堺市の財政をどう見るか①貯金編
先日、「堺市の財政をどう見るのか」というテーマで、市民集会にて講演させてもらいました。
なかなか難しいテーマで、持ち時間の20分では話し切れませんでしたが、ポイントを纏めさせてもらいます。
数字そのものは正確ですが、数字をどう捉え、どう分析するかは私見によるものですから、ご意見は様々であろうと思います。
結論を言えば、
1.堺市の財政はたしかに厳しいが危機感を煽りすぎ
2.ここ数年間の悪化の主要因はハコモノではなく住民サービスの拡充
3.来年度予算の編成に向けての厳しさは、コロナによるもの
と私は考えています。
以下、現状を述べていきますが、長くなりそうなので、
①貯金(基金)編
②借金(市債)編
③固定経費編
④来年度予算編
の4回にわけてお届けします。
①貯金(基金)編です。
まず、『基金残高は政令市中位にあり、おおむね横ばいで推移』という事実をお伝えします。
【基金は全体を見るべき】
堺市の基金の少なさを批判する意見が散見されますが、それは使途を定めない「財政調整基金」の額のことであって、本来は使途を定めた「特定目的基金」も含めて評価すべきです。
※もう一つ「減債基金」もありますが、これは話がややこしくなるので除外しておきます。
簡単に市民生活に喩えると、前者は出し入れしやすい普通預金、後者は定期預金や学資保険などをイメージしてもらえるといいかと思います。同じ資産ではありますが、それをどちらに重点を置いて積むかというのは、まさに家庭と同じで、首長の考え方や、その自治体の伝統みたいなものも影響しています。
【堺市の基金全体の現状】
その「特定目的基金」も含めた総額は、同規模の政令市と比べるとこうなります。
堺市(左端)の財政調整基金(青)は少ないのですが、特定目的基金に重点を置いて積んでおり、それを合計すると決して見劣りするものではありません。
実際に、一人あたりの基金残高は政令市20市中8位となるのです。
基金については、「これで十分だ」という額はありませんが、かといって行政の仕事は貯金を蓄えることではありません。コロナ禍でほとんどの自治体が「もっと基金があれば」と思っているでしょうが(堺市ももちろんそうです)、コロナ禍は残念ながら想定外の事態であったことも、どの自治体にも共通するものです。
こうした危機事象にはもちろん「財政調整基金」の方が使い勝手がいいわけですが、特定目的基金であっても、条例改正すれば組み替えられますし、現に堺市でもこの間に組み替えが行われています。条例改正の事務手続きの手間はありますが、財政調整基金も議会の承認なく使えるわけではありません。
【財政調整基金だけを見た批判は論外】
「財政調整基金」だけを持って少なさを批判するのは、「普通預金の額」だけを見て「お宅は資産が少ない」と批判しているようなものです。
これは、ある議員のチラシですが、まさにそのような批判を展開しています。
解説文では「まともな貯金(財政調整基金)の積み立てがなく」と書いてありましたが、財政調整基金がまともで、特定目的基金がまともなでないはずはなく、見る人のミスリードを誘う悪質な批判だと、私には思えます。残念です。
このような批判をするようなレベルであれば、特定目的基金を財政調整基金に組み替えただけで、「まともな貯金(財政調整基金)を〇倍に増やした!」なんて宣伝もやりかねません。定期預金を解約して、普通預金にして、「家庭の資産が増えた」と言い張るようなものです。まあ、こんなバカバカしい宣伝はしないと思いたいのですが、財政調整基金のみを持っての批判は、それと同レベルだということです。
【堺市の基金の推移】
では、その基金がどのように推移しているかについてです。
市長は記者会見でも、毎年多額の基金を取り崩しているとして、このような資料も用意しています。
なんと毎年90億円前後の取り崩し!!!!
この数字は事実でして、ならば「わずか400億円ほどの基金があっという間になくなりそう!!」と思ってしまうのですが、基金残高は現実にはこのように推移しています。
あれ、、、減ってない??
なぜかと言うと、年度当初に組んだ予算も、年度末には余るからです。
使い切れないこともあれば、例えば入札して予定より安価に済むということもあります。このような予算の余りがどうしても発生し、それが基金へ戻されたり、あるいは剰余金として翌年度にまわるので、結果として基金そのものはほとんど目減りして来なかったのです。
もちろん、予算編成時点で「取り崩しなし」で編成できるに越したことはありませんし、それを目指すべきでしょうが、堺市の基金残高は令和元年度決算までは事実として「横ばい」なんです。
でも来年度予算ではさらに大きな取り崩しが・・。
はい、この件は「④来年度予算編」にて触れさせてもらいますね。
【投資家向けの発信は?】
ちなみに、堺市は現時点においても、投資家向けの資料には「基金はちゃんと積んでまっせ!」と言いたげなアピールをしています。
見にくい画像ですが、左のグラフが基金が右肩上がりであることを示し(減債基金も含む)、右は「1人あたり残高」が政令市中位であることを示すグラフです。
市民には「危機だ、危機だ」と言い、さも基金が激減し、今にも底をつくかのような話になっていますが・・・、これをダブルスタンダードだと思うのは私だけでしょうか?
【貯金(基金)編 まとめ】
コロナという未曽有の危機に、今後の適切な基金の積み方については、改めて議論をする必要があるでしょうが、少なくとも「堺市の基金」については、批判の対象となるものではないと、私は考えています。
改めて、まとめます。
1)堺市の基金総額は政令市でも平均的である
2)基金総額は前市長時代から概ね横ばいで推移している
3)財政調整基金のみの額で評価するのはおかしい
4)よって基金に関しては批判となるものではない
5)新たな危機を受け、今後の積み方については議論が必要
おわかりいただけましたでしょうか。
堺市議会議員ふちがみ猛志
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