保育料無償化延期の救済措置をどうすべきか
永藤市長が、市民に約束していた「第2子0~2歳の保育料無償化」を無期限で延期したことへの批判をブログに書きました。
そこで、私自身がどうすべきだと考えているのかを書き記します。
本音を言えば、「延期を撤回する」なのですが、それには年間8億円の予算が必要ですし、論理的に書くには長々と財政の話をせねばなりませんので、「財政上、無償化の完全実施(8億円の支出)は困難」という前提に立って、「せめてこれくらいは」という案を提示したいと思います。
まず、保育料は所得に応じて設定されています。
0~2歳児の保育料(3号認定)は、生活保護世帯や市民税非課税世帯はもともと無料で、所得に応じて月額1万円、1.2万円・・・と徐々に高くなり、最大で6.7万円となります。
これが無償になる予定だったわけで、そうだった時に比べると、無期延期によって月額数万円の負担増です。
保育料が最大の月額6.7万円となる方は、(目安ですが)世帯年収が1100万円を超えるあたりの方です。「1100万円もあるんだから」と思う人もいるでしょうが、夫婦共働きだとあり得る額ですし、それだけの収入があっても、「月6.7万、年80万強の負担増」は、十分に「人生設計に変更を迫る額」です。
そしてそれは、救済措置を求める決議にも、しっかりと明記されたポイントなのです。
では、救済策です。(※各提案の予算額はあくまで私の試算であり、精緻なものではありませんが、それほど大きなズレはないはずです)
①所得制限で無償化案
議会でもある会派が言及していましたが、1つ目は「所得制限付きで無償化する」というものです。グラフにすると赤のラインのようになります。
一定の所得以下の人に給付ないし無償化というのは、他の施策でもよく聞く話であって、それなりに合理的にも思えますが、もともと保育料は所得に応じて設定されています。所得制限のボーダー前後での不公平感が否めません。そして何より、(たとえ所得が高くとも月6.7万円は)「人生設計に変更を迫る額である」というポイントに、何もアプローチできておらず、本件においては愚策だと私は思っています。
②半額案
つづいて2つ目は「無償化はムリでもせめて半額に」というものです。
一見、救済措置を広く及ぼすものであって、妥当な策のように思えますが、実はこれは「見かけ倒し」の感が否めません。
というのは、もともと、兄弟が同時入園していると2人目は半額なのです。第2子が0~2歳の場合の話をしておりますから、その兄や姉は同時入園しているケースは、かなり多いでしょう。そういった方にとって、この救済措置は意味をなさないものです。対象者は、兄や姉がすでに小学校以上にいる(同時に入園していない)、つまり歳が離れているケースに限られるのです。
逆に言えば、このような対象者が狭い救済策ですから、1億円もあればできるのではないかと思います。当初の無償化実施の8億円に比べれば、ずいぶんと少ない額です。羊頭狗肉ですが、まあ、選択肢として否定はしません。
もしこれを、同時入園で2人目が半額になっている人も「堺市独自でさらに半額」とするのならば、私は大いにアリだと思います。予算総額は、8億円のきっちり半分、4億円です。
4億円も決して小さい額ではありませんが、見方を変えれば、当初の完全実施よりも4億円浮くんです。
永藤市長は「政策的予算の1割削減」を掲げていますので、1つの施策で5割も削減できれば十分ではないでしょうか。
③上限設定案
3つ目の提案は「保育料の上限設定」です。例えば、どれだけ所得があっても「1万円を上限とする」というものです。グラフはこうなります。
こうなると、年収300万円程度の人も、1000万円を超える人も「同じ1万円」となり、違和感を覚える人もいると思います。しかし、そもそもの施策が「所得に関わらず、負担感のある多子世帯を社会全体で応援する」という主旨を持って「等しく無償」にするはずだったのです。低所得の方が損をしているわけではありませんし、誤解を恐れずに言えば、月1万円であれば、所得が高くはない方にとっても、「人生設計に変更を迫る」とまでは言えないのではないかと思います。
仮に1万円を上限とした場合、5億円くらいの予算で実施できそうです(当初に比べ、3億円の削減)。仮にこの上限を2万円にすれば、おそらく3億円程度(5億円程度の削減)になるでしょう。
④半額と上限設定の併用案
それでもなお、「年収300万円程度の人にも配慮を」という場合、2案と3案の掛け合わせが考えられます。グラフはこうなります。
もちろん予算はその分多く必要となり、当初比の削減幅は小さくなりますが、少なくと当初の8億円のうち2億円以上は削減できるでしょうし、「政策的予算の1割削減」は大幅にクリアします。
4案がバランスよく、なかなかよさそうですが、ちょっと制度がややこしすぎる気もします。個人的には3案を推します。
財源については、いずれの案も当初の8億円よりずいぶん少ないのですから、十分に捻出可能と考えますが、それでも「恒常的には厳しい」というのならば、せめて3年間だけでも実施してほしいと思います。
この施策をあてにして第2子を産んだ人、復職を決めた人、引越してきた人、そうした方を救済するためです。せめて、今この堺にいる第2子までは、その救済範囲とすべきです。
少なくとも、来年度1年については、国からのコロナ対策の臨時交付金が充てられるはずです。まだ来年度予算は決定していないものの、国政の状況を見る限り、間違いなく数十億円単位で交付されることでしょう。そこから、数億円拠出することなど、わけない話です。(何なら、8億円拠出し、来年度だけでも当初通りの無償化をやってほしいものです。)
もちろん、コロナ対策としてやるべきことはたくさんあるのですが、昨夏の58億円の臨時交付金で打ち出された施策を見渡してみても、その多くよりも、こちらの方が優先順位が高いものだと思います。なんてったって、「一度は市民に約束していた施策」なんですからね。
ぜひ前向きに検討してほしいものです。
堺市議会議員ふちがみ猛志