子育て応援アプリとタッチポイント
役所が発する情報は非常に膨大です。
ですが、膨大な情報を全市民に伝えようとしていては、本当に必要な人に必要な情報が伝わりません。
高齢者に関する情報は、高齢者に。
子育て関連情報は、子育て世代に。
障がい者に関する情報は、障がい者に。
と、ピンポイントで伝えられたら、どれだけいいことでしょうか。
私たちも議会で議論していて、「せっかくいい施策をやっているのに、当事者に伝わっていない!」と指摘することが、多々あります。
そこで重要なのがタッチポイントの意識です。
タッチポイントとは、「顧客接点」のことです。
その情報や、商品を欲している人との「接点」です。
自分が売り込みたい商品を欲している人がどこにいて、どのようにすれば、その人にうまく接することができるのか、ということです。
例えば、公衆トイレの個室に、下痢止めの薬の宣伝シールを貼ったらよく売れたそうです。
公衆トイレには、下痢止め薬を欲する人(=下痢の人)が集まりやすいですからね。
また、先日はドラッグストアの妊娠検査薬のコーナーに、「妊娠SOS」のカードが置かれているのを見て、「なるほど」と思いました。
そんな中、3年ほど前、市役所が大量に利用している封筒を、このタッチポイントの発想で、情報発信に使えばいいのではないかと提案していました。
市役所が発送する郵便物は、当然、相手がどのような属性なのかわかって出していますから、その属性の方に伝えたいメッセージがあるはずです。
そこで先日、保育所の入所決定通知に使われた封筒がこれです。
これを受け取った方には、めでたく保育所が決定した方もいれば、残念ながら落選し、二次募集に向けて、また保育所探しをせざるを得ない方も大勢います。
この度、堺市が機能追加した「子育て応援アプリ」では、保育所の空き情報が検索できるようになりましたが、それはまさにそんな方々に利用してもらいたいものです。
そのアプリ情報を掲載した封筒は、まさにタッチポイントを意識した情報発信の好例と言えるでしょう。子ども青少年局の現場の皆さん、グッジョブです。
ちなみに、封筒に記載されたキャッチコピーは、かつては「やさしさの心がかよう人権尊重都市堺」でしたが、今では(子ども青少年局の封筒は)「安心して子どもが産み育てられるまち堺」になりました。人権ももちろん大事ですが、子育て世代に届けたいメッセージとしては、やっぱり後者ですよね。
市役所は、えてして政策を作るところまでは一所懸命ですが、その後の情報発信がいい加減だったりします。せっかく作った政策も、必要とする人にその存在を知ってもらわなければ意味がありません。封筒に限らず、職員がこうしたタッチポイントの意識を高め、「どうすれば効果的に市民に情報が伝わるか」を考えるようにすれば、今の政策のままでも、市民満足度はずいぶんと上がるだろうと思います。
一例として封筒を取り上げてから3年ほど。
タッチポイントの意識の定着を実感し、嬉しく思いました。
堺市議会議員ふちがみ猛志