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裏切りとは何か?~よくあるダブスタ~

松井一郎大阪府知事のツイッターを見て、またうんざりした。

 

「この竹山という人は、人として失格、何故ならば僕はこの人が初めて堺市長に立候補するときの経緯を全て知っているからです。当時の橋下知事は完全に騙されました。僕も騙された1人です。」

 

と。

 

要するに、竹山修身堺市長が、初めて当選した際に、当時の橋下大阪府知事や、松井一郎府議会議員の応援を受けておきながら、その後、彼らが提唱するようになった大阪都構想に反対し、政治的に対立するようになったことを、「裏切り、騙された」と評しているわけである。

このようなやり取りは、前回の堺市長選でも何度も見られたし、いまだに「竹山と言えば裏切り者」と思っている人が、少なからずいる。

 

この松井知事のツイートの後も、「そうだ、そうだ」という維新支持者とおぼしき人と、「そうではない」という非支持者とおぼしき人とのやり取りが、延々と繰り返されていた。

 

 

私は、当時(竹山氏初当選の堺市長選)のことを、ある程度調べた者として、特に維新議員や、維新支持者から発せられる、「竹山は裏切り者」とする意見に、強い違和感を覚えている。

 

仮に竹山市長を裏切り者とするならば、橋下徹氏も、松井知事も、そして多くの維新議員もが裏切り者であろうと言うのが、私の率直な感想である。

 

 

私は、政治家が「裏切り」と非難される場合には、主に2パターンあると思う。

 

①   世話になった政治家や政党と袂を分かつ場合

②   市民に約束した政策や、主義主張、政治信条が変節する場合

 

さて、どちらが裏切りか?

 

人それぞれだろうが、私は②こそが重大だと思っている。

 

 

さて、まずは竹山市長に関わる事象をいくつかピックアップしたい。

 

2008年2月 橋下氏、自民党、公明党の支援で大阪府知事に初当選

2009年9月 竹山氏、橋下知事、松井府議(自民)らの支援で堺市長に初当選

2010年1月 橋下知事、「大阪都構想」を提唱

2010年4月 大阪維新の会発足(多くの議員が自民党を離党し、参加)

2011年4月 統一地方選で大阪維新の会圧勝

2011年11月 大阪W選で、松井知事、橋下大阪市長の誕生

2012年2月 竹山市長、「堺は大阪都構想の法定協議会に参加しない」旨、正式に伝達

2013年9月 堺市長選で竹山市長は維新候補を破り再選

 

また、竹山氏の一回目の堺市長選(橋下氏全面支援)の公約・政策をピックアップすると、

 

1. LRT(堺を東西に走る路面電車)の計画中止

2. 堺東駅前の再開発ビルの建設中止(市民会館は現地建て替え)

3. 大阪府とイコールパートナーとしての連携強化

 

が挙げられる。細かいものを挙げればキリがないが、特に1が最大の争点であり、現に竹山陣営は、街宣車には「LRT中止」の文字が大きく書かれていた。

 

 

ここで改めて私の考えを述べたい。

 

仮に、前述の①の視点だけで見るならば、竹山氏は裏切り者かもしれない。

橋下知事の応援がなければ当選しなかったであろうし、松井氏の応援も有り難かったはずで、その彼らと袂を分かつことになったのだから。

 

しかし、どうなんだろうか。

 

竹山氏は、選挙で『橋下知事と共に訴えた』、LRT計画を中止した他、堺東駅前に計画されていた450億円にもなると見られた再開発ビル(新文化ホールを包含)計画を中止し、約1/3の規模で済む市民会館の現地建て替えを選択した。また、この二つの主要公約だけでなく、市長退職金の全額カットや給与カットなどのいわゆる「身を切る改革(当時この言葉はなかったが)」を進めるほか、外郭団体の見直し等々の改革を進めるなどし、政令市トップレベルの財政健全性を維持するに至っている。

市民に対する裏切りと言える公約違反は、おおよそ見当たらず、公約実現率は極めて高い。前述の②の視点で見るならば、「裏切り者」とは言えないはずだ。

 

一方で、仮に橋下知事を裏切らず(あえてこの言葉を使う)、大阪都構想に参加していたらどうだったろうか。都構想とは、政令市を廃止し、権限を大幅に縮小して、大阪府(都)に移譲するものであるから、それは到底、竹山氏が『橋下知事と共に訴えた』、「大阪府とイコールパートナーとしての連携強化」とは明らかに矛盾するものである。

選挙で「イコールパートナー」を主張して当選しておきながら、『選挙の後で出てきた』都構想に参加したならば、それは公約違反であり、橋下知事を裏切らずとも、「市民に対する裏切り」と断罪されても、致し方なかったであろう。

少なくとも、私は強い非難の声を上げたはずだ。

 

それでもなお、①を重視し、「竹山は裏切り者」と声を上げる人が多い。それはそれで、各々の基準なので、仕方がないと思う。「選挙で世話になったら、一生ついていけ」という考えもあろう。

 

だが、そうした方には、もう一度思い返して頂きたい。

橋下徹氏は、自民党・公明党の支援を受けて知事になりながら、反旗を翻したことを。

松井一郎氏や、多くの大阪維新の会発足時メンバーが、自民党公認で議員になれたということを。

「それは裏切りではないが、竹山は裏切り」というならば、それはダブルスタンダード以外の何ものでもない。

 

さらにもう一つ知って頂きたいのが、そうした面々の、政策面での変節(②)である。

 

橋下徹氏は、「LRT中止」を最大の公約に掲げた竹山氏を応援したものの、次の市長選で支援した維新候補は「LRT推進」へと舵を切った。

 

維新の馬場幹事長や、維新の会堺市議団の発足メンバーの多くは、かつて「政令市堺」を推進してきたものの、大阪都構想へと変節した。

 

今回、維新から参院選に出馬する高木かおり氏も、「大阪都構想反対」「市民会館現地建て替え推進」をあっさりと翻した。

 

私は、こういうことこそが「裏切り」ではないかと思う。

 

もちろん、恩人や政党と袂を分かつことも、褒められた話ではない。しかし、その恩人や政党の政策が、選挙を経ずして変わり、「それに従えば公約を違える」ということになるならば、彼らと袂を分かつことになっても、私はそれを「裏切り」だとは思わない。

橋下氏が、竹山氏を支援した堺市長選から4か月を経てから、いきなり提唱した大阪都構想は、まさにそういうものだったと思う。

 

 

もう一度まとめる。

 

竹山氏が、橋下氏や、「後に」大阪維新の会を発足させて松井氏らと袂を分かつたことを、私は「裏切り」だとは思わない。なぜならば、彼らと共に訴えた政策は着実に実行しているから。そして、後から出した大阪都構想に参加したら、市民を裏切ることになっていたのだから。

 

私は、橋下氏や松井氏、そして多くの維新発足メンバーが、自民党と袂を分かつたことを、「裏切り」だと批判しているわけではない。私が「裏切り」だと感じるのは、政策面でのことであり、とりわけ、今回の参院選での人選では、市議会で彼女の採決行動を見てきたものとして、批判せずにはいられない。

 

そして、(私はさして重要視していない視点であるが)「世話になったくせに」と、竹山氏を裏切り者と批判するならば、橋下氏や松井氏らと自民党への裏切りを、しっかりと認識して頂きたい。

 

 

長くなったが以上である。
依然として、過去の経緯(時系列)を把握せずに、批判している方々が多くいるので、改めてまとめてみた。

なお、私自身、竹山市長の政策の中には気に入らないものもあるし、維新の政策にも賛同するものはある。
だからこそ、とりわけ事実誤認による人格批判はやめて、是々非々で政策を議論できる環境が整えばと思う。

 

 

 

 

堺市議会議員  ふちがみ猛志

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