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アスマイルは誰のための予算なのか

大阪府が運用する、「アスマイル」という健康増進アプリがあります。

スマートホンにダウンロードすると、様々な健康関連の情報が入手できるほか、歩数や、健康イベントへの参加状況に応じてポイントが付与されるというものです。

とりわけ高齢者の健康習慣の定着に資するものとして、堺市もこのアプリの登録者・利用者の増加に取り組もうとしています。

 

そこで堺市は来年度、738万円の予算を使って、このアスマイルに登録した堺市民に、「堺市独自のポイント」を加算するそうです。すでに大阪府がポイントを付けているのに、です。

独自ポイント、つまり独自のインセンティブをつけることで、一層登録が推進されると見ているようです。

 

さて、このアプリがどれほど効果的なものなのかは、この時点で私もよくわかりませんので、「利用者増に取り組んでいること」自体は、いったんヨシとします。

また、この際、そのために予算を投じて堺市で独自のインセンティブをつけることも、いったんヨシとします。

 

問題はここからです。

 

738万円の内訳を確認すると、、、、

 

ポイント付与の原資…275万円

付与のためのシステム改修費用…77万円

同維持費用…386万円

 

というのです。

 

なんと、738万円のうち、ポイント付与、つまり最終的に市民に還元される額が4割にも満たない275万円。一方でそのための間接経費(業者の取り分)が全体の6割以上の463万円にもなるというのです。

 

※もっと正確に言えば、275万円のうちポイントになる額(市民に還元される額)は250万円であって、25万円は業者に支払う際の消費税です。(還元額は全体の1/3ほどということになります・・。)

 

なんと非効率な予算の使い方でしょうか?

誰のための予算なのでしょうか?

まさか、運営事業者(NTTデータ)のため???と思いたくなる配分です。

 

4000円のお金を振り込むのに、銀行が6000円の手数料を取ったらどう思いますか??

 

私はこの予算配分を聞いて、こう提案しました。

 

役所の窓口で、ダウンロードしてくれた人に直接QUOカードでも渡したらどうだ?

と。

これなら間接経費はほぼゼロで、予算全額をインセンティブ(市民への還元)に使えます

このことを、国民健康保険や、高齢者福祉関連の窓口でやるのです。「アスマイル登録者に500円QUOカード進呈」などと打ち出して。そして、窓口にダウンロード用のQRコードを置いて。窓口職員が一言声掛けをしてもいいでしょう。

 

何なら、その場でダウンロードを手伝ってあげればいいのです。

 

このアスマイルの取組を担当している「長寿支援課」は、高齢者のデジタルディバイド(情報格差)解消にも取り組んでいます。要は、高齢者にスマホなどを使えるようになってもらおうという取り組みです。

窓口で手伝ってあげれば、デジタルディバイド解消にも繋がります

そもそも、「自分でダウンロードすれば〇〇ポイント付与」なんて言われても、スマホを使いこなせない人にはどうしようもないですからね。

 

窓口で対応するメリットは他にもあります。

 

「アスマイルを知らない人」「関心のない人」にもアプローチできることです。ポイント付与を広報さかいで発信しても、関心のない人の目には止まりにくいものです。しかし、窓口での広報であれば、自然と目を引くことでしょう。

 

また、同じ額のインセンティブでも、より強い動機付けになるように思います。

「500ポイント付与」よりも、「その場で500円のQUOカード」の方が、「じゃあ、その場で」ってなりませんか?いつでもできると思うと、案外、「またそのうちに」と後回しになるものです。

 

一方、この提案の最大のデメリットは、窓口が混雑してしまう可能性があることです。

もし、そうなった場合は、窓口を増強せざるを得なくなるかもしれません。そして、それは人件費の増大を意味し、結果的に私が問題視した「予算に占める間接経費の増加」に繋がります。

しかし、仮にそうなったとしても、例えば「コロナ禍で収入が落ち込んだ学生」を雇うとか、そこで別の政策目的を達成することも可能です。NTTデータという巨大企業に丸投げするものとは違います。

 

いずれにしても、このアスマイルの738万円の予算は、「誰のための予算なのか?」と思わざるを得ません。

 

高齢者の健康のため?企業の儲けのため?

 

何かおかしいと思った時には、その政策目的に立ち返る。

加えて、他の目的にアプローチできないか考えてみる。(上記の例では、デジタルディバイド解消や、学生支援)

 

政策立案する職員も、それをチェックする私たちも、そうあらねばと思います。

 

【追記】

…というアスマイルですが、このブログを下書きしたところで、予算審査の分科会の質疑が行われ、3人の議員がこれを取り上げていました。

まあ、当局の答弁はボロボロでしたねぇ。大阪府がすでに実施し、堺市民が15000人ほど利用している事業なのに、その効果検証もなされておらず・・・。このアプリで健康が増進される根拠も、堺市が予算と投じることで利用者が増える根拠も、まったく薄弱で、「よくもまあ、予算計上したなぁ」と思わざるを得ませんでした。公明党の議員さんが、この予算を「しょうもないこと」と喝破し、これまで堺市が汗をかいて積み上げてきた、おでかけ応援バスや、コッカラ体操(認知症予防の体操)などの健康増進(に資する)施策を大事にするよう求めたことが、大変印象的でした。

 

【3/11追記】

業者にこの料金を払うことで、「堺市はアプリで集積したデータをもらえる。それを健康増進施策に活用できる。」というところも重要なんだそうです。しかし、担当課に「どんなデータがもらえるの?」と訊いても、昨日の時点では「わからない、おそらく歩数とかじゃないかと・・。(すでに運用している)大阪府に訊いてみる。」とのことでした。また、アプリで集めた、いわゆる「生データ」なのか、そこから業者が分析を加えたものなのか、それも「わからない」そうです。これでよく予算要求したものだと、少々呆れました。

また、すでに運用している大阪府から情報をもらえないのかという議論が、昨日の委員会で交わされました。

当然、個人情報に繋がる「生データ」はもらえないでしょうが、「大阪府なりに分析した情報」は一定程度もらえるはずです。(この制度を推している)維新の議員は、「もらえない、だから堺市が追加加入しないといけない。」という主張していましたが、だったら大阪府議会(公開の場)で「アプリ運用でどのような結果が得られているか?」と問われたら、大阪府の理事者はどう答えるんでしょうかね?まさか「秘密」と言うんでしょうか。

少なくとも「大阪府なりに分析した情報」は開示されなければなりませんし、府内の自治体として、そのレベルは共有されるべきです。この点も現時点では「わからない」そうです。

今でも得られる情報と、堺市が追加加入した時に得られる情報。その双方がわからない状態です。この二つの『差』こそが、この予算を投じるメリットなんですから、もはや、この予算を評価しようもありません。

この予算を削減を求めた公明党の主張は、至極当然だと思います。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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