私立高校無償化はやるべきなのか
こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。
またまた久しぶりのブログの更新です。
一年で一番忙しい予算議会のシーズンでしたので、どうかご容赦ください(容赦も何も、ブログの更新を待ってはいない!??)。
さて、この間、国会においても色んな動きがありました。その一つが「私立高校の無償化」です。
※教育新聞より
これを歓迎されている保護者は多いかもしれませんが(そりゃ、私も保護者としてはタダが嬉しいですよ)、極めて問題が大きいものだと言わざるを得ません。
府立高校の現状
ここに一枚の写真があります。
6基ある小便器のうち、3基が故障により使用禁止となっています。
これは府立三国丘高校の体育館の男子トイレの写真で、何年もこの状態のようです。
学校は大阪府に修繕を要請したものの、予算措置されることはなく、困った学校が同窓会にお願いし、同窓会が同窓生から寄付を集めて、間もなくこのトイレが修繕される見込みとなりました。
果たして、これは同窓会がすべきこと、寄付に頼るべきことなのでしょうか?
こんなことは、最低限度の教育環境として、大阪府が責任を持って、速やかに対応すべきものです。そしてこれは、府立高校の現状を表す、ほんの一例に過ぎません。
そのような府立高校の現状をヨソに、多額の教育予算が投じられているのが「私立高校の無償化」です。
公共として優先的に予算配分すべきは、果たしてどちらでしょうか。
衝撃の低倍率
堺市の鳳高校が2年連続で定員割れとなりました。直近の倍率が0.94倍です。
伝統校・進学校とされ、一定の人気を集めてきた府立高校のこの状況は、衝撃を持って受け止められています。
原因は明白、少子化に加え、私立高校の無償化によって私立高校に生徒が流れたからです。
大阪府における私立高校の無償化が(段階的に)始まった令和6年度、府立高校受験者数が前年比で2300人以上減少し、一方で私立高校の専願受験者数が1500人以上増加しています。
府内の公立高校の全日制128校の最新の平均倍率は1.02倍。
おそらく数年のうちに私立への流入はさらに進み、平均で1倍未満へ、そして一部の進学校以外は軒並み定員割れとなることでしょう。
廃校への坂道を転げ落ちる
大阪府では条例により、「府立高校は3年連続で定員割れすると、改善見込みがなければ廃校の検討対象」となります。この条例がネックです。
1度定員割れした学校は、その2年後には(3年連続になって)廃校の検討対象となる可能性、その先に廃校となる可能性があるわけです。いわば「廃校予備軍」です。
そのような予備軍には、施設更新などの予算が付きにくくなるでしょう。廃校がちらつく学校に予算配分しても、何年後かにムダになってしまう可能性がありますからね。
限られた予算ですから、「先々まで生き残る可能性の高い学校」に配分しようとするのは当然です。
その学校がいくら巻き返しを図ろうとも、予算が付きにくい中、教育の質を上げることは困難であり、一度の定員割れから、まさに坂道を転げ落ちるように3年連続へ、そして廃校へと突き進んでしまう学校が多くなるのではないでしょうか。
市内一極集中が加速
定員を満たせるかどうかが、公立高校が生き残れるかどうかの基準にされてしまうのであれば、当然、人口の多い地域、交通利便性のいい地域の学校は有利で、そうでない地域の学校は不利になります。
大阪市内でも厳しい状況に置かれる学校はあるでしょうが、それ以上に、府内の周辺地域の公立高校が、ことごとく廃校に追い込まれていくことでしょう。
府内周辺地域に住んでいて、遠くまで通えない事情のある子もいます。
そうした子も含め、教育機会を保障することが公共の務め、公立高校の役割でもあります。
定員に満たないかどうかではなく、そのような事情も含め、代替手段があるかどうかで判断すべきです。
果たして選択肢を失った子どもたちは、どうすればいいのでしょうか。大阪の公教育はどうなってしまうのでしょうか。
小学生が受験戦争の渦に
すでに大阪府では、ある現象が起こっています。
それは「私立中学校の受験者数の増加」です。
近隣の府県で私立中学校の受験者数が減少している(子どもの数が減っているのでそれは自然なことです)にも関わらず、大阪府では7%ほども増えています。
この画像では、私立高校無償化との関係性が指摘されていますが、私もそのように思います(それ以外に要因が見出せません)。
当然、私立中学校の受験者が増えれば、早くから塾に通う小学生が増えるでしょう。
果たしてそれが、子どもたちのためになるのでしょうか。
そのような流れができてしまえば、そこに乗らざるを得ないと感じる保護者も出てくることでしょう。
保護者の経済的負担軽減を目的とした私立高校の無償化が、新たな負担を生み出してしまうのではないか。私はそう危惧しています。
教育に失敗は許されない
やってみてあかんかったら、やめたらええやん。変えたらええやん。
と、ビジネスの世界ならば挑戦を促すところかもしれませんが、行政は、とりわけ教育行政はそうもいきません。
「あかんかった」、そのタイミングの子どもの人生に悪影響が出てしまうからです。
また、先述のような事例で、公立高校が一度廃校されてしまえば、「やっぱり必要だったよね」と言っても、後の祭りです。
教育行政においては、「失敗を恐れない」ではなく、「失敗を恐れて、そのリスクを最小化する」ことが重要です。
その点では、いま、「(令和6年度から)大阪でやっているから」と、安易に国にこの取り組み(私立高校無償化)を拡げることは大問題です。
大阪で始まった私立高校の無償化。大阪がいわば実験場となっています。
少なくとも国は、その実験結果をある程度見てからでもいいはずです。
学力が伸びた?
子どもがいきいきした?
少子化が改善した?
等々、おおよそポジティブなデータは、何も出ていないはずです。
「実験の失敗」が、全国に広がるのではないかと強く危惧しています。杞憂だったらいいんですが・・・。
※参考
デイリー新潮「維新が胸を張る「高校の授業料無償化」に税金の無駄遣いの声…お膝元「大阪」で名門府立高が定員割れの衝撃 専門家は「教育が“弱肉強食”を加速させかねない」
https://news.yahoo.co.jp/articles/c1030e27a9311c5a072c1de6221c7932cb4b36d6
堺市議会議員ふちがみ猛志
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