超多機能文化施設シリウス
荒川区の図書館「ゆいの森」に続いて、神奈川県大和市の「シリウス」に行ってきました。
シリウスは図書館を核とした複合施設です。
文化ホール、子どもの広場、生涯学習、役所の窓口機能などが組み込まれています。
行政や市民が図書館に何を求めるのかはそれぞれですが、仮に「賑わいづくり」を求めるのならば、これほどうまくいっている図書館はないでしょう。
年間来場者はなんと300万人!
堺市の中央図書館の10倍です。人口24万人の大和市ですから、驚異的な数字です。
少なくとも「賑わいづくり」の施設としては、大成功という他ないでしょう。
その観点で、私なりに関心したことを挙げたいと思います。
■大胆な予算投入
驚いたのはランニングコスト(指定管理料)が年間8億円にもなるということです。
非常に大きな複合施設ですから、それくらいかかるのは理解できますし、この大きな予算を背景に、様々な取り組みがなされ、集客に繋がっていることも実感できました。
しかし、それにしても年間8億円というのは、大和市の一般会計の1%にも相当します。堺市の予算規模に置き換えると、40億円です。堺市の新しい文化ホール「フェニーチェ堺」の指定管理料が年間約4億円で、その金額でも「多すぎる」「赤字だ」との批判がありました。それに比べると、何とも大胆な予算投入であり、文化に対する姿勢の違いを感じずにはいられませんでした。
■自治体として施設を諦める割り切り
自治体であれば、公共施設を「自分のまちで一通り揃えたい」と思うものですし、市民もそれを望むものです。しかし、大和市は、「周辺市と含めて、一通りあればいい」と割り切ったそうです。「スポーツ施設は他に任せるから、文化施設はうちで」という発想で、24万人の都市のものとは思えない、立派な文化施設を作るに至ったそうです。面積も30平方キロ足らずで、同規模の自治体が周辺に多かったことも、こうした発想に繋がったのでしょう。堺市は人口規模と面積からも、さすがにこうした発想は取りづらいかもしれませんが、少なくとも各区ごとには、こうした発想が必要でしょう。
それぞれの公共施設が、本当に各区に一つずつ必要なのか、大和市と周辺市のような割り切りがあってもいいのではないかと感じたところです。
■明確な市のコンセプトの反映
大和市は「健康都市」を掲げ、「社会の健康」「まちの健康」「人の健康」を求めています。それぞれ、「文化的に豊かであること」「防災・防犯上、安心できること」「医療・福祉などで現に市民が健康であること」を指すようです。最初の点は、これほどの予算を投じて文化施設を作ったということに繋がっています。2つ目の点は、この施設が帰宅困難者の一時避難施設にもなっていることなど、現にその機能に繋がっています。3つ目の点は、「健康都市大学」などの健康講座が実施されているなど、現にその運営方法に繋がっています。健康講座の類は、集客に苦労したり、参加者が固定化したりする傾向にありますが、大和市では「年間300万人の賑わいの施設」に置くことで、新規参加者も多く、市民に身近なものになっているようでした。
■広告塔としての意義
シリウスには「施策の発信」という機能もあります。
私はかねてより、市の施策やイメージの発信にもっと力を入れるべきだと訴えて参りました。いくら予算をかけていいサービスをしても、市民がそれを知らなければ意味がありません。そして、そもそも市民満足度というのは、具体的な施策の有無よりも、自分の住むまちがいいと「感じられること」によるものだと、私は思っています。
「300万人の賑わいの施設」で、健康に関する取り組みをたくさんやっていること、ワンフロアをまるまる子どものフロアにしていること、このような一つひとつが、大和市の健康や子育てにおけるイメージアップに繋がっているのは間違いありません。
市の顔、広告塔に対して、プライスレスの価値を見いだし、それをシリウスに委ねたことが、大胆な予算投入を可能にし、さらにはこの施設の成功を作ったのだと、私は思いました。
翻って、堺市の文化に対する姿勢は?
施設配置の考えは?
それぞれの施設のコンセプトと、市のコンセプトとの繋がりは?
情報発信は?
シリウスから、たくさんの問いかけをもらったように感じました。
堺市議会議員ふちがみ猛志