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なぜそれほどまでに大阪府にお金を払いたがるのか

【地方財政法27条】

都道府県の行う土木その他の建設事業でその区域内の市町村を利するものについては、都道府県は、当該建設事業による受益の限度において、当該市町村に対し、と当該建設事業に要する経費の一部を負担させることができる。

 

 

この度、大阪府が府立の児童自立支援施設「修徳学院」の寮を増設するにあたり、堺市がその建設費を全額負担することになったのですが、その法的根拠がこの法令です(だと、堺市は説明しています)。

この増設については、堺市が独自の建設計画を中断したことによるもので、堺市が一定程度負担するのは仕方ないと私は思っています。(私はそもそも堺市で建設すべきとの考えではありますが)

 

ただ、果たして堺市が「全額負担すべきなのかどうか?」、というより、法的に「全額負担することができるのか?」、その点について予算審査特別委員会で取り上げました。

まず私が目を付けたのが、27条の「一部を負担させることができる」という部分です。

あくまでも市町村に負担させることができるのは「一部」であって、「全部」ではありません。普通に読めば、「全部を負担させることはできない」ように思えます。

ちなみに、このような字面による解釈を文理解釈と言います。

 

ただ、条文の解釈には、文理解釈だけではなく、法令全体や、その制定の主旨も考慮に入れた論理解釈が大事です。

そこで、私は条文全体を見渡した上で、2つ目の指摘をしました。

それが、この地方財政法の他の条項に「全部または一部」という表現があることです。実に10カ所にもなります。

同じ地方財政法の中で「全部または一部」という表現を多用しておきながら、27条には「一部」としか書かない。つまり、27条は「全部負担させること」など想定しないないし、認めていないのです(と、私は解釈するし、それが自然だと思います)。もし、全部負担がOKならば、27条にも「全部または一部」と書くはずです。

 

もう1つ着目したのが、この法令の制定主旨です。

地方財政法逐条解説によると、それは「国及び地方公共団体の財政責任の明確化と財政秩序の確立」との記載があり、さらに自治体間の財政関係について、「市町村が都道府県の不当な圧迫を被ることのないよう配慮を加えた」とされており、堺市の法制文書課もその旨の答弁をしました。

市町村(弱い立場の団体)が必要以上に負担させられないように、財政秩序が崩されないように、というのがこの法の主旨なのです。

ですから、27条にも「一部」だけではなく、「受益の限度において」と、市町村の負担を限定的にしようとする文言が入っているのです。

 

そうした趣旨を踏まえると、少なくとも、「一部」としか書いていないものを、「全部でもアリだ!」と、市町村の負担を大きくする方向に拡大解釈することなどありえない、と私は思うのです。

 

百歩譲って、大阪府の側がそのような無理筋な拡大解釈をして全部負担を要求してきたとしても、少なくとも堺市は、この法令を素直に解釈すべきで、その解釈のもと、府にも一定の負担を求めるべきです。

寮は堺市が独占的に利用するわけでもありませんし、増設によって他市町村の子どもの措置についても柔軟性が上がる面もあるのですから(堺市だけが受益するのでなく、大阪府や他市町村の受益もあるのですから)。

私の「全部負担は法的に疑義がある」との主張にも、永藤市長は「堺市が全部負担すべき」と返すのでした。

 

 

財政危機だとことさらにアピールし、子育てや教育に関連する予算を大幅に削る永藤市長。

一方で、不要不急と言わざるを得ない、万博IRを見据えたベイエリア開発や、大仙公園の気球には確実に予算を措置し、さらには、大阪府に対しては法令を無理やり拡大解釈してまで、自ら負担を増やそうとする

 

いったい、誰のための市長なのか市民の財産を預かっている自覚はあるのか

甚だ疑問に感じた、法令の解釈議論でした。

 

この調子だと、今後の児童自立支援施設に関わる費用負担の協議も、あるいはこれ以外の大阪府との利害調整の場面においても、どんどん足元を見らえれて、どんどんと負担を増やしていくのではないかと、心配でなりません。

維新の会の中では、吉村さんとは上司・部下の関係かもしれませんが、せめて市長の立場でいる時は、毅然として堺市民の財産を守ってもらいたいものです。

 

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

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