里子との別れ
こんにちは。堺市議会議員(堺区)のふちがみ猛志です。
私と妻が里親登録して5年ほど。これまでに12人の子どもの養育に関わりました。期間は様々で、一番短い子で4日、一番長い子で1年半。
先日、その最長記録の里子との別れがありました。さすがにそれだけ一緒暮らすと、別れは辛く、今も思い出すと泣けてきますが、時間も経って少し落ち着いてきたので、ブログに書くことにしました。
なお、里親・里子の関係の特定を避けるために、曖昧に書いている部分がありますが、ご了承ください。
このブログで里子を、Aちゃんと呼びます。
出会い
Aちゃんが我が家に来た時は、まだ首が座るかどうかというタイミングでした。実親による養育が困難な状態になったためです。

※我が家に来た頃のAちゃん
当初、うちで預かるのは1~2か月だろうと、子ども相談所からは聞いていました。いったん子ども相談所が保護しても、一定期間で実親がその養育環境を改善し、元の家庭に復帰することもよくあります。しかし、Aちゃんの場合はその見込みが大きく外れ、措置期間が長期化していきました。
そして最終的に子ども相談所として、実親による養育は相当な期間は困難であるとの結論に達しました。その時点で、Aちゃんの我が家での暮らしが1年くらいにはなっていたと思います。Aちゃんは我が家で立ち上がり、我が家で歩き出し、我が家で大騒ぎし、我が家でたくさんの表情を見せるようになっていました。お客様ではなく、完全に我が家の一員になっていました。

※歩きかけの頃のAちゃん
さすがに私も、実親による養育が困難なのであればと、この先何年も、場合によっては大人になるまでAちゃんを育てるかもしれない、ということを想像し始めていました。「想像」というより「覚悟」だったかもしれません。
別れ
しかし、措置解除という別れがやって来たのです。
実親が、家庭への措置ではなく、施設への措置を希望したことが、理由の一つです。
そしてAちゃんは、我が家ではなく、施設で暮らすことになったのです。
実は、このように、実親が里親家庭ではなく、施設を希望するケースは決して少なくはありません。それはなぜか。
あくまで一般論ですが、、、
我が子が自分ではなく里親になつくことに抵抗感がある。
我が子が里親に取られてしまいそう。
個人宅よりも施設の方が安全で快適そうに思える。
どこで暮らしているか把握しておきたい。
施設にいれば、会いたいときに気ままに会える。
などといったことが多いようです。
実親と里親とのトラブルを避けるため、(例外はありますが)基本的に里親がどこの誰かは実親に伝えませんし、直接会うこともありません。なので、里子がどこで暮らしているかもわからず、面会はいつも子ども相談所を介してです。
Aちゃんのケースがどうだったかは伏せますが、1年以上愛情を注ぎ、家族の一員だった者としては、そのような実親の思いは、なかなか受け入れにくいものでした。
児童福祉法には「家庭養育優先の原則」が規定されていますが、それがいとも簡単に崩れるところに、日本における実親の親権の強さを痛切に感じました。
ふとした時に涙
別れの日が涙、涙、涙だったのは言うまでもありません。
施設には、何度かAちゃんを連れていき、慣らし保育もしてもらいました。それでも1年以上通いなれた保育園とは、ましてや1年以上暮らした我が家とは全く違います。
施設の職員さんに引き渡す瞬間の、号泣しながら手を伸ばすAちゃんの姿は、今もまぶたに焼き付いています。
時々、写真を見返しても涙が出そうになりますし、町中で同じくらいの歳の子を見た時や、Aちゃんと一緒に過ごした季節行事がまたやってきた時、さみしさが押し寄せてきます。

※水遊びが大好きだったAちゃん。来夏プールに行ったら思い出すこと間違いなし。
Aちゃんを思い出して寂しくなる瞬間は、生活のあちらこちらにあって、
たとえば、ふとテーブルに財布を置いた時も。
Aちゃんは財布の中身をぶちまけるのが好きで、テーブルに置いた私の財布が度々餌食になりました(笑)。だから、Aちゃんの手の届かないところに置くように心がけていたんですが、ふとテーブルに置いた瞬間、「あ、やばいやばい、、、、いや、もう置いてもいいんだった」なんて感じで、Aちゃんを思い出すのです。
Aちゃんがいたからこその生活リズムや、生活の中の注意事項がいくつもあって、つい習慣でそれをしたり、あるいはしなかった瞬間に、Aちゃんが去来するのです。
措置解除したら他人
施設に入ったAちゃんと私たちは、もう完全に赤の他人です。
私たちは彼女に会うことはおろか、いま元気でいるかどうかを知ることもできません。
私たちは施設に行くAちゃんに持たせるため、アルバムを作りました。
これから彼女がどんな人生を歩むのかわからないし、実親からたっぷりの愛情をもらえるとも限りません。そんな時に、「自分にも心から愛された時間があった」「自分を中心にして、幸せな時間を過ごせた家族があった」ということを、彼女に知ってほしかったからです。
ところが、そのアルバムの写真は、子ども相談所の要請により、私たち家族が写った部分をすべてトリミングすることになりました。
これからAちゃんは施設で暮らしながら、実親との面談を重ね、実親との親子関係を構築していかなければならないからです。そこで私たちとの記憶は、親子関係構築の邪魔になるからです。Aちゃんが混乱するからです。

※誕生日の一枚。アルバムに残ったのはAちゃんとケーキだけ。
Aちゃんと別れてしばらく経ちました。
まだ、私たちのことを覚えてくれているかな。いや、忘れていた方が彼女のためだよな。
そんなことを想像すると、また涙が出そうになります。
アルバムから私たち家族の写真はなくなったけど、満面の笑みの0歳、1歳のAちゃんだけの写真が、いつか大きくなったAちゃんを励ましてくれたらと思います。
議員として里親として思うこと
「人生の財産は、人との縁、つながりだ」とよく言われます。
子どもたちにそんな「人とのつながり」を作ってあげようと、行政・民間を問わず、様々な取り組みがなされています。
子ども食堂などはその代表的な取組と言えますし、子ども会、見守り活動、地域の祭り…、などなど、様々な「人とのつながり」の中で子どもは成長していきます。
施設で暮らす子は、実親とのつながりが弱くなりがちなので、なおさら大事なものになるはずです。
おこがましいかもしれませんが、その観点で、「自分を1年半育てた大人とのつながり」はなかなか強いつながりだと思います。
少なくとも施設に行くその日の時点で、Aちゃんのことを一番に愛していたのは、実親でも、子ども相談所の職員でも、受け入れ施設の担当者でもなく、私たち家族だったと思っています。Aちゃんが一番に頼りにしていたのも、間違いなく私たちでしょう。
その「つながり」を、実親との関係構築のために『一時的に』遮断するところまでは理解しますが、果たして『永久に』遮断する必要があるのか。むしろ、いつかAちゃんが実親と安定的な関係になった時に、あるいはそれがダメだった時に、再び彼女の支えにできるように、細くとも緩やかにつないでおいた方がいいのではないかと思うのです。
会えなくてもいいから、元気かどうかくらいは知りたい。
誕生日にプレゼントくらいは送りたい。
なんなら、足長おじさんみたいにちょっとくらいの経済的支援ができれば…。
「遠い親戚のおっちゃん」くらいのポジションでいれたらなぁと、つい思ってしまいます。
これは、私たちとAちゃんに限った話ではなく、長期養育の里子と別れた里親の、その多くが思うところでしょう。
そんな里親の気持ちを活かす制度を作れないものかと、議員として考えているところです。
今の気持ち
Aちゃんにとっても、別れは辛かったろうし、こんなことなら始めからウチが預からずに、施設に入っていた方がよかったんじゃ…、と思ったことがあります。
そんな気持ちになっていた時、子ども相談所の職員さんが、
「0歳、1歳という大事な時期に、愛情いっぱいに育てられたことで、人を信じる力がついている。これは、その後の彼女の人生に大きなこと。」と言ってくれたことが、救いになっています。私たちとの1年半は、彼女の記憶には残らないだろうけど、そうやって彼女の心の奥底で、力になっている。決して無駄ではなかった。それが救いです。
また、寂しさと無力感に苛まれていた私に、同じ経験を何度もしてきた先輩里親さんが、「彼女の生きる力を信じてあげよう」と言ってくれました。そして、「次にまた別の赤ちゃんが来たら癒されるから」と励ましてくれました(笑)。
振り返れば、Aちゃんは本当にたくましかったし、保育園でも他に泣いている子がいたらティッシュを取ってきて差し出すような優しい子でした。そこに「人を信じる力」がオンされれば、きっと人生をしなやかに生き抜いてくれることでしょう。
先輩と、子ども相談所の職員さんの言葉に、だんだんそんな気持ちになってきています。
それでもやっぱり、いつかまた会えたらいいなあとは思います。
Aちゃん、いつか探偵ナイトスクープに依頼して私たちを探してくれないかな(笑)。そんな妄想を、ついついしてしまっている、里子ロスの私でした。
それでも里親のススメ
今回は、「里親の辛さ」のようなものを書いてしまいましたが、私たちの人生にとってAちゃんとの思い出が素晴らしい彩りであったことも間違いありません。
また、このような辛い別れを経験したくない、でも里親はやってみたいという方は、「短期限定」で里親をされるといいと思います。どんな子どもなら受け入れられるか、里親は子ども相談所に希望(条件)を出すことができます。
たとえ1年半の養育であっても、子ども相談所の職員さんが言うように、Aちゃんが愛情をたっぷりと感じ、人を信じる力がついたのならば、やはり里親による家庭養育は極めて重要なんだと思います。
堺市に実親のもとで暮らせない子どもが300人ほどいますが、その中で、里親家庭で暮らすのは2割ほどです。里親がまったく足りていません。
まずは里親の実態について知ってもらうこと、関心を持ってもらうところから。
これからも、私は里親としての実体験を発信していこうと思います。
※過去ブログ「1週間だけの里親をご存知ですか」
堺市議会議員ふちがみ猛志

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