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教育現場の危機、平和教育の危機

昨日の大綱質疑で、気になるやり取りがありました。

自民党の西村昭三議員が、堺市立平井中学校で、朝日新聞社発行の参考資料「知る沖縄戦」が配られたことを取り上げ、

「虫けら扱いとまでは言わないが、人間扱いされなかったととれることが書いてある」
「光と闇の、闇の部分だけを取り上げている」
(※議事録ができていないので、私の記憶の限り)

と述べ、この資料における沖縄戦の説明が、「偏向だ」と主張し、これが平井中学校の全生徒に配布されたことを、「偏向教育ではないか」と指摘したのです。

この、朝日新聞社発行の「知る沖縄戦」は、「知る原爆」と共に、毎年同社が発行し、希望する小中学校に無料配布しているものです。

西村議員は、かなり強い口調で、「この資料は適切と言えるのか!?」と迫り、最後には「これが素晴らしい資料というのならば、なぜ堺市の全校で配らないのだ!?」と言い放ったのです。
教育委員会の理事者はタジタジになり、「適切だ」と明言することができず、この質問が終わりそうになりました。
しかし、そこで、業を煮やした長谷川俊英議員が、緊急質問を行い、この資料が安倍政権下で、適切な資料だと認められていることを示す質問主意書を紹介し、教育委員会から「今回の資料配布は適切だった」という答弁を引き出したのです。

さて、この一連のやり取りを見ていて、感じるところは色々あるのですが、、、

一番は、「教育現場の危機、平和教育の危機」ということです。

まず、この資料については、個人的には、偏向どころか、かなりバランスの取れた記事だと思いますが、細かい紹介は割愛します。(気になる方は、ぜひネット等でご覧ください。)
もちろん、いろんな見方・考え方がありますから、この資料を「偏向だ」と感じる人がいるかもしれません。

しかし、これは、少なくとも「政府が『適切である』と認めている資料」です。
教育現場がそれを活用したことを「偏向だ」と批判されるならば、現場の先生方は、何を頼りにして子どもたちに物事を教えればいいのでしょうか。
教科書以外の、ありとあらゆる資料の類が、使えなくなってしまいます。
(西村議員は、文句があれば、現政府に言うべき)

こうした、政治家による理不尽な介入は、教育現場を委縮させるだけであり、それは結果として、教育の低下を招くものと思います。

とりわけ近年、「平和」や「人権」に関わる内容には、こうした介入が非常に強くなっているように思います。
また、それを許容してしまう空気があるように思います。
「平和」や「人権」について、語ることを避けている教師も、少なからずいると思います。

戦後70年が過ぎ、戦争を直接語れる人が少なくなっています。
だからこそ、教育現場で「戦争の悲惨さ」を教えることの重要性が、ますます高まっていると思います。

もちろん、平和教育には、配慮が必要な点も多いでしょう。
しかし少なくとも、今回のような事例では、現場の先生方や、教育委員会は堂々としてもらいたいですし、不当な介入をする政治家は、強く非難されなければならないでしょう。
今回は、長谷川議員の好判断で、暴挙にクギを刺せましたが、これをやり過ごしていれば、今後ますますこうした介入が増えたかもしれません。(私も勉強になりました)

最後にもう一つ。

西村議員の発言にあった、
「虫けら扱いとまでは言わないが、人間扱いされなかったととれることが書いてある」
「光と闇の、闇の部分だけを取り上げている」
(だから「偏向だ」という主張)

あの激烈な沖縄戦における、「光の部分」って何なのでしょうか。
あの悲劇とともに併記すべき「光」が、存在したのでしょうか。
「人間扱いされなかった」、それが戦争というものではないでしょうか。
沖縄に限らず、日本に限らず、戦争が起これば、人間扱いどころか、それこそ虫けらのように、人が殺されてしまう。それが戦争の現実だと思うのです。

だから、戦争はいけないし、そのことを子どもたちに教える責務が大人にはあります。

「非核平和都市宣言」をした堺市です。
その議員として、そうした責務をしっかりと心に留めておきたいと思います。

 

 

 

 

 

堺市議会議員  ふちがみ猛志

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