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新教育長と横を向いた教育委員会

ちょっと刺激的なタイトルになってしまいましたが、別に教育委員会が教育長に背いているという話ではありません。

 

この10月から、文部科学省の職員であった粟井明彦氏が新しく教育長に就任しました。

そして11月20日の本会議、その粟井新教育長の就任の挨拶がありました。原稿を読むのではなく、自分の言葉で語ろうとする様子には、素直に好感を持ちました。

 

さてその中で、私が気になった言葉がありました。それは以下のようなものです。

 

※※※※※

子どもたちの学びというものが前を向いていけるように支えていくのが先生方でありますが、先生方はまだ今のところ、横と後ろを向いている状況にございます。横というのは、隣の学校や、隣の自治体などの取組を横目で見つつ、後ろというのは、過去の取組や経験に基づく蓄積されたものでございます。横と後ろを向いているばかりでは、なかなか前を向くことはできません

※※※※※

 

なるほどその通りだ、と私は思うのですが、はたして教育委員会にそれを言って説得力があるでしょうか。

 

堺市基本計画2025において教育委員会は、取り組みの第一の成果指標として、こんなものを掲げています。

【指標名】学力調査の堺市の平均値(全国を100とした場合)

【現状値】小学6年 100.5、 中学2年 95.8

【目標値】小学6年 103.0、 中学2年 100.0

というものです。

皆さん、どう思われますか?

 

全国を100とした場合の数値ですから、つまりは「他の自治体との比較」です。

これは、まさに新教育長の挨拶で言うところの「横を向いている状況」ではないでしょうか。

 

ご丁寧に堺市基本計画の中では、このように他の政令市の数値のグラフまで示されています。(横を気にする堺市教育委員会!)

私は学力調査(全国学力テスト)そのものを、完全に否定しようとは思いません。

子どもにとって学力は(一定程度)大事なものですし、学力テストの結果はそれを示す1つの指標と言えるでしょう(あくまで「1つの」ですが)

だから、学力テストの結果が伸びるに越したことはないと思います。

 

ただ、教育委員会や学校が大事にすべきは、生徒や児童1人ひとりが、

去年の自分より、今年の自分は伸びた。

今の自分より、明日の自分を延ばしたい。

ということであって、隣の学校や、隣の自治体と比べてどうなのか、ということではないと思うのです。

 

いくら堺市の学力調査の結果が、去年の堺市よりよくなっても、他の自治体がもっと伸びていれば、上記数値は下がってしまい、その成果は否定されることになります。

逆に、堺市が去年の堺市より悪くなっていても、全国平均がもっと悪くなれば、上記数値は上がり、その成果は肯定されます。

 

教育委員会がこのような「他市との比較」という「横を向いた目標」を掲げていては、当然各学校は「隣の学校との比較」という横を向いた状態になるでしょうし、各先生方は隣のクラス、隣の先生との比較が気になることでしょう。

 

教育委員会が横を向いているのに、先生方に「横を向くな」と言うのには無理があります。

 

12月5日の大綱質疑で、私はこれらの指摘をし、それに対して教育長は、「横を向いた目標」だと素直に認めました

 

また、彼は挨拶の中でこうも言いました。

「学力中心から徐々にEQ(感情指数)というものなども重視されるようになってまいりました」と。

 

なのにいまだに教育委員会は学力の、しかもその一部に過ぎないテスト結果を、さらには横を向いて他市との比較を、組織の目標の第一に掲げているのです。

教育長は私との質疑の最後に、「学力向上に偏った情報発信にならないよう、注意はしなければならないと考えている」とも述べました。

 

現状の非を認めるかのような、誠実な答弁でした。

 

繰り返しますが、私は「学力を伸ばす」ということを否定してはいるわけではありません。

ただ、学校の第一の目標はそうではなく、ましてや「テストの点を伸ばすこと」「平均値で他市に負けないこと」などではないということです。

 

第一の目標は、子どもの豊かな成長であり、探求心を育むことや、学びを楽しいと思えることではないでしょうか。学力やテストの結果というものは、その探求心や学びを楽しむことの先に、『自ずと付いてくること』だと思うのです。

 

「学力向上に偏らないように」「先生方が横を向かなくていいように」という新教育長の思いが、各学校に、そして現場の先生方に広く伝わることを願っています。

 

いいやり取りができた、新教育長との初めての質疑でした。

 

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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