響いた当事者の想い
先週幕を閉じた堺市議会第五回定例会にあたって、市民による2つの署名活動が行われていました。
一つは「公立幼稚園の存続を求める署名」、
もう一つは、「第2子の保育料無償化延期の撤回を求める署名」でした。
前者は、この議会に現在9園(実質的に8園)ある堺市の公立幼稚園を、4園に減らす条例案が上程されたことがきっかけでした。
後者は、堺市独自施策として来年度から実施される予定だった「第2子0~2歳の保育料無償化」が、9月1日に突然「無期延期」と発表されたことがきっかけでした。
※当局への署名提出に同行させてもらいました。
結論から言えば、これらの署名は、共に1万筆を超えるものとなったものの、その求め(公立幼稚園9園の存続、無償化延期の撤回)が実現することはありませんでした。
しかし、その署名に込めた想いは、議会や当局に深く伝わり、これからの幼児教育行政と、子育て支援に少なからぬ影響を与えるものとなりました。(と私は感じました)
その要因は、署名を集められた方々が、単に署名を集めるだけでなく、政党・会派の枠を超えて、幅広い議員に当事者としての想いを伝えていかれたことだと思います。
公立幼稚園に関しては、園長経験のある方々が各議員のもとをまわられ、私も事務所でじっくりお話を聞き、その重要性を再確認することができました。
文教委員会では私だけでなく、自民、公明、共産の各委員が公立幼児教育の重要性を訴え、今後どのようにして本市の幼児教育をよりよくしていくのか、建設的な議論が交わされました。
全委員による委員間討議では、(公教育への捉え方が私たちとは違う)維新の委員までもが「公立の幼児教育は必要」と発言したことには、正直、私も驚きました。
条例案自体は、総合的な判断のもと、共産党以外は(私も)賛成することとなり、可決成立しましたが、残る4園で公立幼児教育を強化していくための、具体的な取り組みを求める付帯決議を可決させられました(これには維新が反対、それ以外が賛成)。
シャンシャンで議論もなく、付帯決議も何もなく条例案が可決成立していたことを思えば、雲泥の差だったと思います。
何より、これらの議論を通じて、私も含め多くの議員が、幼児教育に対する理解を深めることができましたし、それは当局にも十二分に伝わったことでしょう。そのことが今後の幼児教育行政に与える影響は少なくないと、私は思っています。
もう一つの署名「第2子の保育料無償化延期の撤回を求める署名」についてもそうです。
健康福祉委員会では、維新以外の各会派の委員がこの問題を取り上げました。間違いなく、切実な保護者の声が彼らを動かしたのだと思います。
西哲史議員は、「多子世帯の保育料無償化の延期について措置を求める決議」を起案し、私もその調整に携わりました。現市長がその対応を責められている(と捉えられる)案件でしたので、少なくとも維新の会は賛成してくれないだろうと、私は思っていました。しかし、その予想に反し、一定の文言修正を条件に、彼らも賛成してくれました。やはり、彼らも切実な当事者の声に、背を向けることができなかったのだと思います。
この決議は、「撤回」には触れられませんでしたが、それに代わる「救済措置」を求めています。これは、冒頭の市民の署名にも含まれているものです。
まだ、議会で決議されただけであって、当局がこれを受けてどのように動くかはわかりませんが、市長与党(とも言える)の維新をも含む全会一致の決議ですから、相応の対応をしてくれるものと信じています。
私はこれまで、このような署名活動の効力について、疑問を持つこともありました。
(失礼かもしれませんが)単に集めるだけ、単に提出するだけのものが多く、議会や行政の側も軽く受け流すようなケースを何度も見てきました。
しかし今回は、先述したように、当事者の方々が、署名用紙には盛り込みきれない1人ひとりの想いを、丹念に議員に伝えてまわられていました。やはり切実な当事者の声は、心を打つのです。そして、すべてその想いに応えられなくとも、「少しでも何かを」と考えさせられるのです。
この2例には、「市民の声」「当事者の想い」の持つ力を感じずにはいられませんでした。
私自身、今後もこのような声・想いにしっかりと耳を傾けていくのは当然のこととして、きっと署名集めもできない、まして議員のもとに足を運ぶことなどできない、埋もれた声や想いが、この街のあちらこちらにあるのだろうと思います。
自らそれを探していく、そんな心がけで議員として活動していこうと、改めてそう思わせられた2つの署名でした。
署名活動に携わられた皆様、お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。
今回示すことになった方向性(幼児教育の強化、救済措置の実施)を現実のものにできるよう、次は私たち議員がしっかり頑張って参ります。
堺市議会議員ふちがみ猛志