機関であり、我々議員は利害が絡む当事者だからです。
選挙管理委員会がなぜ「別日程」と判断したのか。議事録などを見ていませんから、その理由はまだわかりません。
ただ、維新が議会に委員長を呼び出して同日選を求めたり、マスコミを呼んで同日選実施の要望書を出したり、表立ってプレッシャーをかけてきました。同日か別日程かの両論がある段階で、あのように大々的にキャンペーンを張られてしまうと、逆に選管は同日選を選択しづらかったのではないかと思います。外形的には「独立機関なのに、外圧に屈した」かのように見えるからです。これも私の推測に過ぎませんが、選管委員さんの心中は、果たしてどうだったのでしょうか。
長くなりましたが、最後に2つ。
同日選と別日程には、メリット、デメリットがあります。同日選のメリットは費用と投票率向上でしょう(ただし、2013年の市長単独選挙は、近年のどの統一地方選よりも投票率が高かったので、一概には言えませんが)。
同日選のデメリットとして、新市長誕生時に民意で否定された市長が長期間留任してしまうこと(※最後に解説します)、一部投票所の変更、投開票スタッフの負担増、期日前投票の複雑化(告示日が違う3つの選挙が混在)などが挙げられます。また、別日程の方が、市長選のみをじっくりと見つめ、落ち着いて選択することができます。
どちらに重きを置くかはそれぞれで、選管委員の多くは後者を重視したのでしょう。
もう1つは、「同日選なら維新が有利」とも決して言えないことです。維新さんはそう思っているように見えますが。
維新の首長選挙で脅威なのは、全国から集まる地方議員軍団によるローラー作戦です。この組織力が、同日選によって使えないのは大きいと思います。加えて、「投票率が上がれば維新に有利」と思っている人が多いようですが、少なくとも過去3回の堺市長選は、まったく逆の結果になっています。維新支持者の方がむしろ底堅く、固定票となっており、投票率が下がる方がその影響力は大きくなると私は思っています。
以上が私の予想、および見立てです。
あれこれ申しましたが、私は粛々とこの結果を受け入れるのみですし、仮に私の予想通りの展開になっても、それをも粛々と受け入れ、設定された選挙を必死に戦うのみです。
(※)同日選のデメリットとして「新市長誕生時に民意で否定された市長が長期間留任してしまうこと」を挙げましたが、「どういうこと?」とのお訊ねがありましたので、解説します。(追記)
現市長の任期切れは6月8日です。これは同日選でも、別日程の選挙でも変わりません。選管が今回決定した「別日程選挙」でしたら、6月4日実施ですから、もし新市長誕生の際には、その5日後から市政を担うことになります。ところが、同日選ですと4月9日実施ですから、新市長誕生が決定しても、実に2か月もの間、現市長が市政を担い続けることになります。「新市長誕生」という選挙結果(民意)は、「現市長にNo」の民意でもあります。なのに2か月もの間、民意が否定した市長が留任し続けることになるのです。「〇〇という現市長の政策をやめさせる」という新市長の公約があり、それが支持されたのだとしても、その政策は2か月も続くのです(という可能性が高い)。2か月の間に、現市長が専決処分で、新市長が望まない政策を次々と執行してしまうかもしれません。
職員も混乱するはずです。民意で否定された市長の決裁を受けたり、判断を仰いだり、相談したりはしづらいし、簡単にできるわけもありませんから、おそらく重要事案は先送りになり、市政は2か月間停滞することでしょう。選挙結果が速やかに反映されるべきでなのです。逆の言い方をすれば、「反映できるタイミング(=任期切れ)の直前に選挙をする方がいい」ということです。この観点においては、です。
念のため申し上げますが、私たち議員の場合は、3週間ほどのギャップがあります。ただし、議員には予算執行、事務執行の権利はありませんし、4月9日(選挙)から4月30日(任期切れ)までに、議会定例会がありませんから、市長と違って問題にはなりにくいと思います。
以上、これはあくまでも同日選のデメリットの一つです。他にもデメリットもあり、一方で大きなメリットもありますから、それを総合判断するしかないでしょう。(そして、選管がそのように総合判断した結果として、粛々と受け止めます)
堺市議会議員ふちがみ猛志