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おでかけ応援バスを守れ

堺市議会令和3年第4回定例会がスタートしています。

 

この定例会で大きな議論になると思われるのが、「おでかけ応援バス」の縮小についてです。皆様の身近なテーマが議論されますので、ぜひ注目して頂きたく、ブログに私の見解を残しておきます。

 

おでかけ応援バスは、65歳以上の方が100円でバスに乗れる堺市の制度です。

南海バスだけでなく、近鉄バス、阪堺電気軌道(チンチン電車)でも利用可能です。

もともと、毎月5のつく日に利用可能だった制度を段階的に拡充し、平成25年に平日全日に拡充して今に近い形に、そして現在では365日いつでも使えるようになっています。拡充が続いてきたのです。いい制度だからです。

 

そのおでかけ応援バスの対象年齢を「65歳以上」から「70歳以上」に引き上げる、つまり制度の対象範囲を「縮小する」条例案が、今議会に提出されたのです。

 

ことの発端は8月に発表された財政危機脱却プラン(案)でした。そこで同制度の縮小が突然打ち出されたのです。「財政危機脱却プラン」の1つですから、この縮小によって市の予算を抑え、財政状況の改善に繋げたいというのが、市長の考えなのでしょう。

 

そこで、私なりに思うこの「おでかけ応援バス縮小案」の問題点を挙げたいと思います。

 

①公約違反であること

永藤市長は、当選した市長選挙においておでかけ応援バスの「拡充」を訴えていました。その真逆をやろうとしているので、完全な公約違反です。

チラシだけでなく、Twitterでも主張していました。

市長は「フタを開ければ財政が悪かった」と、前市長のせいにしていますが、それはおかしな話です。百歩譲って当選直後、財政状況を目の当たりにした時にそうしていれば、その言い訳も通ったかもしれません。しかし、自身が中長期の「堺財務戦略」を打ち出した後も、議会で「拡充」を主張しています。

自身が財務状況を理解した上で「拡充」と言っていたわけですから、縮小に転じた責任を「前市長の財政運営」に転嫁するのは無理があります。ならば、自身の「堺財務戦略」こそ、「見通しが甘かった」と認めねばならないでしょう。

 

こうした政治家の公約違反、それも「公約をやらない」どころではなく、「公約と逆のことをする」というのですから、それは市民の政治・選挙への信頼を失墜させるものであり、その悪影響は計り知れません。

 

②むしろ財政を悪化させかねないこと

おでかけ応援バスの対象範囲を縮小すれば、その分、単年度の予算は浮くでしょう。しかし、長期的に見て、本当に財政状況の改善に繋がるのでしょうか。私はむしろ悪化するのではないかと思っています。

おでかけ応援バスは、高齢者のおでかけ促進に繋がります。そして、

高齢者のおでかけ促進 →健康寿命の延伸 →医療費や介護費の削減

という風に繋がっていくことが期待されています。

また、高齢者がまちに出ることで、消費活動(=地域経済の活性化)に繋がることも期待されます。

 

このようなおでかけ応援バスの波及効果は、度々議会で堺市当局が報告してきたことです。それが正しいのならば(私は「正しい」と思います)、同制度の縮小は、「医療費や介護費の増大」、「地域経済の停滞」、そして「(中長期的には)財政悪化」に繋がってしまうはずです。目先の予算削減に目を奪われて、将来の負担増になれば、本末転倒です。

 

③公共交通の維持に悪影響が出ること

この制度はバス交通の経営支援にもなっています。

利用者の割引額(本来の料金から、100円を引いた額)は、堺市とバス会社とで半々負担していますが、それでもバス会社にとっては、利用者増、運賃収入の増加に繋がっていると聞いています。

バス交通はそもそも採算性の高い事業ではない一方で、公共性が極めて高い事業です。

ですから、堺市だけでなく、多くの自治体がバス交通を直接、あるいは間接的に支援しています。

おでかけ応援バスの縮小は、バス会社の経営にとってもダメージになるでしょうし、それがバス路線の縮小や撤退に繋がっていく可能性も、否定できないだろうと思います。

コロナで公共交通各社は、経営が大変厳しくなっています。「よりによってこんな時にやらなくても」と、私は思います。

 

④議会と民意を軽視していること

このおでかけ応援バスの縮小については、案として示された8月議会においても、党派を超えて否定的な意見が数々出ました。賛同する声は全くなかったと記憶しています。にもかかわらず、その次の議会でこのような条例案が出ること自体、「議会も軽んじられたものだ」と思ってしまいます。

 

また、おでかけ応援バスの縮小を盛り込んだ「財政危機脱却プラン(案)」に対して、市民の意見を募集するパブリックコメントが実施されたのは、「10月22日~11月18日」の期間です。

しかし、この条例案は、そのパブリックコメントが締め切られるまでに用意されていたのです。私自身、11月15日に説明を受けましたからね。

ということは、どのようなパブコメの結果になろうが、はじめから縮小する気だったのであり、そこに集まる意見など聞き入れる気がなかったということです。市長と担当課は、パブコメを単なる事務的な通過儀礼、あるいは「市民の声を聞いたフリ」をするためのアリバイづくりとでも思っているのでしょうか。

議会と市民の声を軽視しているという批判は免れないでしょう。

 

 

以上、私が感じるところを述べました。

①や④は市長の姿勢の問題でもありますから、最終的にはご本人が責任を取る部分ですが、私が特に気になるのは②です。

 

担当課は、60代後半の就労率が上がっていることなどを、縮小の理由に挙げていました。要するに「65~69歳は元気だし、この制度は不要」と言いたいのでしょう。

しかし、わが国の健康寿命の平均値は、最新のデータで、男性は72.14歳です。それを延ばしていくには、その直前の60代後半の健康習慣(おでかけも含む)が大事なはずです。

 

私は兼ねてより、今の政治の最重要課題は、「子育て支援」と、「健康寿命の延伸」と訴えてきました。人口減少こそがわが国の最大の問題であり、ほぼすべての社会問題の根源だからです。そしてその解決、改善がこの2つにかかっていると考えます。

そのうちの一つに関わる施策を後退させるというのですから、私は大問題だと思っています。

 

この条例案を認めるわけにはいきません。なんとしてでも阻止できるよう、議会の一員として頑張って参ります。

皆様もぜひご意見をお聞かせください。

 

 

堺市議会議員ふちがみ猛志

意見・提案