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里親先進市の福岡市を視察

こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。

 

「ショートステイ」と聞くと、高齢者や障がい者のことを想像される方が多いと思いますが、子どもにも「ショートステイ」があるのをご存じでしょうか?

保護者の病気や出産、育児疲れ、あるいは出張など、様々な理由で子どもを保育できない時に利用できるものです。

 

堺市や多くの自治体でもその制度があり、多くの場合の受け入れ先は児童養護施設なのですが、福岡市では里親家庭でショートステイを受け入れています

※毎日新聞ニュース「「まるで親戚」育児疲れ支えるショートステイ 担い手に里親も」

https://mainichi.jp/articles/20240203/k00/00m/040/243000c

 

実は以前から、堺市でも里親さんの中には「ショートステイで自分たちを使ってくれたらいいのに」という声がありました。

そこで私は福岡市がどのように制度を運営しているのか、調査に行ってきました。

 

ショートステイと一時保護の違い

私は以前、里親をしていることと、短期間で子どもを預かることがあることをブログで紹介したことがあります。

https://fuchigami.info/%e3%81%b5%e3%81%a1%e3%81%8c%e3%81%bf%e5%ae%b6%e3%81%ae%e9%87%8c%e8%a6%aa%e6%97%a5%e8%a8%98/

※ブログ「ふちがみ家の里親日記」。なお、このブログ以降、さらに3人の里子を預かりました。

 

それと今回のショートステイと、何が違うのかをまず先に書いておきます。

 

私が預かったケースは一時保護です。

様々な事情で、「養育できない」と子ども相談所が判断し、子どもを保護し、里親家庭に養育委託するものです。虐待が一番わかりやすいケースだと思いますが、保護者の疾病が理由になることもあります(私の経験上、その場合は精神疾患が多いように思います)

 

一方、ショートステイは保護者が自ら区役所の子育て支援課に申し出て、そして利用するものです。先述した通り、幅広い理由で利用ができます。

 

一時保護は保護者の意思によらない、子どものための行政処分であるのに対し、ショートステイは保護者のための子育て支援サービスです。

 

このように制度としてはまったく別のものですが、預かる立場から言えば、あまり大きな違いはなく、だったら「子育て支援にも協力したい」と里親さんが思うのも、自然なことかもしれません。

 

ショートステイ里親のメリット

ショートステイを受け入れ先として、里親家庭を活用する。このことにどのようなメリットがあるのでしょうか。

 

一つは家庭的な環境を提供できることです。

虐待などの場合も然りですが、実の家庭を離れることがあっても、施設よりも、「できるだけ家庭に近い環境」がよいとされ、厚労省もそれを推進しています。

二つ目は、その里親との関係が、子どもにとって新たな支えになる可能性があるからです。これについては、冒頭の記事の中でも「まるで親戚」という言葉で表現されています。

 

三つ目は、教育環境を維持しやすいことです。堺市でショートステイを受け入れている施設は4か所です。堺区にはありません。一方、里親はそれなりに全市域にいらっしゃいますから、学校から距離の近い(通学しやすい)預かり先を探しやすいです。

 

四つ目は、受け入れ先の絶対数が増えることです。施設にも定員があり、ショートステイの受け入れを断られるケースがあります。里親でも受け入れ可能となれば、枠の問題で断るケースは減るはずです。

 

五つ目は、利用者の心理的ハードルが下がることです。育児疲れや疾病、仕事の都合で子どもを何日か預けたい・・と思っても、「施設に預ける」となるとハードルが高くないですか?「近所の里親さんが預かってくれる」という方が利用しやすいのではないでしょうか。

ショートステイ等を使ってレスパイト(休息)すべき時にそれをためらうと、状況が悪化し、心身のさらなる疲弊や、時として虐待等の重大事態に至るケースもあります。

 

六つ目は、里親になる心理的ハードルが下がることです。「虐待を受けた子を預かる」と聞くと、なんだか重くないですか?「育児疲れした方のお子さんを少し預かる」と聞けば、「それならできるかも」と思う人が少なくありません。福岡市では、「ショートステイ」を入口にして里親登録される方も多いそうです。

 

堺市でショートステイ里親が難しい理由①

こう聞くと、「だったら、堺市ですぐやろう!」と思うものです。

しかし、話を聞くにつれ、「すぐにはできないな・・」と実感しました。その理由の一つは、里親の絶対数の不足です。

 

堺市の里親登録者数はおおよそ80世帯。福岡市は320世帯です。

福岡市の人口は堺市のおおよそ2倍ですから、人口あたりの里親登録者数は2倍ということになります。

 

里親の本来的な目的は、虐待等の様々な事情で本当の家庭では養育できなくなった子どもに、家庭的な養育環境を提供することです。冒頭に違いを書いた一時保護や、(一時ではない)短期~長期養育です。

堺市はその受け皿としての里親登録者数が十分ではなく、子ども相談所がその都度ずいぶんと苦労されている様子を、私も養育里親として何度も見てきました。

「ショートステイにまで限られた里親をまわす余裕はない」といったところが、子ども相談所の本音でしょう。

 

では、どうやって里親登録者を増やすのか・・は後述します。

 

堺市でショートステイ里親が難しい理由②

もう一つの理由は、ショートステイの受け入れ先を探し、マッチングし、支援する組織・人がいないことです。

 

堺市では一時保護等の場合、約80世帯の里親からマッチングし、委託後の里親と里子を支援することは、子ども相談所の業務です。

 

一方、ショートステイの受付・相談の窓口は区役所の子育て支援課です。

その子育て支援課が里親のマッチングをしようとすれば、一時保護等のマッチングと競合してしまい混乱するでしょう。

子ども相談所が調整すると、職員のマンパワー不足もありますし、里親によるショートステイは「お断り」が頻発するでしょうね。そりゃ、自分たちの本来業務である一時保護等を優先するに決まっていますから。

ショートステイの受付・相談の業務ごと子ども相談所に移管したらどうでしょうか?でもそれは、マンパワーの問題に加え、利用者にとってハードルが高くなってしまうことでしょう。子育て支援の窓口は、基本的には身近な区役所で主として担うべきです。

 

では、福岡市はどうしているのか?

民間のフォスタリング機関に委託しているのです。ショートステイだけでなく、一時保護等における里親のマッチングもです。

福岡市でそれができた理由

フォスタリング機関とは、里親支援を行う機関です。

 

堺市にもフォスタリング機関はあり、堺市は一定の里親支援業務を委託していますが、業務範囲は福岡市よりもずっと狭く、ましてマッチング業務まではやっていません。福岡市が委託しているフォスタリング機関とは、団体の規模も全く違います。

 

では堺市が、全国的な規模の大きい団体に任せてしまえばいいのかと言うと、そうもいかないでしょう。里親のマッチング業務は、それぞれの里親登録者ごとの特性(家族構成、何歳くらいを預かれるか、仕事の都合はどうか等々)を把握し、お互いに顔の見える関係だからこそできるものです。私自身は子ども相談所の里親担当の職員さんに全幅の信頼を寄せており、だからこそ受け入れられると思える面があります。見知らぬ団体がそのマッチング業務をいきなり担えるものではありません

 

福岡市の場合、まず「乳幼児専門の里親」というものを作りました(厳密に言えば、「作った」というより、そういう打ち出し方をした)。そして、その「乳幼児専門の里親」のリクルートから、登録前後の研修、相談支援、そしてマッチングおよびマッチング後の支援まで、一貫してフォスタリング機関に請け負ってもらったのです。

ただし、それ以前に登録のある里親さんは引き続き、子ども相談所預かりとしました。

自分たちでリクルートし、研修し、顔の見える信頼関係を構築していく。そうした里親に限定して、マッチング業務を担ったのです。

その後、リクルートが順調に進み、里親の数が増えたところで、ショートステイを全市展開したわけです。

 

福岡市の里親マッチングまで含めた民間委託は、将来の方向性を共有し、時間をかけて民間機関に実績と力をつけてもらい、関係者との信頼を構築した上で成り立ったものだと私は認識しています

 

こうした腰を据えた民間とのお付き合いは、堺市ではあまり見られないもので、大いに参考にしてほしいと思います。

 

赤ちゃんならばという気持ち

「乳幼児専門の里親」という打ち出しにも、私は大変感心しました。

 

堺市は「里親になること」への心理的ハードルを下げるため、「短期養育里親」という打ち出しをしています。

もちろん里親委託が長期に及ぶケースがありますが、実際には数日から数週間で終わるケースも多いのです。

 

とはいえ、「短期」と言ってもどれくらいかはピンとこないでしょうし、数日であっても、たとえば中学生、高校生くらいの子どもを預かるのはかなり大変そうです。

 

そこで「乳幼児」あるいは「赤ちゃん」と聞けばどうでしょうか?

赤ちゃんを預かるには預かるなりの責任感があるものの、赤ちゃんだったら、預かってみたい。預かれるかも。」と思う方は少なくないはずです。赤ちゃんを抱っこした時のなんとも言えない幸せな気持ち、いいですよね。

 

その後、福岡市はショートステイ里親に取り組んだわけですが、「ショートステイ」という響きもまた、ハードルを下げる効果が高いのは、先述した通りです。

 

結果、堺市ではおおよそ年間数世帯の新規の登録であるのに対し、福岡市は令和5年度、実に60世帯以上の新規里親登録があったそうです。

 

ぜひ堺市も参考にすべきと思います。

もちろん、そうやって登録者数が増えた先に、ショートステイ里親もと思っています。

 

時間をかけて里親登録者数を増やしていくこと、そして里親を気軽に利用できるようにすること(ショートステイ)。ぜひ、時間をかけて取り組みたいと思います。

 

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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