ジェンダー平等は共産党の独自の主張なのか
去る9月1日の本会議で、維新の会の水ノ上議員が、『維新の会を代表して』大綱質疑を行いました。
そこでなされた「ジェンダー平等」に関する主張は、正直なところ、耳を疑うものでした。
一部、SNS等でも話題になっているのでご存じの方もいると思いますが、簡単に主張を纏めますと、
・ジェンダー平等は、共産主義的な発想
・ジェンダー平等を政治的に実現しようとしたら、共産主義国家になりかねない
・政治によって男女の意識を変えようとしてはいけない
・ジェンダー平等と言って喜ぶのは共産党
などなどです。
同氏が、ジェンダー平等と、共産党を忌み嫌っているのはよくわかりましたが、、、
そもそも『ジェンダー』とは、(生物的ではなく)社会的・文化的に形成された性別のことで、「男はこうあるべき」「女ならば●●」というようなものです。そうしたジェンダーによる差別や偏見をなくし、個人としての尊厳が重んじられ、個性と能力に発揮できる社会・状態が『ジェンダー平等』です。
『ジェンダー平等』は、国連が提唱するSDGsの17の目標の1つであり、堺市も『さかい男女共同参画プラン』の中で、その実現を目指しています(そのことについて、同氏は批判している)。
個人個人でこれを忌み嫌うのは自由なのですが、国際社会、とりわけ民主主義国家においては、「民主主義」や「自由」「平和」と同じように、「ジェンダー平等」は疑う余地のない価値となっています。
ですから、わが国においても、共産党だけでなく、公明党、立憲民主党、国民民主党など、各党が「ジェンダー平等」を掲げています。共産党の専売特許ではありません。
※公明党HPより
※立憲民主党HPより
※国民民主党HPより
そして、このジェンダー平等を掲げるのは、水ノ上議員が所属する維新の会も同じです。本年8月に公表された「政策提言 維新八策2021」にもしっかりと記載があります。
※「ジェンダー・イクオリティ」という言葉を使っていますが、「イクオリティ=平等」です。赤線は渕上の追記。
多くの政党がこぞって「ジェンダー平等」を掲げている状況で、「共産主義だ!」と批判するのは全くもって理解不能で、まずはご自身の党内での調整をお願いしたいところです。
党内調整・・・。そうです。
私がこのブログで一番書きたかったのは、同氏の個人的な考えがどうかではなく、党としての考えがどうなのかということです。
同氏がどのような考えであれ、それは個人として自由であり、それを議会で開陳することも議員として自由です。
しかし、議会は議会でも、「大綱質疑」の場は、「会派(維新の会)を代表して」行うものです。少なくともこの大綱質疑を聴く限りは、「維新の会はジェンダー平等に反対」と捉えるのが自然です。
維新の会として、本当にそれでいいのでしょうか・・?
これもまた、各党の自由ではあるのですが、先述した通り、維新の会は「ジエンダー・イクオリティ(平等)」を政策に掲げています。国政選挙を前に、「本当はどっちなの?」と、一有権者として聞きいてみたくもなりますし、もし、看板に偽りがあるなら、速やかに取り下げるべきです。
加えて言えば、永藤市長は、今もなお維新の会に所属する政治家です。党の規約に縛られています。
二元代表制ですから、永藤市長と、堺市議会の維新の会がまったく同じである必要はないのですが(むしろ、違いがあっていい)、それが「やり方」や「優先順位」を変えるような話ならばともかく、今回の「ジェンダー平等」の話は、「主要方針、価値観の真向否定」です。
「永藤市長の本音は如何に?」と、市政をチェックする立場として確認しなければなりません。永藤市長が本気でジェンダー平等を目指しているのだとしても、身内である最大会派の最古参議員の発言ですからね。市の重要施策が骨抜きにされないだろうかと、心配は尽きません。
他会派のことですから、お任せするしかありませんが、本件は維新の会の内部での調整を期待したいものです。
「会派を代表して」の意見とならないならば、ご本人も、そうではない委員会の場などで「個人的意見」として発信されればいいと思います。
ちなみに、同氏は「ジェンダーギャップ指数」についても批判しています。「恣意的な配点」で、「日本だけが不当に低く評価されている」そうで、「ジェンダーギャップ指数を政策の前提にすべきでない」とのことです。しかし、この指標も、維新の会の「維新女性局」が政策の前提に掲げていたりします・・。
※維新女性局のHPより。赤の囲みは渕上の追記。
この維新女性局所属の議員も、堺市議会にいらっしゃいますから、特に彼女たちには、この問題に対して積極的に動いて頂きたいところです。
「政治によって男女の意識を変えようとしてはいけない」と同氏は主張していますが、たとえば男女雇用機会均等法は政治の力で実現したものであり、それがきっかけで、職場における男女の意識は大きく変わりました。その他、数多の政治の取り組みで、少しずつではありますが、男女の意識が変わり、この社会はジェンダー平等に近づいてきました。これが現実です。
本年6月には、男性の育休取得の推進に向け、育休法が改正されました。これも政治の力です。企業から男性社員への確認を義務化するこの改正は、本人はもちろん、上司の「男女の意識」を少なからず変えることでしょう。私は大いに期待しています。
私は、当たり前のように「ジェンダー平等」を目指そうとする者です。
そして、政治家ですから、その実現を、政治の力で後押ししようとしています。
他の政策・取り組みがそうであるように、この「ジェンダー平等」に関しても、党派を超えて、多くの議員が力を合わせられればいいと思っています。
堺市議会においては、そこに最大会派である維新の会の皆さんが加わってくれることを期待しておりますし、そのためにも、会派内でこの質疑について整理して頂ければと思います。
堺市議会議員ふちがみ猛志