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議員の処遇①~前提としての現実~

「身を切る改革」が一部で持て囃されているここ数年ですが、私はかねてより、これには懐疑的な立場を取っています。このテーマについては、堺市議会でもずいぶんと議論されていますが、市井の反応を見ていても、なかなか本意が伝わらず、例えば、「報酬削減に反対 = 保身」といった、単純なものが多く見受けられました。

 

そこで議員の処遇について、これから4回シリーズで、できるだけ丁寧に、わかりやすくブログに綴りたいと思います。

 

第一回目では、これから私の考えをお伝えしていく前に、その大前提となる現実を、先にお伝えしたいと思います。

 

ここでお伝えしたいことは、

 

・議員とは、頑張れば頑張るほど、手元に残るお金が減る仕事だということ。

 

・頑張る議員は、世間が想像しているほど、そのお金が多くないということ。

 

この2点です。

 

 

では、以下、現実をお示しします。(数字は概算です)

 

①堺市議会議員の年間報酬額は、約1300万円です。扶養家族等にもよりますが、いわゆる手取りは1000万円前後になると思います。

 

・・・と、この段階では、大半の方が「多い!羨ましい!」と思うかもしれません。肝心なのはここからです。

 

②私の場合、議員としての活動経費として、年間300万円ほどの支出があります。①から差し引けば、実質的な年間手取りは約700万円です。この支出は、政務活動費とは別(※1)で、自己資金の持ち出し額です。事務所家賃や、チラシの発行・配布など使途は様々です。この金額は、活動をすればするほど、頑張れば頑張るほど増えていきます(つまり、手元に残るお金は減っていく)。

 

4年に1度の選挙では、数百万円の費用がかかり(※2)、私の場合、毎年150万円をこの費用として積み立てています。②から差し引けば、実質的な年間手取りは約550万円です。

 

・・・と、ここまでくると、「羨ましい!」という声がかなり減ってくるのですが、まだまだこんなもんではありません。

 

④議員には、退職金がありません。

40年働けば、退職金は2000万円」、それくらいを期待する労働者は多いと思います。それが全くないということは、そうした労働者に比べ、実際の手取りよりも、年間50万円少ないのと同じです。③から差し引けば、実質的な年間手取りは約500万円です。

 

⑤議員には、失業保険がありません。

4年に1度、失業リスクのある議員です。独り身ならともかく、私の場合、3人の子どもがいますし、これを考慮した生活設計が当然必要です。

 

⑥多くの議員は、ローンが組めません。

4年に1度、失業リスクのある議員には、銀行もお金を貸してくれません。当選直後にローン組んで最大4年です。もちろん、保証人がいれば…、高金利であれば…、当選回数を重ねていれば…、と状況によりますが、一般論としてはそうです。

 

⑦実質的な所得に比べ、受けられない行政サービスが増えます。

「実質的な」所得は500万円でも、「額面上」は1000万円ですから、一般の年間所得500万円の方に比べると、行政サービスが低下し、負担が増えます。

例えば、保育所の保育料は、年収500万円ではなく、1000万円なりの高額なものになります。

例えば、高額医療費制度も、適用されにくくなります。ちなみに私の妻は持病の治療で、保険適用してもなお、月45万円の治療費がかかっています。年間所得500万円ならば、その多くが返ってきますが、見かけ上1000万円なので、全額自己負担です。

その他、児童手当など、所得制限のある行政サービスが沢山ありますが、実質500万円でも、額面が1000万円ならば、ほとんどがその制限に引っ掛かってしまうのです。

 

 

これら、⑤⑥⑦は算出しづらいのですが、当然、いずれも家計を圧迫します。この状況を加味して、サラリーマンに例えると、年間手取り4500万円、額面では年収600万円くらいの感覚だと思います。

 

・・・となると、「羨ましい!」の声はほとんどなくなりますが、それでもまだ、世間の平均年収より上です。ここからは私なりの事情も含んで紹介します。

 

⑧身内がタダ働き(というケースが多い)

私の場合、妻が平日毎日、無報酬で事務所業務をすることで、私の活動をサポートしています。こうして、家族が無報酬で支えることによって、活動が成り立っている議員は多いのです。仮にそれがなければ、秘書を雇用することも多く、②はさらに膨みます(さらに実質的手取りが下がる)。

 

 

言うなれば、「議員報酬1300万円」というのは…、

 

「サラリーマンの年収1300万円」よりも、「個人商店の売上高1300万円」に近く、それを(私の場合)「夫婦共働きで実現し」、「そこから経費を差し引いて、4500万円が手元に残る」という感覚です。

 

1人で可処分所得4500万円でしたら平均以上ですが、夫婦共働きでそれならば、決して高水準ではありませんし、私も妻と会社勤めだった頃は、今の可処分所得を優に超えていました。(ですから、少なくとも私は「お金のためにこの世界に来たわけではない」と声を大にして言いたいです)

 

さらに言えば、

 

⑨土日も含めて、ほとんど休みなし

⑩地元にいれば、常に衆人環視

 

といった大変さ、息苦しさもあります。

 

ここまでお伝えして、「それでも羨ましい」と言われたことは、一度もありません。

 

しかし、世間には、もっと大変な生活をされている方がいくらでもいます。

一方で、私は今でも十分に生活ができており、困窮しているわけではありません。

 

私が伝えたかったのは、「世間が想像しているほど、手元に残るお金が多くないということ」です。

 

 

そして、もう一つ。

 

それはあくまでも「頑張る議員の場合」だということです。

 

「普段活動していない議員」「頑張らない議員」だと、②の支出がほとんどない場合もあります。

 

また、選挙前にポスターを貼ればそれで当選してしまう政党・候補も、現実としては存在しますし、②(活動費)はおろか、③(選挙費用)もほとんど掛かっていないケースがあります。

 

そうなると、先述の例に比べ、実質的な手取りがグッと上がり、「世間の想像通りに、手元に残るお金が多い」という議員もいるはずです。

 

 

・議員とは、頑張れば頑張るほど、手元に残るお金が減る仕事だということ。

(逆に、活動しなければしないほど、手元にお金が残る・・)

 

・頑張る議員は、世間が想像しているほど、そのお金が多くないということ。

 

 

この二つの事実をまずはご確認頂き、次のブログ(私の考え)へと進んで頂ければと思います。

 

 

堺市議会議員  ふちがみ猛志

 

 

(※1)政務活動費は、最大で年間360万円ですが、その使途は様々な不祥事を経て厳格になっており(当然です)、例えば事務所家賃に充てられるのは、多くの場合、50%までです。例えば、事務所家賃が10万円なら、5万円が政務活動費、残り5万円が自己資金という具合です。よって、政務活動費があっても、活動するには自己資金が必要です。

 

(※2)候補者によって大きく違います。1000万円を超える人もザラにいます。一方で、ほとんどお金をかけない方もいますが、政党に頼らない選挙で当選を目指すならば、多くの場合、少なくとも数百万円は必要だと思います。

 

 

 

 

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