堺市の財政をどう見るか②借金編
「堺市の財政をどう見るのか」4回シリーズの第2回「借金(市債)編」です。
①貯金(基金)編
②借金(市債)編
③固定経費編
④来年度予算編
の4回にわけてお届けしています。
②借金(市債)編
【そもそも借金は悪ではない】
「借金は少ないに越したことはない」と思われている方がいますが、これはよくある勘違いで、自治体においては必ずしも正しくはありません。
まして、企業のように「無借金経営を目指す」などというのは論外です。
自治体の借金には、「世代間の公平性を確保する」という重要な役割があるからです。
仮に30億円の図書館を建てるとして、
30億円現金一括払いにすると「現在の市民」が全てを負担することになります。
しかし、「現在の市民」の中には、来年他市に引っ越される方や、お亡くなりになる方もいます。そのような方は、まさに払い損です。
一方で、来年以降に引っ越して来られる方、生まれる方は、この図書館を長期間にわたって、(建設費に対して)負担なしで利用することができます。
だから、『あえて』借金をして、毎年1億円の30年払いという風にし、世代間の公平を確保するのです。(※1.実際には全額借金とはなりません ※2.若干の金利が発生します)
【公共投資のバロメーター】
「借金が多い方がいい」とはもちろん言えませんが、かといって「少なければ少ないほどいい」というわけでもありません。
公共投資をすれば必然的に借金をします。借金の多寡は、公共投資の多寡の反映でもありますから、公共投資をしなければどんどん借金は減っていきます。しかし、それが一概に「いいこと」だと言えないのはすぐにわかって頂けると思います。
借金は単純な多い・少ない、増えた・減ったではなく、「身の丈に合っているかどうか」で判断すべきなのです。
身の丈に合っているかどうかを判断する重要な指標が、「実質公債費比率」と「将来負担比率」です。
「実質公債費比率」は、収入に対する借金返済額の割合、
「将来負担比率」は、収入に対する借金残高の割合、
だとご理解ください。
【堺市の2つの指標】
堺市の実質公債費比率、将来負担比率はご覧の通りです。
実質公債費比率(オレンジ線)は5~6%程度で安定しており、将来負担比率(青線)はずいぶんと低下しています。
いずれも全国の政令市で上位の数字です。
「無計画にハコモノを作り続けて」という前市政に対する批判がよくありますが、これを財政悪化と結びつけるのは適切とは言えません。
身の丈に合わないハコモノ建設で財政悪化しているならば、実質公債費比率の悪化という形で、数字に表れるはずです。しかし、ご覧の通り、見事なまでに実質公債比率は安定しているのです。(※管理費等については、第3回固定経費編で触れます)
フェニーチェ堺、利晶の杜、原池公園野球場など、規模の大きいハコモノが続いたので、どうしてもその印象がありますが、それが数字が示す事実です。
念のために申しますが、私は「ハコモノ建設→借金の増加→財政の悪化」という流れが「間違いだ」と指摘しているだけで、それぞれの施設の運営方法等の『中身』についての批判は、当然あってしかるべきであり、私も思うところはありますし、折に触れて指摘しています。
【市債総額は増えいているが】
それでも「市債残高が増えいてる!」という声が上がりそうです。
はい、確かに増えており、ご覧の通りです。
改めて申しますが、グラフのグレー部分は臨時財政対策債と言い、「国の借金の付け替え」であって、自治体の財政力を示すものとして見るべきではありません。
かの橋下徹さんも、「国から押し付けられた借金。この部分を除いて見なきゃいけない。」と仰せです。
ずいぶんと議論がし尽された話なのに、いまだにこの臨時財政対策債を持ち出して財政悪化をアピールされる議員がいるのには驚きですが・・。
では、それを除いた市債残高は?
と言えば、それも増えてはいるんです。平成21年度2184億円が、令和元年度2436億円ですから、10年で1割強の増加です。
ただ、繰り返しますが、借金は単純な増減・多寡で判断するべきものではありません。自治体の身の丈、支払い能力に応じて判断すべきもので、その数値(実質公債費比率、将来負担比率)は一貫して安定・低下しているのです。
また、堺市が政令市になり、財政規模も仕事の量も増えたのですから、それに伴って市債残高も増えるのは当然です。『安定的に』公共投資していれば、物価の上昇や、消費税アップに伴って、その分の影響を受ける(市債が増加していく)のです。
【投資家にはやはりアピール?】
貯金(基金)と同様に、この借金(市債)についても、投資家向けの資料ではしっかりと健全アピールがなされています。
今もなお、自治体としては最高位の格付けのようですね。素晴らしいです。
市民には、市債の増加を強調した発信がなされており、心配している方も非常に多いのですが・・・、これをダブルスタンダードだと思うのは私だけでしょうか?
【借金(市債)編 まとめ】
1)自治体にとって借金は必要なもの
2)借金はその多寡や増減ではなく、身の丈に合っているかが重要である
3)身の丈に合っているかの指標について、堺市は良好に推移している
4)「ハコモノ建設で借金が増え財政悪化」という流れは間違いである
5)市債残高は増えいているが情勢変化を考慮すれば「当然」の範疇である
というのが、私の考えです。
「なんか、これまでの財政運営を擁護してばっかりやなぁ」と思う皆様、決してそうではありません。
決して評価できないポイントもあるんです。それが「固定経費」です。
それについては、シリーズ第3回へ。
堺市議会議員ふちがみ猛志
次は、③固定経費編 へ